ラベルで注意事項を確認
基本技術の励行が大切に
周辺環境への影響に注意を
農水省
◆基本的事項を必ず確認
農薬による事故は近年減少傾向にあるものの、依然として発生しており、農薬の使用にあたって、周辺環境への配慮が十分でなかった事例や農薬使用基準に違反した事例が散見されている。また、近年、農薬の使用地域周辺の住民などへの配慮が求められていることもあり、あらゆる面で農薬の安全かつ適正な使用の必要性が高まっている。
このような状況をふまえ、『農薬危害防止運動』では、農薬の危害を防止する方法として、農薬及びその取扱いに対する正しい知識の普及啓発、農薬の適正使用や適正販売、環境へ危害防止対策などについての指導を行っている。
平成15年から平成19年の5年間の農薬による中毒事故の発生状況(図)によれば、農薬使用後の作業管理不良が事故原因の3割を占めている。また、保管管理不良、泥酔などによる誤飲・誤食など本人の不注意やマスク・眼鏡および服装など装備不十分なども発生しており、これらの中毒事故の多くは、農薬使用者の不注意に起因するものであると考えられている。農薬を使用するときは、必ずラベルに記載されている使用基準や注意事項を確認したり、周辺への配慮といったごく基本的な事項を常に確認し、事故の未然防止のために注意を払うことが大切といえる。(平成21年危害防止運動用啓発ポスター参照)
また、農薬本来の使用目的とは異なる事件も発生していることから、農薬が他の目的で使用されないよう、鍵のかかる専用保管庫で保管するなど、しっかりした保管管理を行うことが必要だ。万一、紛失したり、盗難にあった場合には、すみやかに警察や病害虫防除所などへも届け出していこう。
◆農薬の飛散に必要な措置を
農薬の使用にあたっては、農薬使用基準どおりに使用すること大切だが、育苗箱等に農薬を使用する際は、使用農薬が周囲にこぼれ落ちないように散布する、水田で農薬を使用する際は、「止水期間を守る」など周辺環境への影響を出来る限り低くするよう注意を払う必要がある。また、住宅地などにおいて農薬を使用する場合は、農薬の飛散により周辺住民や子供などに健康被害を及ぼすことのないよう必要な措置を講じることが大切だ。
◆関係者の連携強化を
さらに、近年、みつばちの数が減少している問題では、その背景としてさまざまな原因が考えられているが、農薬も一因ではないかとされており、これまで以上に養ほう関係者と農薬使用者、農業団体などが情報交換などの連携を強化し、農薬を使用する際は事前に関係者への連絡を行うなどの対応をしっかり行うことが重要と考えられる。
農薬危害防止運動では、これまでも農薬の安全かつ適正な使用及び保管管理を呼びかけているが、農薬の使用前には、使い慣れた農薬であっても、基本事項を必ず確認し、周辺へ配慮し農薬を使用することがいっそう大切になってくる。
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農薬ラベルの確認を優先
防除履歴の記帳が重要に
農薬の使用は基本をしっかり守って
JA全農
◆3つの安全を推進
――いよいよ、本格的な防除シーズンの到来ですね。
全農 JAグループでは、6月を「安全防除運動」推進月間に位置づけ、「農産物」、「環境」、「生産者」の3つの安全の推進に積極的に取り組んでいます。昭和46年からの取り組みで、さまざまな取り組みを行う中で、農薬を適正に使用すれば安全な農産物を生産できることが証明できたのです。
例えば、防除日誌の記帳と適正使用をすすめる「防除日誌記帳運動」を昭和60年から、平成元年からは防除日誌のチェックと使用された農薬の残留分析を行うことで農産物の安全性を証明する「防除日誌パイロットJA」の取り組みを展開しました。その後は、「安全防除優良JA」などJAが自ら適正防除に努めるような動きにも繋げてきました。
――安全な農産物生産の基本は、どこにありますか。
全農 1に農薬の「使用基準」を守ることで、2?4がなく、5に「使用基準」を守ることに戻るのではないでしょうか。このため、使用前の農薬ラベルの記載内容の確認と、それにもとづく適正な使用がもっとも重要になってきます。使用基準の変更にも注意が必要ですね。
――農薬取締法上では、どんなことを守っていけばよいのでしょう。
全農 適用作物、使用量や希釈濃度、使用時期(収穫前使用日数)、総使用回数の4つの項目が挙げられます。
特に、4つ目の総使用回数は、有効成分ごとに守らなければならないものであり、同じ有効成分で製品名が異なる場合も多々あることから、混合剤などを使用する際には十分な注意が要求されてきます。
――「安全防除運動」の基軸の1つに記帳があるのでは。
全農 農薬を適正使用した記録として、防除履歴の記帳が欠かせません。適正な農薬使用の証明とするには、各項目に漏れがないように記帳する必要があります。
使用した年月日、場所、農作物名、農薬の種類または名称、使用量や希釈濃度の記帳に努めるよう法律で定められていますが、適正防除の証明には、さらに播種・定植日・収穫日の記載も必要です。
環境への配慮が
――農薬の散布にあたっては、周辺環境への配慮が。
全農 農薬のドリフト(飛散)を極力軽減するためには、(1)風の強い日や上昇気流が起こりやすい日中の散布は避け、風向きにも留意する、(2)可能な限り、散布粒子の大きい製剤を用いる、(3)ドリフトの少ない散布ノズルを使い、できるだけ作物の近くから散布する、などへの配慮が必要です。
また、水田で農薬を使用する場合には、水田外への農薬の流出を防ぐために、散布後「7日間の止め水」や畦畔の管理、オーバーフローしないような工夫も欠かせません。このことは、農薬の効果を安定して発揮させることにも繋がります。
特に、ほ場の周辺に住宅地、公共施設、養蜂場などがある場合には、事前に農薬散布の予定を連絡するなど、より安全に実施する必要があります。
使用者の安全も
――農薬を使用する農家自身の安全も重要です。
全農 その通りです。カッパなど保護衣や農薬用マスク、手袋をつけずに農薬を散布すると、農薬の濃い液に触れたり、少量でも吸ってしまったりする可能性がでてきます。
散布者の安全のためには、農薬ラベルに記載されている保護衣、農薬用マスク、保護メガネ、手袋などの保護具をしっかり身につけることが大切です。蒸し暑い最中での散布作業。軽装にシフトする気持ちも分かりますが、保護具の着用を心がけて下さい。
その他、敢えて、農薬は万が一盗まれて悪用された場合、事件の原因になることもあることから、「鍵のかかる保管庫」でしっかり保管しましょう。全ては、「基本」を守ることです。