イネを原料にしたバイオエタノール混合
休耕田を有効活用
(写真)7月17日の「グリーンガソリン」販売開始記念式典(左から)泉田新潟県知事、近藤農水副大臣、萬歳JA全農経営管理委員、秋田俊毅JA全農常務
◆地産地消で農業を元気に
グリーンガソリンは環境にやさしい新しいガソリンで品質・燃費などは通常のレギュラーガソリンと同等だ。原料となるイネは食用でない品種であり、休耕田を活用して作るから食料とは競合しない。
事業目的のメインは地域の水田農業振興に寄与することだ。
原料イネ生産を担うのは新潟県内8JAの生産農家。
イネからバイオエタノールをつくるプラントはJA全農が建設した。JA全農バイオエタノール製造所といい、昨年末に完成、今春から本格稼働を始めた。
場所は新潟市北区太郎代(新潟東港)にある。装置建設費の半額は国の補助だ。
バイオエタノールは新潟東港対岸の聖篭町にある全農新潟石油基地でガソリンに直接混合し、県内19か所のJA-SSで7月17日から販売を始めた。
7月の販売数量実績は全体で前年同月に比べ約20%増となり、すべり出し好調だ。
この事業は原料づくりから販売まですべてを新潟県内で循環させるという地産地消の取り組みでもある。
このため販売記念キャンペーンでは「このガソリンは地域と環境をはぐくむエネルギーです」「地産地消で地元の農業や経済を元気に」などと消費者に訴えている。
実証事業の目標は原料イネの生産が玄米2250t/年、バイオエタノールの製造量1000kL/年、これを混合したガソリンの製造量3万3000kL/年となっている。
年間3万3000kLという数量は、自動車の1回あたりの平均給油数量を約25Lとすれば132万台分に相当する。また県内JA-SSのガソリン販売数量の約30%に当たる。
一方、エタノール製造では発酵残渣(ざんさ)が出るが、これは飼料と肥料の原料として活用し、またモミ殻は熱源として利用するなど地域エネルギーの循環モデルづくりを担う役割も大きい。
(写真)新潟市太郎代にあるJA全農バイオエタノール製造所の一部
◆単収1トンの農家も
コメどころ新潟は畑作物への転換が難しい地域。水田はやはり水田として利用するのが一番、何か良い方法はないものかとJAが全農に相談した。これがグリーンガソリン誕生の発端となった。
バイオエタノールの原料米を作ってはどうかとの発案により、全農が調査を進めた結果、平成18年度から試験的に原料米の栽培を始めた。
品種は非食用の多収穫米「北陸193号」とした。取り組みJAは20年度に8JAに広がり、生産者数は19年度が46人、20年度は361人と増えた。
平均単収は10a当たり750kgが目標だが、20年度には781kgとなり、中には1t以上の生産農家も何軒か出た。
とはいえ、生産農家の手取りはいろんな補助金をいれても主食用には劣る。
このため生産者には経済的理由よりも、環境保全の取り組みに参加しているという心意気や先祖代々の田んぼを荒廃させたくないという気持ちが強く、これが事業を支える原動力になっている。
製造コストダウンにも限界がある中で事業を続けていくためにはやはり原料米価格に対する政策支援が今後の課題だ。
(写真)グリーンガソリンを給油する萬歳氏(左から2人目)
◆モミ殻も熱源に
JA全農バイオエタノール製造所のプラントは三井造船(株)が建設し、提携先であるスウェーデンのケマトア社の技術を利用している。
酵母をリサイクルして24時間連続発酵できるのが特長だ。
また製造所にはモミ殻ガス化施設を設け、地域で発生するモミ殻を圧縮固形燃料化(ブリケット化)し、エタノール製造施設の熱源として利用。化石燃料はできるだけ使わない仕組みとなっている。
エタノール製造時の副生成物である発酵残渣を乾燥して配合飼料、肥料も作っている。
◆課題は混合率など
農水省の実証事業期間は19年から5年間。農家の安定した収入を確保し、継続して原料米を栽培してもらうことが課題である。
また、販売面なども幅広く考えた社会的仕組みづくりに対する政策支援も必要とされている。
国内におけるバイオエタノールの混合比率は法律で3%以内と規定されているが、すでにブラジルでは25%、アメリカで10%(エタノールの原料はブラジルがサトウキビ、アメリカがトウモロコシ)と高い混合比率で販売されている。
バイオ燃料の普及促進を目指す環境省の有識者会議では、ガソリンにバイオエタノールを10%混ぜた燃料「E10」の導入を加速化させるとする報告書もまとめている。