女性大学の風景 |
自分らしく輝くための女性大学
◆伝統の味と文化を未来に伝えるために
JA秋田おばこ女性大学の12月期講座は「フラワーアレンジメント講座」だったが、他にも東大の今村奈良臣名誉教授や京大の藤谷築次名誉教授などによる農業講演会、JA園芸課職員による自給野菜栽培講座、フラダンス教室、ライフプランセミナーなど、毎月多彩なカリキュラムで開講している。
生活に密着したテーマを幅広く取り上げることで、参加意欲を高め、女性部員みんなが元気に明るく活動できるようにするのが狙いだ。JA秋田おばこ女性部には全14支部ある。毎回各地区からまんべんなく参加者がいるのも、実生活や農業経営に役立つものから、趣味に活かせるものまでさまざまなカリキュラムを開いているからだ。
今後の予定に「地域の食と農を守ろう」をテーマにした観劇や、食文化を学ぶ講座がある。これはJA秋田おばこ女性部の活動方針である「食と農の再生」を実践するためのものだ。実際にその活動の中心的役割を担っているのが、農産物加工所である。
JA秋田おばこでは、平成13年に加工協議会を結成、研修会や豊饒祭への出店などを行っている。現在協議会の会長を務める倉田栄子さんがいる、太田支店の農産加工部会を訪ねた。
加工協議会会長 |
同部会は平成3年、「手づくり加工グループ」として12人で発足した。
「減反で余剰野菜が増えたんで、モノ作りの好きな人が集まって漬け物にして売ったのが始まり。軌道に乗りはじめたのは、平成5年におやきを作り始めた頃かな。その頃にJAと加工施設の貸借契約をして、事業が大きくなりはじめた」という。
米粉の生地で甘いあんこを包んで焼くおやきは大評判。食品添加物を一切加えず、地元産の米やサツマイモなどで作るおやきは、時間が経っても固くなりにくく、柔らかいもちもちの生地と餡のバランスがたまらない! 倉田さんに柔らかく仕上げる秘訣を尋ねたが「企業秘密」だそうだ。長い歴史と伝統文化を大切にする姿勢が、この味を生んでいるのだろう。
毎年12月8日に無病息災を祈る伝統行事「病焼き」では、地元の給食センターをはじめ官公庁や企業にも出荷し、1日で数千個を売る。子どもたちが家に帰ってくると「給食でおやきが出たよー!」と、とても嬉しそうに報告するという。
倉田さんに加工所の夢を聞くと、「伝統の技を継承して未来に伝えていくこと」だと答えてくれた。「若い人たちは伝統食を作れない人も多いから、私たちが伝えていくしかない」というのは、若い女性部仲間が増えていかない現実の裏返しだろう。
現在、太田加工所で働く14人の平均年齢は60歳前後。「若い人はなかなか入ってこないねぇ。時給が安いから」と冗談交じりに話すが、人件費や高齢化の問題は今後の運営を考える上でも切実だ。
「今はみんな仲が良いから、楽しくやっていけてる」が、「なんとか若い人たちが仲間になってくれるように」と地道な活動もしている。「ついこの前、小学生と一緒に数十mのジャンボのり巻きを作ったんだよ。子どもたちを巻き込んだ食農活動で、若い母親たちを取り込んでいきたいね」。
◆「米粉には夢がある」新商品の開発もめざす
加工所とともに「食と農の再生」の中心を担うのが直売所だ。今はどのようなモノが売れているのだろうか。加工部会から遅れること2年、平成15年に協議会を結成した直売部会の現会長、小笠原友子さんのいる「大綱(つな)の里」を訪ねた。
「大綱の里」には、圏外からも多くのお客さんが訪れる。お目当ては、旬の野菜や山菜など新鮮な地元食材のほか、加工所で作った漬け物や伝統食だ。取材中にもひっきりなしにお客さんが訪れた。大変な盛況っぷりだが、その多くは「口コミ」だというのが特徴的だ。
定番で人気がある商品は「花ずし、いぶりがっこ、おやきとか、地元の伝統食」だが、今一番力を入れているのは米粉を使った新商品だ。「パンやメンも売れるけど、この前は米粉でピザも作った。ハクサイをきざんで混ぜてね。美味しかったよ!」
直売協議会 会長 |
これからは米粉を使った商品をもっとたくさん作りたいというが、課題はいかにして米粉を調達するか、ということ。現在、製粉はJA管外に委託。商品化できるほど精度の高い製粉機がないため、管内では生産できない。「やっぱり、自分の家で作った米の米粉を使いたいねぇ。大仙市内に製粉機が1つでもあれば米粉が作れるんだけどね」という小笠原さん。「米粉には夢があります!」と笑顔で話し、伝統食だけに頼らない新しい目玉商品の開発にも意欲的だ。