今年の気象経過
気象庁によると、今年4月の気温は、北・東・西日本で高温、北日本では顕著な高温で、降水量は、東日本太平洋側で顕著な多雨、他の地域は小雨でした。月降水量の記録を更新した地点もありました。
気温は、4月上旬は平年並、中旬は全般的に高く経過しました。4月上・中旬の降水量は東日本の太平洋側で多く経過しました。4月下旬は晴れる日が多かったため、気温は高め、降水量は少なめでした。
5月は、岐阜では、上旬の気温はやや高く、降水量は少なく経過しました。中旬には、気温、降水量ともに平年並に経過しました。
向こう1か月の予報によれば、5月下旬〜6月下旬までは、気温は高め、降水量はやや多めと予想されています。
今後も、これらの気象情報に十分注意する必要があります。
今年の野菜病害の発生動向
平成20年5月15日付け病害虫発生予報第2号(農水省)によれば、施設栽培において、トマトの灰色かび病が関東、南九州で、きゅうりの褐斑病が北関東で多いと予想されています。
露地栽培では、たまねぎのべと病が中国地方で多い、ねぎの黒斑病が南関東で多いと予想されています。
今までに発表された注意報などについては、害虫を含めて表にまとめてあります。都道府県から発表された注意報などの発生予察情報には、十分に注意していただきたいと思います。
トマトすすかび病は、近年、各地で問題になってきています。従来認められなかったレースや病害も発生していますので、殺菌剤の効きが悪く、病害が押さえられない場合は、病害虫防除所などの指導機関に相談されると良いでしょう。
トマト葉かび病。葉裏には、ビロード状のかぶが密生する |
今年の野菜虫害の発生動向
病害虫発生予報第2号によると、施設野菜では、トマトのコナジラミ類が南関東、南九州で多い、キュウリのアザミウマ類、アブラムシ類が北関東で多い、ナスのコナジラミ類が北九州で多いと予想されています。
ウイルス病を媒介する害虫が各地で問題になっています。野菜では、タバココナジラミが媒介するトマト黄化葉巻病が特に重要で、平成19年11月までに31都府県で発生しています。
他には今までのところ、岐阜ではコナガ、アブラムシ類は少発生傾向で推移しています。
トマト黄化葉巻病の現状
タバココナジラミ蛹 |
タバココナジラミ成虫 |
今までの研究により、病原ウイルスの検定、媒介虫であるタバココナジラミのバイオタイプ判別が可能になりました。その結果、指導機関ではこれらの検定や判別を行い、より的確な情報、指導を行うことができるようになりました。
本病はウイルス病なので、進行を止めたり、治癒したりする薬剤はありません。ですから、発病後には罹病株を抜き取って、処分するしか方法がありません。従って、いかに感染を防ぐかが課題であり、タバココナジラミ対策が中心になります。殺虫剤だけでコナジラミ類を管理するのは無理であり、他の手段と組み合わせて管理する必要があります。
施設入り口の二重化、施設内外の黄色資材、ファンや目合いの細かい防虫ネットによる侵入防止策、施設周辺の寄主植物の除去など、個別技術はほぼ確立されたと思います。
要防除密度が非常に低いため、施設内にタバココナジラミを侵入させないための対策を組み合わせて徹底する事が重要です。侵入防止策は、他のウイルス媒介虫であるアブラムシ類、アザミウマ類に対しても有効です。
また、栽培終了時には施設の蒸し込み処理によりタバココナジラミを完全に死滅させて、施設外に拡散しないようにすることも徹底してください。特に、ピーマンなどの作物で大発生したタバココナジラミが、栽培終了時に一斉に施設外に拡散しますから、必ず蒸し込み処理を行ってください。トマト以外の寄主作物の、栽培者も含めた地域ぐるみの対応が重要です。
本病については、野菜茶業研究所から「トマト黄化葉巻病の防除に関する技術指針(暫定版)」がホームページに公開されていますので、参考にしてください。
今後取り組むべき野菜病害虫防除対策
トマトでは、タバココナジラミ・トマト黄化葉巻病対策の徹底が必要です。その他の病害虫については、各都道府県から病害虫発生予報が発表されます。特に注意すべき病害虫については、その程度に応じて、警報、注意報、特殊報が発表されます。これらの情報や気象情報から、早めの対策をとったり、作業計画を立てたりすることができます。インターネットでも公開されますから、是非参考にしていただきたいと思います。
ポジティブリストに対応するためには、
(1)ドリフト対策を徹底する
(2)隣の畑の農家と情報交換する
(3)(独)農林水産消費安全技術センターのホームページで農薬登録の内容を確認する、などが重要なポイントです。
特に、農薬の登録内容は頻繁に変わりますから、使用前に必ずご確認ください。不明な場合は、農薬会社に確認すれば良いと思います。
意図しない散布を防ぐために、散布後は器具、特に薬液タンク、ホース、ノズル内を十分洗浄する、ドリフトを防ぐために風のない時に薬剤散布をするなど、基本をきちんと守ってください。
また、薬剤散布だけでなく、農作業の記録をつけておくことは、病害虫の発生などの問題が起きたときに対策を立てるために大切ですので、是非実行してください。
病害虫は知らない間に変化していきます。よく観察するとともに、最新の情報、技術を知って、病害虫管理に役立ててください。