主食以外に米を利用するシステムづくりが急務
質問1
また、米はかろうじて自給をしていますが、他の作物は必ずしも競争力がないという生産的な条件があると思います。
担い手の減少に関しては、生産だけでなく販売を行う農業経営で所得を上げたり、安定した職業としてやっていける産業として法人化を推進するなど工夫が少し足りませんでした。その結果、全体的な日本経済の成長に追いついていけず、職業としての魅力を失っていったという部分も若干あったのではないかという感じもしています。それらすべてが自給率の低下、後継者の不足、耕作放棄地の増加というものにつながっているのではないかと思います」
質問2
「39%台に突入し、米の活用などを中心とした自給率向上策を講じていくべきだということを私たちも打ち出しました。遅まきながらという面もありますが。
ただ1%上げることも容易ではなく、たとえば、パンなど今まで麦で作っていたものを米粉に替えるといった現実的なことをいくつも重ねながら何とかして回復しようということです。
目標についてはずいぶん議論しましたが、まずは40%を切るという逆のベクトルを何としても戻す。そして当面50%を目指しやはりこれは維持しようと考えています。
耕作放棄地解消をはじめとした生産基盤整備や、できるだけ米を中心に食べていただく、それから米を有効利用する観点から飼料・バイオ燃料の原材料等にも活用するとあらゆる考え方を総動員していかなければいけないと思っています」
質問3
「北から南まで一律に論じることはできませんが、とくに土地利用型農業に関しては今のままの規模では限界があります。その意味で水田・畑作経営所得安定対策を仕組むという方向は正しかったと思っています。意欲ある個人が大規模化するほか、集落営農というかたちでみなが助け合いながら経営するかたちでもいい。ただ、党としてはそれだけが農業の担い手ではないと考えていて、小さな規模でも農業ができるわけですから例えば野菜をつくり直売所で販売するなどの工夫もあると思います。すべてが大規模化しないとやっていけない政策ということではありません」
――上から担い手を限定することについて批判がありました。
「土地利用型農業の基本は大規模化が大事だと言いましたが、果たして日本のこの国土のなかで型にはまったような4ha、20haという基準でいいのかという問題意識は持っていました。もちろん小さい規模の農家はより努力をしていただかないと、経営は厳しいということは事実だと思いますが、それでもやはりある程度の規模まで容認すべきだと。結果的に要件が緩和されたんですが、これまでの過程で混乱はあったかもしれない。しかし、集落営農でもできるだけ大勢のみなさんが議論しながらひとつの経営体をつくろうという作業のなか、ずいぶん意識も変わったのではないかと思います」
――現行の政策では、米については価格が傾向的に下落しているなかでは有効性がないということ、麦・大豆についても過去実績で補償するのでは自給率向上に向けた生産力の拡大につながらないのではないかという批判があります。
「米の価格は今後も引き続き落ちていくかというと必ずしも予測しにくく、下落だけが続くのではないだろうと思いますが、少し様子をみる必要があるのではないかと私自身は思っています。かりに将来、一方的に落ちていき、それを追いかけて補償するのでは現状に合わないということにもなるため、いわゆる“ならし政策”については見直しが必要だと考えています。
ただ、やはりこれから考えていくべきは、ご飯として食べる米という以外のところにもっと需要を増やしていく。飼料やバイオエタノールも含め、そういうかたちで農家のみなさんに、まずいちばん得意な稲を作ってもらうことで勝負する。ここ1、2年でひとつの流れを作っていかなければならないと思っています。生産調整をいつまで続けるのかということも難しい問題ですが、一斉に自由にというと、作りすぎて処理できないと当然価格が下がりますから、国内で米をどう他に利用できるシステムを作っていくかというのは、大変重要なことだし急がなければいけないという思いです。
麦、大豆については今年も自給率向上のためにたくさん作ってくださいと政府としてお願いし、さらにまだまだ広めていかなくてはならないということだから、助成を拡大すべきであると思います。同時に需要に対応し、新技術の導入や機械・設備の整備を行い、生産性の向上や安定化を図らなければならないと思います」
質問4
「党としては所有から利用へという考え方は基本的には正しい考え方だと思います。そこを基本として農地をいかに有効利用するかということです。
農地を集積できないのは、農地を持っている人たちが人に利用していただくことに抵抗があるからだと思います。世代交代も進み少しは意識も変わってきてはいますが、それにしてもやはり人に貸すということについての抵抗は根強いです。ここはやはり法制度を見直し、所有はしているけれども安心して貸すことができるというシステムを確立し、安心感を出すよう早急に解決する必要がある。
株式会社の参入については、現在は利用しないような農地について株式会社に利用を認める制度がありますが、それをどこまで緩和するかは別にして、農地として利用するという条件のもとで緩和することには私は賛成です。党としてきちんと結論を出したわけではないですが、その条件を法的に担保するということも考えていかなければならないと思います。ただ、最終的な姿は、経営形態によって差をつけることでいいのかというのが個人的な考え方です」
質問5
「結果的には決裂したわけですが、私はいずれ、今回のような方向で交渉は進んでいくと思っています。今は日本農業を変えていく重要な時です。これからは若者に託す時代に入っていくわけですから、農業政策を変えていく節目にしていかなければならないと思います。
その意味で戦後の農業政策の延長線上でいくというのは無理があると思います。集落そのものがなくなってしまうような地域も出てきているわけですから。WTO全体で考えれば日本もやらないというわけにはいかないですから。工業製品に泣いてもらって農業をプラスにするというほどの逆転はなかなか難しいでしょう。そうすると重要品目の数をと、ここだけは何とか守らなければいけないというところになる。
国際的な食料価格の高騰や、安全性の問題もあって、国民の間にも信頼できるものを自分のところで作らないとだめだという意識の高まりがあり、そういう意味では、今回ある一定の条件で妥結できたら日本の農業の転換がよりスムーズにできるのではないかという思いもあります」
質問6
「食の安全の確保とともに食の安定供給をきちんと図るということが公明党の政策の基本だと思っています。国民の食は安全でいつでも満ち足りているというごく基礎的なことを担保するためにどうするかということを考えて、党では食料安全保障対策PTを立ち上げました。
また、生産は大事ですが、流通をいかに効率化していくか、また、販売ではできるだけ農家の顔が見える体制をつくりたいと考えています。それから農村そのものが本当に崩れかけていますから、そこをどう支えていくか、生産政策だけでなく、地域社会をどう守っていくかを考える必要があり、そこに焦点を当てているのが公明党の政策です」