特集

3Q訪問活動による絆の強化と仲間づくりを――JA共済事業がめざすもの
「食と農を結ぶ活力あるJAづくりのために2008」

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対談 今日の農業・JAの現状とJA共済の役割 その2

「3Q訪問活動」をさらに浸透させ目標達成めざす

◆農業は本当はすごい力を持っている  今村 JAの営農活動でも「出向く」体制をつ...

◆農業は本当はすごい力を持っている

 今村 JAの営農活動でも「出向く」体制をつくろうと全中や全農が提案していますが、全国一律ではなく地域から自分たちでやろうという盛り上がりが私は大事だと思いますね。
 野村 担い手担当の職員を配置し、体制が整っているJAは少ないですが、しだいに拡大しています。
  「出向く」ことで大事なことは、肥料とか農薬を買ってもらうことではなくて、農家の人たちの様々な不満や意見を聞いてくることです。
 今村 ニーズを把握して、その上で何をするかなんですね。具体的な改善策、解決策の提案が重要なんですね。
 野村 こうして欲しいとか、こうなっていたらいいなということを、本人たちから聞いてくればいいわけです。だから、この「出向く」体制をうまく定着させたいなと考えています。
 今村 地域によって要望も違いますしね。
 野村 中山間地においても農業に一所懸命取組んでいますが、若い人がいないため、今いる人たちが農業を止めてしまえば、そこで終わってしまいます。
 また、転作で水田を使わず放置しておけば、草は生えるし中山間地では木が生えてしまう。そういう集落が増えています。
 中山間地の農地を守るためにJAが果たせる役割は大きいと思います。
 今村 農業や農村の力についてはどうお考えですか。
 野村 第2次世界大戦では、農村から多くの人が出て行き、終戦をむかえると人々が農村に戻ってきて、農業が食料難の日本を支えました。
 その後、昭和40年代以降の高度経済成長時代には、再び農村から多くの人が都会に行き、高度経済成長を支えてきたわけです。
 今村 農家出身の次男や三男の人たちですね。
 野村 ですから、日本工業の基盤は農家・農村だといえます。そういう意味でも農業というのはすごい力を持っていると思いますね。

今村氏×野村氏

◆JAの基本は営農だということを大事にしたい

 今村 「3Q訪問活動」をするときには、そういう歴史的な問題、そして今世界的には食料問題が大きな問題になっている状況も頭に入れて話をすれば、さらにいいですね。
 野村 本当にそうですね。そして「どんなに小さな田畑でも大事にしておかなければいけませんよ、必ずいいときがきます。JAもお手伝いしますから、一緒に農業を守りましょう」くらいのことは言わなければいけませんね。
 今村 共済に関するお話も大切ですが、いま世界の大勢はこうなっていて、日本の置かれている立場はこうだよ、ということを含めて、日本の農業をどうするか、ある地域の農業をどうするかということを「3Q訪問活動」のなかでやっていただければいいなと思います。
 野村 ぜひこれから進めるなかで参考にさせていただきます。
 やはり、JA共済ありきで訪問すると、訪問される組合員・利用者の方も嫌なんですね。だから、共済とは違う話をすることで、JA共済が来ると構えている人が胸襟を開いて話してくれるということがありますね。
 今村 そうなんですよ。訪ねていく農家がどういう問題で困っているかを勉強をして、世界の話、日本の動きを頭に入れながら、相手が乗ってくる話をしないと受け入れてもらえませんね。
 野村 米や畜酪の問題で全中や全農が一所懸命やっていますが、必ずしも生産者のところまで届いていないこともありますから、JAではいまこんな取組みをしていますが、どう思いますかと聞いてみればいいわけです。
 今村 総合JAですから金融・共済そして営農・販売といろいろな事業をしていますが、基本は営農ですから、そこのところを忘れずに大事にしてもらいたいと思います。

