世界的に類を見ない新規構造 ユニークな特長生かして創製 協友アグリ(株) 開発普及部 牛口良夫氏に聞く |
――開発経緯から。
「ピラクロニルは、ドイツシェーリングAG社(現バイエル クロップサイエンス社)がピラゾリルピラゾール環を有する化合物群から水稲用除草剤としての適性を発見した」
「新規の化合物で、2002年に八洲化学工業(現協友アグリ)が権利を取得し開発を行ってきた」
「幅広い殺草スペクトラムを有し、近年問題となってきたSU(スルホニルウレア)抵抗性雑草に対しても高い効果を示すことが、開発を継続する大きな原動力となった」
――作用性はどこに。
「有効成分は、ピラゾリルピラゾール環を有する化合物であり、水稲用除草剤としては世界的にも類を見ない新規の構造を持ち、ユニークな特性を有している」
「ピラクロニルは、雑草の茎葉部に褐変や葉枯れを引き起こし枯死に至らしめる。活性の発現には光が必要で、筑波大学との共同開発による、ノビエ、キュウリを用いた各種生化学試験の結果から作用機序(作用性)はプロトポルフィリノーゲン−IXオキシターゼ活性阻害(PPO阻害)と考えられる」
――商品コンセプトは。
「ヒエだけでなく、広葉類、カヤツリグサ科雑草にも幅広く効果を示す。特に、コナギ、ミズアオイに対する活性が極めて高い。SU抵抗性雑草に対しても、幅広い効果を示す」
「効果の発現も非常に速く、温度による効果の変動が少ない、水稲に対して安全性が高く、移植前後の使用が可能だ」
「1キロ粒剤、フロアブル、ジャンボの3成分で3製剤を揃えた剤があり、特別栽培米に適する除草剤としても期待している。また、田植同時処理が出来る剤もラインアップした。さらに、担い手対策にも十分に対応できる」
「ここに来て、水稲用除草剤の豊富な品揃えを果たすことが出来た。今後とも、系統農薬メーカーとして、元気のある日本農業や食料生産に貢献していくために、新しい提案が出来ればと思っている」
――ありがとうございました。
雑草に対して速効的な除草効果 特長を十分に生かし有効利用を (財)日本植物調節剤研究協会 専務理事 竹下孝史氏 |
平成19年には、我が国の水稲栽培で使用された除草剤成分数は44剤であったが、平成20年はこれに2剤が加わり46剤となった。
この内のひとつがピラクロニルである。
ピラクロニルは、PPO阻害作用を有し、結果として葉緑素の生成を阻害するとともに、植物体内に活性酸素を発生させることにより、細胞を破壊する作用がある。
したがって、雑草に対し速効的な除草効果が発現する。
ピラクロニルのみを含有する初期除草剤ピラクロンは、1.5葉期までのノビエおよび同時期の一年生カヤツリグサ科・広葉雑草など多くの水田雑草に優れた殺草効果を示し、有効な初期除草剤である。
しかし、生育が進んだイヌホタルイに対しては、やや効果が弱い場合がある。
したがって、同時に開発されている約9種類の混合剤は、このイヌホタルイに対する効果がより強化されているほか、2.5〜3葉期のノビエにも有効な殺草幅の広い一発処理剤として展開されている。
さらに、単剤および多くの混合剤でクログワイ・オモダカなどの難防除雑草に対する有効性も認められており、早速「オモダカ防除に安定した効果がある」との現場からの声も寄せられている。また、直播水稲についても試験が進行中である。
本剤はその作用性から、水稲に対し葉鞘や葉身基部に強い褐変症状を呈することがある。
しかしながら、この症状は一過性であり、水稲の生育が進むに従い目立たなくなるとともに、この症状が直接的に収量に影響をおよぼすという結果は、これまでの多くの試験事例においても見られていない。
注意すべき点として、本剤は適度な水溶解性があるため、水が移動し易い条件下では抑草期間が短くなる傾向があることであろう。
全体として除草効果が劣ることにも繋がるところから、本剤や混合剤の使用にに当たっては、著しい漏水田での使用はもとより、畦畔などからの水の流亡が無いよう、田面水の管理にはこれまでと同様心がける必要がある。
新たな水稲用除草剤としての本剤の特長を生かし、有効な利用に努めて頂きたいと願う次第である。
ピラクロニル剤の普及推進を 組織が一丸となってサポート JA全農 肥料農薬部 次長 上園孝雄氏 |
「ピラクロニル剤」は、広い殺草スペクトラムを特徴とした、全く新しい水稲用除草剤です。
現在、水田の雑草防除において大きな課題となっている抵抗性雑草防除の「切り札」として、農家の営農に貢献していく水稲用除草剤になるものと確信しています。
JA全農は、ピラクロニル原体の共同開発者の立場と、ピラクロニル原体を含む製品の流通業者としての立場の両面から、ピラクロニル剤の普及推進を組織一丸となって、サポートしていく所存です。
ピラクロニル剤を大型品目に育成していくことで、系統農薬事業のシェアアッップを目指していきたいと考えています。
協友アグリはもちろんのこと、エス・ディー・エス バイオテック、三共アグロ、住友化学、日産化学工業、日本農薬、北海三共のこの分野に強みを持つ関係メーカーと連携して、ピラクロニル剤の普及目標面積である30万haを早期に達成するよう頑張っていきますので、皆様のいっそうのご支援をいただきますよう、何卒よろしくお願いいたします。