新しい時代の進むべき方向を決める舵取りに
◆ほとんどの受講者が「良かった」と評価
19年度から、全国のJAで将来の共済事業を牽引していく30歳代から40歳代前半の中堅職員を対象に、共済基幹職員研修「次世代リーダー養成コース」が開講された。この研修は4期に分けて実施されたが、各期50名の合計200名定員のところ、定員を上回る応募があり、204名(123JA)が受講した。
多岐にわたるカリキュラムを前期5日間、後期5日間の10日間で学ぶというハードなスケジュールだったが、受講者のアンケート結果をみると「非常に良かった」47.5%、「良かった」50.2%と、合わせて97.7%の受講者から良い評価を得ている。
そして多くの受講者から
○仕事に対するこれまでの考え方・価値観を変えるきっかけになった。
○事業を実施していくうえでは、理念・使命の浸透や、CS(組合員・利用者満足)・ES(役職員満足)の向上が重要であることを強く認識した。
○修得した内容を職場の仲間に伝えるとともに、できることから、少しずつ改革・変革を実施していきたい。
といった感想が寄せられている。
◆交流の輪を拡大する情報誌「じせだい」を発行
また、研修時間外にも受講者同士がJAや共済事業に対する自分の思いや悩みを語り合い、同じ仕事をする仲間意識を高めたことも、この研修の大きな成果だといえる。
JA共済連では、「修了生のその後の活躍の様子や、有益な情報などを定期的に報告・提供」し、JAでの活動の中で役立ててもらうとともに、「次世代リーダーの交流の輪を途切れることなく拡大させたい」(宮本愼一常務「発刊に寄せて 巻き起こる『次世代の風』」)と考え、次世代リーダー養成コースの情報誌「じせだい」の第1号をこの5月1日に発刊した(発行:JA共済連全国本部体制整備支援部系統研修室)。
受講者が研修を修了して職場に帰り、どのような活躍をしているのかを「じせだい」の記事のなかからいくつか紹介しよう。
◆ミーティング重視策で大きな効果を
19年度の第1期に、LA2人と共済推進の企画担当者1人、合わせて3人をこの研修会に送り出したJA新いわて(岩手県)の角掛義則共済部長は、研修後の3人に共通するのは「ミーティングの重要性と必要性を周囲に強くアピールし、各自その充実に向けて取組んでいること」だという。そしてLAのミーティングでは「指名されない限り発言しなかった人が、いまはどんどん発言するようになっているのが大きな変化」で、「誰かが推進で悩みを抱えていたら、その原因も徹底的に話し合い、リーダーを中心にグループ全体で成績不振の対策」をするなど、受講者が打ち出した「ミーティング重視策は大きな効果がある」と評価している。そしてこの方法はJA全体にも浸透しているとも。
共済推進の企画担当者は会議の手法を変えたという。会議資料に「ビジュアル化した資料もまじえて、課題は何か、解決するにはどうすべきかということがよくわかるように工夫」をしたことで、「会議の効率が非常にあがった」という。 そして最後に研修を受けた3人は「CSやESにも問題意識を持って」おり、現在彼らが取り組んでいるのは「その第一歩」だが、「彼らがしっかり頑張っているのは頼もしい」と語った。
◆全国のJA職員との交流が「財産」に
本店の営業部金融企画課職員と支店の共済窓口担当者の2人が受講したJAおちいまばり(愛媛県)の森実将人本店営業部長は、2人に「講義を受けるだけではなく、ほかの研修生とよく話をして帰ってくるように」言ったという。「今は共済事業の立て直しをすべき時代」だから「よそのJAはどんな事業活動をしているのか、従来の一斉推進の意識がまだ残っていないか、CSが掛け声倒れになっていないか」を聞き、そしてそこからどんな方法を取り込むことができるかを考えるという。「各JAが互いにそれを行うことで、それぞれが変わっていく。そしてJA共済事業全体がだんだん変わっていく」。
「彼らをはじめ、若い職員に期待していますよ。新しい舵で、JAの進む方向を変えていって欲しい」と期待を語っている。
受講した2人のもっとも印象に残ったカリキュラムは「CSだった」という。これまで漫然とわかっているつもりだったCSが「ESとの関連も含めて体系的に整理できた」という。そして他の受講者と交流することで「それぞれいろんな問題意識を持っていて、共済事業を、JAを何とかより良い方向に変えていきたいという思いや志を強く感じ、みんなの思いは同じだということが分かった」という。そして「交流は私の財産になりました」という。
◆本当のCSとは何かを学ぶことができた
他の受講者からも「本当のCSとは何かを教えられた」などCSについての理解が深まったという感想が多く寄せられている。
JA鳥取西部(鳥取県)からの参加者は、「年度初めに開催する共済事業推進大会でこの熱い感動を全職員で共有したい」と考え、上司に働きかけて、本研修で講義したネッツトヨタ南国(高知県)の大原光秦ビスタワークス研究所長を招いて基調講演をしてもらい、JA全職員の気持ちを一つにすることができたという。
このように、「次世代リーダー養成コース」は、受講者はもちろんのこと、彼らを送り出した職場やJAにも大きな影響を与え始めている。それは今日すぐに数字での成果として表れるものではないが、5年、10年後のJA共済事業を考えるときの「新しい舵」となっていくことは間違いないだろう。
19年度の受講者については、21年1月と2月に分けて「フォロー研修」を実施することにしている。
また、20年度についても6月から4期の研修が予定され、各期50名定員で受講者の募集が行われている。
今年度から「JA共済担当役員セミナー」を開催 ES(役職員満 足)向上を通じたCS(組合員・ 利用者満足)向上を優良企業に学ぶ |
◆JAの新任共済担当役員を対象に
いまJA共済を取り巻く環境は、農家組合員や契約者・被共済者の減少、そして郵政民営化や保険の銀行窓販の全面解禁など大きく変化している。
そうしたなかで共済事業運営を進めていくためには、「JAの共済担当常勤役員の優れた識見と強力なリーダーシップによる適切な舵取りがますます重要になってきている」。そのためJA共済連では、新任の共済担当常勤役員を対象に「事業の最新情報の提供と、優良企業の取組みや事例研究をテーマとしたセミナー」を今年度から開催することにした(渡邊政志全国本部体制整備支援部系統研修室長)。
セミナーの内容としては、共済事業としての重要取組み事項である「組織理念・使命の浸透と効果」「ES向上を通じたCS向上」を中心としたものとなっている。
◆優良企業の先進的なES・CSの取組みを視察研修
具体的には、優良企業として、世界的に高い評価を受けている外資系ホテルと、地域密着で事業を展開している民間金融機関を事例研究の対象にし、両企業の役員からES・CSへの先進的な取組みを講演してもらうとともに、実際に企業を視察して「企業理念・使命の追求・浸透」にどう取組んでいるかを現場で検証。
さらにこうした問題の専門家による解説講義と参加者による意見交換を行うことにしている。
「地方では得られない貴重な話が聞けるのが本研修の特徴です。役員の方が現場で指導するときに、是非役立てていだきたい」と、渡邊室長は「確かな針路の、その先へ。」と謳ったこのセミナーへの自信を語った。
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実施時期は、
第1回が9月25日〜27日
第2回が10月16日〜18日
第3回が11月6日〜8日
の各3日間で定員は1回30名(合計90名)となっている。
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「次世代リーダー養成コース」が好評であったように、この担当役員セミナーも、きっとこれからのJA共済を推進していくうえで大きな効果が期待できるのではないだろうか。