◆交通安全落語や介助犬支援など 4つのイベント中心に
これまでにJA共済が取組んできた社会貢献活動を整理してみると表のようになる。なかでも特徴的な活動は、「交通安全ミュージカル」と「交通安全落語」、「笑いと健康教室」。そして交通事故被害者の自立支援のための「介助犬の育成・普及支援」だ。
JA共済の社会貢献活動 |
介助犬のデモンストレーション |
交通安全ミュージカル『魔法園児マモルワタル』は、初演以来4年間で全国約8万人(約1500の幼稚園・保育園)の子どもが参加している。今年も全国50か所での公演を予定している。
高齢者を対象とした「交通安全落語」は、現在、桂小米さん、春雨や雷蔵さん、笑福亭瓶太さん、五明樓玉の助さん、三遊亭遊馬さんの5人の落語家が披露している。交通事故に遭わないための留意点が楽しみながら習得できると好評だ。今年は全国で250回の講演を予定している。
また、「笑いと健康教室」は、「笑い」がもたらす健康への効果がクローズアップされ、医療の現場でも導入されてきていることに着目して開発された。笑うことが健康に良いということをデータや体験談で検証したDVDを通じて、笑いと健康のメカニズムを知ってもらい、実際に思わず笑ってしまうゲームに参加することによって、健康を促進するとてもユニークな健康教室だ。今年は全国で250回の開催を予定している。
交通落語を演ずる桂小米師匠 |
「介助犬育成・普及支援」では、介助犬を多くの人に知ってもらうための取組みを実施している。介助犬を必要とする人は全国で約1万5000人いるとされているが、介助犬はわずか30頭しかいないのが現状だ(19年12月1日現在)。このことから、オリジナル絵本「世界でいちばん幸せな犬」を制作し、この絵本の読み聞かせや介助犬によるデモンストレーションを幼稚園などで開催し、今年は全国で20回のデモンストレーションを予定している。
さらに、JA共済では、介助犬の活動を紹介したテレビCMを制作・放映し、介助犬に対する社会の理解を呼びかけている。
◆高齢ドライバーの事故防止にドライビングシミュレーター登場
真剣な表情で 「交通安全レインボー体操」をする高齢者 |
今年新たに加わるのが「ドライビングシミュレーターによる安全運転診断」だ。
農村地域では高齢者が自ら運転する機会が多く、高齢ドライバーによる交通事故が増加傾向にある。こうした事故は、反射神経の鈍化など加齢による身体機能の低下によるものが多いのだが、「自分は大丈夫」という過信や「うっかりミス」によるものが大半を占めているという。
このような高齢ドライバーの「過信」や「うっかりミス」を防止するために、JA共済では交通安全落語に続いてドライビングシミュレーターを搭載した「きずな号」を開発した。20年度から全国8地区に配置する。JA祭りなどの会場に派遣して、高齢者に実際に体験してもらい、運転適正の診断を行うというものだ。
高齢者の交通事故は、「運転中の事故では『加害者』になる可能性も高いので、この診断を通じて注意を喚起していきたい」とJA共済連全国本部社会貢献室の小黒博友さんは「きずな号」導入の意図を語ってくれた。
JA共済の社会貢献活動は、表のように多彩で充実した内容になっていることから、それぞれの地域や人に適した活動を展開することが可能になっている。正にJA共済の「社会貢献活動」は、「保障の提供」とともに車の両輪となり、地域に根ざした活動となっている。
5年目迎えた交通安全ミュージカル
子どもたちに楽しみながら交通ルールを伝える
◆命の大切を伝えたい
左から山本さん、白井さん、桐山さん |
「最初のうちは、交通ルールは未知の世界で手探りでしたし、伝えることに徹していましたけれど、今は子どもたちの反応を見て、子どもたちと一緒に楽しみながら演じる余裕ができてきましたね」
4月22日、東京の日本青年館大ホールで600名を超す子どもたちを前に、平成20年度第1回目の舞台を終えたマモルワタル役の白井亜希子さん、婦警さん役の山本美奈さん、おまわりさん役の桐山篤さんは語った(写真右)。
3人が所属するミクル・ミュージカルカンパニーは、平成2年に大阪市の鶴見緑地で開催された「国際花と緑の博覧会(花博)」のパピリオンで結成され、これまでにも阪神・淡路大震災やいじめ問題などをテーマとしたミュージカルの上演を通じて多くの人に「命の大切さや命の重さ」を伝えてきた。
「ミュージカルですから、暗くならずに家族で楽しみながら命の大切さを感じてもらえるような舞台にしています」という。「命の大切さ」はこの交通安全ミュージカルにも通ずるテーマだ。
◆子どもたちに分かりやすいように工夫して
JA共済の交通安全ミュージカル「魔法園児 マモルワタル」は、16年から全国各地で上演され、19年度までに、全都道府県で121回上演され、全国で約8万人(約1500の幼稚園・保育園)の子どもたちが参加している。18年1月には警察庁主催の「第46回全国交通安全国民運動中央大会」で「交通安全協力団体賞」を受賞するなど、社会的にも高く評価されている。
今年度で5年目を迎えるわけだが、初演当時といまでは何が変わったのだろうか。
「初めのうちは、子どもたちがどんな反応をするのか分からなかったから、シーンとした中で始め、ともかく交通ルールを伝えることに徹して」いたが、毎回子どもたちの反応をみながら「ああしよう、こうしよう」と工夫をし、「どんどん変わっていまの形になった」という。
例えば台詞を話すスピードも「最初は普通の舞台と同じ口調だった」が、子どもたちが「楽しんで覚えてくれることが、なにより大切だから、ゆっくり、はっきり話すようにした」。また子どもたちの反応も地域やその日に集まった子どもの性格によって異なることから、「毎回会場の雰囲気にあわせて内容をアレンジしている」ということだ。 今年は、この日を皮切りに全国50か所を巡回する予定だ。
◆交通事故が減ってきているのが嬉しい
いまは舞台で子どもたちと楽しみながら上演しているが「交通事故が減ってきているという話を聞くと嬉しいし、もっとがんばろうと思います」と3人はこもごも語ってくれた。
そして子どもたちは卒業し、また新しい子どもたちが入ってくるのだから「このミュージカルは永遠に続けていかなければ」とも。 舞台が終わったあと帰る子どもたちの目が喜びで輝いていた。そして「横断歩道を渡るときは?」というと、きっと舞台のマモルワタルや婦警さん、おまわりさんの姿が焼きついているのだろう「手をあげて、右を見て…」と、教えてもらったことを大きな声で復唱してくれた。
子どもたちが今日学んだことを毎日の生活のなかで役立て、交通事故にあうことなく育ってくれることが、この交通ミュージカルの願いであり、社会貢献活動を通じたJA共済の願いでもある。