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私と農業

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......計画的な営農こそが最も経済的、安定的......

その2

 上信越道をドライブすると、浅間山麓に広がる野菜産地が一望できる。昭和50年代に、この地で、連作障害の一つハクサイ根こぶ病の実態を調査した。

 上信越道をドライブすると、浅間山麓に広がる野菜産地が一望できる。昭和50年代に、この地で、連作障害の一つハクサイ根こぶ病の実態を調査した。農協の紹介で、地元の老夫婦の営む民家が調査基地であった。ご馳走の鯉こくや洗い、宿のお婆さんが呉れたクルミのお土産。そして、農家ごとに微妙に異なる野沢菜漬けの味が今でも忘れられない。
 この産地でも、ハクサイの栽培面積を増しながら、主産地形成が進められてきた。その時代を象徴するものに、農協のスローガンがある。昭和40年代の始めには「主産地形成を」と前向きのものであったが、連作が強まり根こぶ病の発生に悩まされる50年代に近くなると、「土を酷使しない」と連作障害を意識したブレーキ調に変わった。
 3年間、現地のあちこちの畑で、収穫を終えたハクサイの根っこをひたすら掘り上げ、根こぶの程度を調べた。根こぶ病の常発地もあれば、全く発病のない畑もある。なぜこの発病の差が生じたのか。その背景や要因を探るため、農家の聞取り調査も合わせて行った。
 その結果、発病を増えつつある増加型、努力して発病を減らした減少型、比較的発病の少ない安定型にタイプ分けできる。それらはそれぞれの栽培管理や経営姿勢の特徴と一致する。すなわち、増加型では、連作が続けられ、発病を左右する土壌pHの改善を怠り、農薬で対処するといった安易な感覚が強い。一方、減少型では、石灰施用で土壌pHの改善に努め、輪作を導入し、さらには農薬施用などの総合的な努力が実を結びつつある。その反面、コストが掛かっている。安定型は、輪作を基本に、土壌pH等の発生要因への関心が高い。そのため、石灰施用や農薬施用は最小限に止まり、過剰な投資をせず、理想的な営農である。真の土つくりとは、輪作や土壌環境の改善といった長期的な積み重ねである。このように、計画的な営農こそが最も経済的、安定的である。

その3に続く)

【著者】小川 奎
           財団法人 日本植物調節剤研究協会会長

(2009.04.24)