◆農業就業者の55%は女性 その心をつかむこと

 今村 共済の加入を最終的に決めるのは主婦を中心とした女性ではないですか。農業のシッカリしているところ、したたかにがんばっているところは、女性がしっかりしています。
 野村 理事だけではなく総代にも女性定数を設けるJAもあります。また、JAの事業の説明を支店単位で行う場合、女性の方も積極的に出席して聞いてくれます。今村先生がおっしゃるように、最後に決めるのは女性ですね。
 今村 そういう意味で「3Q訪問活動」も女性の心をしっかりつかむような方法を考えた方がよいと思いますね。
 全国の産地を歩くと、最近はコンバインやトラクターなど農業機械を運転・操作する女性が増えています。青森県のJA田子町の女性常務の方から「農業ほど男女差のない産業はない」と言い切られました。そこで調べたら、農業就業人口の55%は女性でした。かつては60%が女性だったんですね。農業以外のどの産業をみても圧倒的に女性の比率が高いんです。
 野村 JA共済の推進の中心はLAです。女性のLAもたくさん活躍しており、なかにはLAに立候補してくる方もいます。
 今村 これは女性たちの活動とも関連しますが、地域の問題にJAがどう関わっていくかという課題もありますね。
 野村 そうですね。例えば、独居老人問題とか高齢者についても、JAがやらなければいけない、あるいはJAがやった方がうまくいくのではないかということもあります。
 今村 もう一度JAと組合員の絆を深め、地域のネットワークを築いていくことがいま一番大事なことですし、それがJAの最大の課題だといえますね。

◆農村のお年寄りは「高齢技能者」だ

今村氏×野村氏

 今村 いま担い手対策が大きな課題になっていますが、JA共済連としてはどんな取組みをしているのですか。
 野村 大規模化や法人化して農業経営をすることになると、いろいろな事故やリスクが生じてきますから、そうした担い手の保障ニーズに対応した仕組の改訂を検討すると同時に、既存の仕組や共栄火災商品を活用した保障提供をしていきます。
 ただ私は個人的には、農地を担い手に預けたり集中するよりは高齢者であっても自ら農業に参加する方がいいと思いますね。
 今村 私もそう思いますね。農村の高齢者は「高齢技能者」だと私は考えています。頭の先からつま先までその五体には、知恵と技能がすりこまれている人なんですよ、いまの農村のお年寄りは…
 野村 腰の曲がったようなおばちゃんが素晴らしい白菜や野菜をつくっていますから、技術があるんですね。
 今村 そうなんですよ。

◆3か年計画の実現目指して全力で

 今村 これからのJA運動と共済事業についてどう考えていますか。
 野村 JAの本来の精神が継承されていないのではないかと思っています。そのことを十分に検討する必要があると思います。
 今村 本来の路線に戻れということですね。
 野村 そうです。それは人と人の絆であり、組合員あってのJAであると同時に、組合員から信頼されるJAであるべきだと思います。そのためには、収益があがったら組合員への出資配当をして、税金を払った残りは内部留保を行うことによって、経営的な体力をつけていくことも必要です。そのことが、組合員からお預かりしている財産を守ることになるわけです。
 今村 最後に今年度にのぞむ決意を聞かせてください。
 野村 20年度はいま進めている3か年計画の中間年度ですが、ここでしっかり事業基盤の再構築への取組みをしていくことが3か年計画の目標を達成することになると考えています。そのためには2年目を迎えた「3Q訪問活動」をさらに浸透させて全国的に盛り上げてきたいと考えています。
 そしてこの1年間、全国のJAグループ役職員が一丸となって相互扶助の精神にもとづいてこれまで以上に組合員・利用者との「絆の強化と仲間づくり」をすすめ、安心と満足を提供して豊かな生活づくりに貢献するとともに、将来にわたる共済事業の強靭な事業基盤を確固たるものにするために努力していきたいと考えておりますので、いままで以上のご理解とご支援をお願いいたします。
 今村 今日はありがとうございました。

インタビューを終えて
絆と結
 いま、JAに求められているのは何か。
 絆(きずな)と結(ゆい)だと野村会長と考え方が一致した。もちろん、古い時代を単にふり返るというのではなく、これからの近未来(5〜10年先)を常に見すえつつ、新しい時代の絆と結を作り上げようということである。現代的表現で言えば、JAと組合員、JA役職員と地域農業の多彩な担い手との間に強固なネットワークを築き上げようということである。「出向く共済」、「出向く営農」が重要であるというのも、そのための必要な手段である。目的は「人少地多」の時代の中で、若者や女性、中堅や高齢技能者が生き生きとして地域農業の再生に取組み安定した生活を実現できるところにある。結びに私の一句を記しておきたい。
 我は我 されどなお問う 共と協
 この路線でJAの皆さんは頑張っていただきたい。(今村)

(2008.05.15)