特集

都市型JAが取り組む環境対応発電

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「小型風力・太陽光 ハイブリッド式発電機」 JA世田谷目黒

 環境保全対策として、全国のJAでもCO2の削減に取り組んでいる。本紙では最新の「小型風力・太陽光 ハイブリッド式発電機」を導入したJA世田谷目黒を訪ね、JAの環境対応などを聞いた。

◆拠点施設の建て替え進む


岡庭理事(右)と石井さん 人と物が集中する首都東京の、拠点ターミナル渋谷から、田園都市線で10分ほどの至近距離に桜新町駅がある。その駅前にJA世田谷目黒の本店が設置されている。現在、同JAの本店は建替え中で、来年1月竣工予定で建設が進められている。
 JA世田谷目黒(木村新平会長)は、平成20年度で正組合員614名、准組合員1930名を擁し、信用事業、共済事業などを柱に、資産管理事業に特化・集約された典型的な都市型農協だ。
 同JAの経済倉庫も最近建替えられた。名称も改め、現在は同JAファーマーズセンターとして稼働している。内部には指導経済部事務所と購買店舗が設置されており、倉庫及び会議室も備えている。
 そのファーマーズセンター正面脇に、1本の見慣れぬポールが立てられている。最新の「小型風力・太陽光 ハイブリッド式発電機」だ。自然エネルギーを有効利用する発電装置だが、導入に至る経緯、環境問題に取り組むJAの姿勢、都市型JAの地域社会との共生、などを同JAに聞いた。

(写真)岡庭理事(右)と石井さん

 

◆自然エネルギー活用発電装置


ファーマーズセンター前のハイブリッド式発電機・街路灯 この「小型風力・太陽光 ハイブリッド式発電機」は、今年1月17日のファーマーズセンター竣工に合わせ導入された。もともとは、本店の建替え時に導入を予定していたが、先に竣工したファーマーズセンターに先行導入したかたちになった。
 同JAでは、環境問題に配慮し、 CO2削減、温暖化防止対策として、竣工なったファーマーズセンターの屋上緑化なども考えたが、地域住民の目にとまるもの、関心を引くもの、として「小型風力・太陽光 ハイブリッド式発電機」を選定したものだ。
 この発電機は、陽射しを電力にかえるソーラーパネルと、航空工学を応用したアルミニウム製の縦型風車が付いており、微風でも的確に風をキャッチし、電力を生み出す優れものだ。強風時では安全装置が働き、回転がストップする。

 (写真)ファーマーズセンター前のハイブリッド式発電機・街路灯

◆年、杉の木4.6本分のCO2を削減


 この発電機は、1基の風力発電機と2枚のソーラーパネルから構成され、風力発電の発電機がポールの先端に取り付けられており、羽と一緒に回転し発電する。ポール内には2個のバッテリーとコントロール部が格納されている。
 通常は、設定により夜間点灯する高輝度LEDライトが街灯・同センターエントランスのダウンライトとして使われているが、想像以上の明るさだという。
 利用ライトの消費電力は、524Wh/日、191.5kWh/年となり、年間64.9kg-CO2の排出削減が可能となる。これは杉の木4.6本分の年間CO2吸収量に相当する。

年、杉の木4.6本分のCO2を削減

 


◆地域社会との共生を大切に


感謝の気持ちを込め、保育園児が描いた野菜の絵 同JA地域振興本部の岡庭正幸理事は「隣に保育園があり、子供たちもこの発電機を興味を持って見てくれている。ファーマーズセンターの前が、消防署の訓練所になっているが、防災の面からも注目してくれているようで、消防署員たちの評判も良い」と話す。
 またJAの環境意識については「JA世田谷目黒は、典型的な都市型JAであり、組合員の都市農地に対する意識は高い。農地保全意識、環境意識の高まりもあり、2005年には、ISO14001(環境基準)の認証を取得した。全国のJAの中でも早い取得だと思う」(岡庭理事・指導経済課石井英尊さん)と語る。
 現在、全国各地のJAで問題となっている農家の後継者不足の悩みは、同JAでは比較的少ない。もともと資産価値の高い農地を、組合員農家が所有しているからであろう。同JAは、資産管理事業に取組んで、今年で25周年になり7月には記念式典を開催した。
 地域社会との共生、ふれあいを同JAは大切にしいる。場所柄、農産物は多品種少量生産となるが、親子野菜収穫体験や、学校給食への世田谷産農産物の提供などを積極的に行っている。
 移植適期には、区民菜園や家庭菜園で使う苗や地元産野菜などの即売会を、ファーマーズセンター前で開催する。先日は、同センター前の「小型風力・太陽光 ハイブリッド式発電機」が設置されているミニ菜園で、収穫されたナスやピーマンなどの野菜、トマトの苗などを提供している桜新町保育園の園児達から、お礼の絵が届けられた。

 (写真)感謝の気持ちを込め、保育園児が描いた野菜の絵

◆省エネ型OA機器と結び防災対策にも


省エネ型の高性能プリンターを活用 環境対策としては、身近な処で、出来ることをやるというスタンスで、節電・節水をはじめ、タンクに溜めた雨水を有効利用するなどしているという。事務所の印刷機も、理想科学工業(株)の省エネ型オルフィスを導入している。地主さんに委託され、JAが運営する駐車場では、エコカーの場合、駐車料金を割り引くことも行っている。
 近い将来、首都直下地震の発生が懸念されているが、防災対応として同JAでは「小型風力・太陽光 ハイブリッド式発電機」を活用することを考えている。発電機のポールにコンセントを設置し、送電などライフラインが断絶しても、緊急電源として活用できる。
 通信機器やラジオへの電源供給はもとより、省エネ型印刷機と繋ぐことで、非常時の印刷物による情報発信も可能で、組合員、地域住民に連絡事項を配布することもできる。
 環境に優しく、防災対応にも有効な「小型風力・太陽光 ハイブリッド式発電機」についての問い合わせは、理想科学工業(株)市場開発部(03-5441-6683)まで。

(写真)省エネ型の高性能プリンターを活用

(2009.09.08)