都道府県別の平年収量では、20年産より増加したのが北海道、千葉、神奈川、石川の4道県。減少したのが埼玉、静岡、鳥取、佐賀の4県となった。11日に開催された水稲の作柄に関する委員会では、変動のあった道県について以下のような生産事情が報告された。
((表)平成21年産水稲10a当たり平年収量:pdfファイル)
【北海道】
20年産では網走で冷害(作況70)となるなど、毎年7月に低温の時期があり冷害の危険性は常にある。このため北海道の稲作では温暖化の影響は明確でな いと報告された。平年収量が1kg増の535kgとなったのは、成苗植えなどで安定的な高収量生産する技術を普及させていることに加え、食味が良く収量水 準の高い「ななつぼし」の作付けが増えていることが要因と分析した。21年産では「きらら397」を抜いて作付け割合でトップ(37%)となる見込みだと いう。
【千葉県】
都市近郊地帯で多様な消費者ニーズに応えるため「コシヒカリ」が減少し収量水準の高い「ふさこがね」が増加している。作付け割合は18年産の2.4%が 21年産では12.5%となる見込み。2kg増の533kgとなったのは、こうした品種構成の変化とともに適正な施肥管理の結果、登熟(千もみあたりの収 量)が上昇傾向にあることも要因だという。
【神奈川県】
2kg増の488kgとなったのは、主力品種「キヌヒカリ」のほかに食味が良く収量水準の高い「さとじまん」が増加傾向にあることが要因。
【石川県】
2kg増の519kgとなったのは、良質で収量水準の高い「ゆめみずほ」の作付けが推進されて増加傾向にあることが要因。
【埼玉県】
消費者・実需者のニーズが高い「コシヒカリ」、「彩のかがやき」、「キヌヒカリ」へ品種の集約が進めれているが、一方で収量水準の高い「朝の光」の作付 け割合が16年産の12.4%から21年産では4.3%にまで減る見込み。2kg減の493kgとなったのはこうした品種構成の変化とともに、近年全もみ 数が減少していることが要因だという。農水省は品質・食味を重視する栽培が普及しているためではないかと分析している。
【静岡県】
2kg減の521kgとなったのは、消費者ニーズの高い「コシヒカリ」の作付けが増え、一方、収量水準の高い「あいちのかおり」や「キヌヒカリ」が減少 傾向にあることが要因、近年は全もみ数が減少傾向で、これは品質を重視し全もみ数を適正に管理する栽培指導が普及しているためと分析している。
【鳥取県】
「コシヒカリ」と「ひとめぼれ」の品種構成と比率に大きな変化はない。16年の連続台風で大倒伏したことをきっかけに、17年産から追肥を控えた栽培が 普及。それがひとめぼれにも広がって、県全体の収量水準が低下。こうした施肥の手控えが3kg減の514kgとなった要因だとしている。
【佐賀県】
品質低下の被害が深刻な「ヒノヒカリ」の作付けは減少し、良食味の「夢しずく」が増えているが全体の収量水準に大きな影響はないという。減農薬・減化学 肥料栽培の取り組みやタンパク含有量6.8%以下を目標とした窒素抑制など、良質・良食味生産が行われている。ただし、20年産では7月に高温・多照とな り、幼穂形成期に肥料切れでもみ数が確保できず、登熟期には日照不足と、気温較差が小さかったことから登熟(千もみあたり収量)が伸び悩み、反収が低下し た。20年産に続き1kg減の527kgとなったのは、こうした温暖化によるマイナス影響によると分析した。