「今後のJAグループ米穀事業の方向」をふまえ、21年産についてはおもに次のような点をポイントに事業に取り組む方針だ。
(1)実需に即した計画生産と水田機能のフル活用
▽国は21年度予算で産地確立交付金、水田フル活用のための水田等有効活用促進交付金を措置、21年産も引き続き生産調整の実施を約束した生産者に10aあたり3000円(20年産主食作付け面積分)を交付。
▽各県域では、県中央会と連携し上記の施策を積極活用。(1)推進体制の構築、(2)重点転換作物、重点推進JA・地域の設定、(3)時期別「行動計画」による取り組み推進と進捗管理、(4)生産調整未実施者への行政等の働きかけ強化、(5)統計データと面積かい離の解消、(6)加工用米・新規需要米(米粉・飼料用米など)への支援対策の構築、を行う。
▽飼料用米・米粉原料米の取り組みは、実需確保、手取り確保の観点から県域での地域内流通の優先。全国流通スキームは地域内流通の補完(=飼料用米)と広域流通実需者対応(=米粉原料米)という位置づけの取り組みとする(下図)。
▽飼料用米、米粉原料用米を予定している県域には、播種前契約促進に向け、助成体系、需要情報、生産・流通体系に関する情報提供を行う。
(2)安全・安心の確立による消費者からの信頼確保
▽生産履歴記帳、種子更新、農産物検査受検を基本要件とする「JA米」の取り組みは引き続き継続。
▽ただし、21年産からJA米運営管理手法の見直しを実施。基本となる「基本要領」(全国要領)に基づき県域ごとにDNA鑑定、残留農薬分析など独自基準も含めた「運営管理要領」(県域要領)を作成する。
▽一般米と区分する手法は現行の「JA米シール」の貼付から、「JA米」印の押印へ順次移行する。
▽食品衛生法上流通することができない事故米穀の処理手続きも含めた「米穀事故処理マニュアル」(仮称)を作成、また、発生した事故米穀処理にかかる共助の仕組みも検討する。
(3)販売計画の早期策定と安定取引の確立
▽連合会は年間販売計画に基づきJAとの協議を実施、年間販売計画の一定割合を播種前契約、収穫前契約、複数年産契約に結びつけられるよう、出荷契約締結前に販売推進を行うとともに、出荷契約締結後も早期契約による販売推進に取り組む。
(4)確実に履行される出荷契約、集荷計画の実現
▽出荷契約数量が確実に出荷されるためにはJAにおいて生産者別・銘柄別の集荷計画が整備されていることが必要。この必要性についてJAと連合会で認識を共有する。
▽JAが策定した生産者別・銘柄別集荷計画と、連合会が策定した年間販売計画の突き合わせを実施する。
▽策定した集荷契約・販売計画を達成するため、庭先集荷・フレコン集荷など集荷手法の強化、出荷契約金上方修正、確約契約メリットの設定、買い取りなどの取り組みなどについてJAと連合会で協議。地域実態に応じた機動的な手法を導入する。
(5)集荷・販売の多様な取り組み
▽生産者・JAの問題意識をふまえ、共同計算単位の細分化、継続的な共同計算経費の削減など結集可能な運営改善に取り組む。
▽県域共同計算だけでは集荷・販売計画達成が難しい場合は、委託非共計(個別精算)や買い取りなども組み合わせたJA別の銘柄別販売計画数量確保の手法を検討、構築する。
▽パールライス卸による直接仕入れが計画達成に有効な場合は、JA、県域の合意を前提にJAからの直接仕入れも検討する。
▽担い手については実施可能な県域・JAからTAC(担い手に出向く担当者)と連携した取り組みを開始。TACと情報を共有し担い手とJAとの関係強化を図る(図下)。
(6)契約の裏付けを持った集荷時概算金水準の設定
▽播種前・収穫前契約、早期契約による積み上げで、概算金設定時点で相当数の契約が締結されている状況をめざす。
▽販売と連動した出荷確約メリット措置など、出荷契約の確実な履行に資する概算金の設定を地域実態をふまえて行う。
(7)地域実態に応じたJA・全農の機能分担、事業体制の確立
▽地域実態に応じた事業展開の類型には(1)県間流通銘柄を中心とする県、(2)大消費地近郊県、(3)生産量の少ない県、の3類型が考えられる。
●類型(1)の機能分担、事業体制:担い手育成や、実需を特定した契約栽培・安定的取引拡大の観点から、JAは需要に応じた主食用米の計画生産の推進、生産基盤強化を担う。
全農は委託県域共計販売を事業運営の基本とし、東西販売センター、パールライス会社と一体となり販売力を強化する。
●類型(2):競合他社に対するJAの対応力強化の観点から、全農は買い取り、委託非共計など多様な集荷・販売手法を駆使し、連合会段階での取り扱い数量を確保する。
●類型(3):JAはこれまでどおり生産基盤強化や集荷対策の機能を担う一方、集荷や販売対応については全農がその機能をパールライス会社に移管、自県産米の効率的な取り扱いを行う。
▽これらの方向をもとに各県域で現状を再認識したうえで、十分に議論し地域事情に対応した県版方針と具体策の策定をすすめる。
◇
今回示された組織討議案では、JAグループの今後の米穀事業方針として、地域実態をふまえたJA、全農、関係会社の機能分担をいかに実現し、水田農業の再構築と米穀の安定生産・安定供給をめざすものといえる(下図)。各地で基本方針にもとづいた様々な手法により、生産者・JA・全農が結集する事業確立をめざした組織協議が十分に行われることが期待されている。
21年産米生産・集荷・販売に係る基本方針のポイント |