JAあいち豊田本店 |
◆地域貢献の旗を掲げて
JAあいち豊田は平成15年度にもJA共済優績特別表彰を受賞するなど、優れた普及活動を行っているが、今回の大賞受賞は初めてであり、奥田克也組合長の喜びもひとしお。また多面的に農協運動に取組む中で、とりわけ相互扶助の「共済事業で表彰されることは格別にうれしいです」と顔をほころばせる。
今後はJAの存在意義が問われる中で「受賞を励みに組合員と住民から“JAがあってよかった”と喜ばれるような組織づくりをさらに強めていきたい」との決意だ。
JA経営にとって共済事業の比重は大きい。「いかにして共済事業が新しい時代の要請に応えていくことができるのか。そのあり方を真剣に考えていくことが大事です」とも指摘し、地域社会への貢献を強調した。
優れた実績を挙げた要因について共済事業担当の沢田卓三常務は、優秀なLAが年々増えてきたことを挙げた。同JAでは優績LAの全国表彰数が、昨年の11人から23人に倍増した。「それだけレベルアップしてきたのかなと思っています」と常務は話す。
生命共済の新契約実績を大きく伸ばしたのが1つの特徴だが、「やはり組合員・利用者のニーズを反映した仕組改訂の力が大きい」と谷澤真一共済部長らは語る。
奥田克也組合長 | 沢田卓三常務 |
◆「3Q訪問」も追い風に
加えて常務は「契約者宅を全戸(個)訪問する『3Q訪問活動』も追い風になったし、JA合併5周年記念行事の中でJA共済による生活保障の拡充を訴えてきたこともプラスに働いたのではないでしょうか」と述べた。あいち豊田は14年に隣接JAと合併している。
同JAの体制は職員数700人、共済担当職員は95人であり、そのうちLAは64人を占めている。
共済部には6課あるが、その中で共済企画課は18年度に立ち上げられた。普及企画課新設の理由は中山間地域などの地勢的な問題や高齢化への対応など同JAが抱える課題に対し、共済事業のあり方を追求する必要が出てきためだ。
19年度はこの課がよく機能して普及課の活動と相まって成果に結びついたとのことだ。
とくに自動車共済の推進で支店窓口の位置づけの明確化や職員教育、支店目標のクリアに向けた研修会の開催などで企画活動が効果的だったという。
普及課はエリア別に3課に分かれている。第一普及課は中山間地を受け持ち、限界集落も含まれている。第二普及課は豊田市内の中央部で、トヨタ自動車の本社・工場などがある。第三普及課はその南の平地だ。
推進目標はそれぞれの地域性に見合ったものとし、画一的にならないよう現場に即した数値を決めるようにしている。
支店は42店で、うち9店は地区本部店といい、LAは9店を足場にそれぞれの支店を担当する。LAの配置はキャリアや能力に応じた弾力的で有機的な異動を心がけている。そうしたやり方が推進実績に反映する方向にきていると常務は語る。
◆生命共済の比率高める
体制整備にはかなりの年月をかけてきた。16年に組合員のアンケート調査をしたところ、既契約者のフォロー活動が十分でなく、顧客満足度が低いという結果が出た。
時期を同じくしてコンプライアンス(法令順守)の条件も厳しくなり、契約上の手続きなどが複雑化した。
そこで複雑化する共済の仕組みやコンプライアンスに則る対応をしながら、アフターフォローを強化するにはどうしたらよいかを検討するため18年6月に共済推進体制プロジェクトチームを立ち上げた。
各事業部署から1人ずつ出してもらって検討した結果、短期間の研修で一般職員にコンプライアンス対応などを教えても無理があるという意見が出されたことから、共済クラブ員制度の導入を決め、18年度から本格的にLA中心の推進体制とした。
クラブ員は正副支店長などの管理職および金融渉外担当職員など計118人である。また、準クラブ員は238人で金融店舗職員や共済職員らが登録している。
クラブ員はLAに見込客の情報を提供し、LAと同行推進に出向く。契約事務に関してはLAが行う。
昨年度の推進では、同行推進の効果もあり生命共済を大きく伸ばすことができた。それまで建物更生共済が主体だったため生命共済の比率を35%に高めた目標を掲げて取組んだ結果、53%と目標をはるかに上回った。
◆窓口とLAが連携して
自動車共済も伸長して前年比アップを実現した。昨年は新契約目標を持って取組んだところ新規を増やし、また各種の特約を伸ばすことができた。掛金では3%増となった。
取組内容の1つに、LAが数人ずつ集まって行う特約の実績検討会がある。少人数だからJA本部に対する要望なども織り込まれてLAたちの発言が活発となり、効果的だったという。
支店窓口での継続アプローチも強化した。窓口の共済担当者が前もって電話して自動継続の顧客に来店してもらうことを基本とした。また、窓口担当者が保障設計書などを作成してLAをフォローするなど連携をとって推進にあたっている。
愛知県は交通事故の多発県としてワースト1だ。自動車共済への理解が広がれば、まだまだ普及の余地は大きいとの見方もある。
昨年度の同JAの普及活動は非常にバランスよく、各分野にわたって総合的に実績を積み上げることができた。医療系共済を中心とする生命共済を伸ばして建物更生共済とのバランスをとり、自動車共済、年金共済も増やし、みどり国民年金にも目配りした。また保有純増も追求した。
LAも以前のように1分野に偏った推進でなく、7つか8つの分野に挑戦して目標を達成するというかたちになり、これがJA共済大賞の栄誉につながった。LAが挙げた推進実績は全体の97%を占めている。LA1人平均の新契約高(保障額)は18年度が14億円程度、19年度は20億円に増えている。
◆優良事例の共有化図る
第二普及課では「自分の能力や個性に向いている分野だけで活動するのでなく、組合が求めている分野で成績を挙げてほしい」と高い目標に敢えて挑戦してもらう一方で、きめ細かい日常の活動管理で「LAのモチベーションを高める努力をしました」と川井祈二課長は話している。
また同課はLAの班会で全国表彰を狙うかどうかを議論し、挑戦を決意して手を挙げたLAには高い目標を持たせたりしているという。班会ではLA個々の発表を重視している。
沢田常務もLA自身にどんどん体験発表をさせる主義だ。成績不振から脱却できずに悩んでいるLAは、成績優秀なLAの話を聞いて見習いなさいという考え方だ。
人それぞれの個性により手法は千差万別だから人まねではなく、その話を参考に自分なりのやり方を考えれば道は開けてくるとし、「発表は優良事例の共有化です。積極的にオープンにする必要がある。だから私は発表のある集会にはできるだけ出席しています」と語る。
同JAでは研修機会をたくさんつくっているが、最近は普及活動の進発式でも研修のあと優績LA3人が発表したり、また支店として取組んだ事例は支店長が発表している。
今後の共済事業について奥田組合長は「一斉推進からLAによる恒常推進に変わった時は新しい推進形態だと思いましたが、今後もさらに新しい事業展開が考えられます。例えば店舗営業の拡充などです。とにかく、より魅力ある商品構成など考えるべき課題は多いです」と語った。
JAの概要 |