特集

【第25回JA全国大会特集】 新たな協同の創造と農と共生の時代づくりをめざして

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第25回JA全国大会 JA総研主催分科会・セミナー「農業・農村の課題とJAの役割を探る」

・講演のポイント 「JAは今こそイノベーションの推進を」
・キーワードは「農」と「協同」研究叢書の発刊も準備
今村奈良臣JA総合研究所所長

 「大転換期における新たな協同の創造」をスローガンに掲げた第25回JA全国大会は10月7日(水)、8日(木)の2日間の日程で開かれる。
 初日の会場は横浜市の「パシフィコ横浜」で開会式・記念シンポジウムに続き、午後からは各種の分科会・セミナーが行われる。
 (社)JA総合研究所が「農業・農村の課題とJAの役割を探る」をテーマに開くセミナー(共催:財団法人協同組合経営研究所)では、今村奈良臣所長が「JAは今こそイノベーションの推進を」と題して講演する。ここでは講演内容の予定とともに、同研究所がめざしている役割、機能などを紹介する。

講演のポイント
「JAは今こそイノベーションの推進を」
今村奈良臣JA総合研究所所長


――講演のポイントについて述べてください。
今村奈良臣JA総合研究所所長 講演のテーマとしては、少し長くなるのですが、皆さんに判りやすいようにと考えて、『大転換期における新たな協同の創造』を実現するために「JAはいまこそイノベーション(自己革新)の実現を」というタイトルで話したいと考えています。
 それを一目瞭然という形で示したのが別図になります。JAを構成する主体であるJA役員、職員、さらに組合員、それに青年部や女性部・高齢技能者、あるいは地域に存在する関連企業など、それぞれの主体が、どのような課題に対して、いかにイノベーションに取り組んでいくかということを示しています。 その課題というのは、私なりに整理してみますと、7つの課題があるのではないかと考えています。
 それは下図に示したように、人材にかかわる革新、情報にかかわる革新、技術にかかわる革新、農産物や加工食品などの販売戦略にかかわる革新、さらに組織や経営、それらを総合したJA管内の地域活性化をはかるための革新、という7つの課題です。こうした課題にいかなる視点で、いかなる手法で取り組むべきか、といったようなことを講演で展開してみたいと、いまのところ考えています。
 それから、第2に論じてみたいことは、「計画責任・実行責任・結果責任」ということです。
 JAはこれまで3年ごとに大会を開いて、その都度、組織協議案を提出していますが、それがどのように実行されたか、どのような成果がもたらされたかということはほとんど総括されてこなかったように思います。計画は作ったものの、その成果はどうであったかということが明確にされないまま、次の大会議案が上程されているように思います。それでよいのか。そういう問題提起もしてみたいと思っています。
 第3に、これまでのトップダウン路線ではなく、ボトムアップ路線をしっかり打ち出すべきではないかと考えて、その路線を具体的に提案してみたいと思っています。先に、私の発案で作成された『組合長の所信集』(JA総合研究所刊)を当日、参加者に配布するつもりです。全国764JAのなかから158人の組合長の所信が寄せられました。この中にはすばらしい実践をされ、組合員に信頼され、地域の活性化を推進されているJAの組合長の報告もあります。こういうJAのすばらしい実践に学ぶべきではないか。
 そしてそれを全国に提案もしたいと考えています。その他、まだ話したいことは多々ありますが10月7日に話させてもらうつもりです。

 

「JAはいまこそイノベーション(自己革新)の実現を」




【JA総研主催分科会のスケジュール】
◎テーマ
〈農業・農村の課題とJAの役割を探る〉
◎会場:パシフィコ横浜会議センター・416〜417
◎第一部(13:00〜14:30)【講演】「JA今こそイノベーションの推進を」(JA総研究・今村奈良臣所長)
◎第二部(15:00〜16:30)【講演】「ファーマーズマーケットがJAを救う」(JA総研・山本雅之理事研究員) 【プレゼンテーション】「今こそ『協同』助け合いの大切なとき」(協同組合経営研究所)

 

 


キーワードは「農」と「協同」
研究叢書の発刊も準備

 (社)JA総合研究所の役割と今後の計画などを今村所長に聞いた。

年4回発行の機関誌「JA総研REPORT」―JA総合研究所とは何をする研究所ですか。
 JA総研の掲げているキーワードは「農」と「協同」で、基礎研究部、経営相談部、企画総務部の三部があります。
 基礎研究部では、JA・食料・農業・農村を調査研究のフィールドとするシンクタンクとして調査研究と情報の発信を行っています。
 経営相談部は人事労務に関する各種相談、研修やJAファーマーズマーケットの導入、運営改善などのコンサルティングを行っています。
―JA総研の研究活動や成果を知るにはどういう刊行物などを見れば判りますか。
 これまで「JA総研リポート」(機関誌)(写真・右)を年4回刊行し、また「同特別号」を必要に応じ随時刊行しており、「人事管理REPORT」も出しています。
 また、研究所長の私が「所長の部屋」をWebサイトで毎週書き、また理事長の薄井寛が不定期ですが「世界の窓」を発信しています。
Webサイト
―研究所の中心である「基礎研究部」の具体的研究課題はどういうものですか。
 基礎研究部は4つのチーム編成を行っています(別図参照)。食料研究チーム、地域研究チーム、農業研究チーム、JA研究チームで、この4つのチームが共通に掲げている目標は「JAや地域の実態を念頭に置いたJA・食料・農業・地域に関する調査研究を体系的に実施する」というところに置いています。そういう意味で、各チームの独自性を尊重しつつも、共通目標を実現するよう指導しています。

(写真)年4回発行の機関誌「JA総研REPORT」

基礎研究部のイメージ

(上図)基礎研究部のイメージ

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(上図)経営相談部のイメージ

 

――基礎研究部の研究成果を「JA総研叢書」として農文協から逐次刊行する計画があると聞いているのですが、紹介願えませんか。
 まだ現段階では書名等の最終確定はできていませんが、来年2月の刊行開始を目標に、鋭意執筆するように指導をしています。順不同ですが、仮のタイトルと執筆者を紹介すると次のようになります。
 (1)『地域再生の戦略と展望―農山村からの提案―』明治大学教授・小田切徳美編、JA総合研究所特別研究班「近未来農業・農村戦略研究会報告書」
 (2)『世界の不透明な農産物市場の解明―国際的動向の時間軸・空間軸を踏まえた分析―』JA総合研究所理事長・薄井寛
 (3)『食品循環資源・飼料化のリサイクル・チャネル分析』弘前大学教授・泉谷真実、JA総研研究員・柳京煕
 (4)『新地平を拓く農・商・工連携のトップランナー―国産大豆と豆腐産業―』JA総研研究員・澤千恵
 (5)『食料消費の変動分析―webアンケート調査と構造分析』JA総研研究員・濱田亮治、和泉真理
 (6)『新時代を拓く女性群像―先進女性像の事例集積―』JA総研研究員・小川理恵、同客員研究員・根岸久子
 (7)『地域農業の再編戦略―飯島町営農センター・地区営農組合の実践―』富山大学教授・酒井富夫、JA総研研究員・星勉他
 (8)『新時代の農業経営者育成戦略―先進事例と経営者育成教育の方向―』JA総研研究部長・吉田重雄、同研究員・横田、茂永他
 (9)『アメリカ農業の構造変動分析―2007年農業センサス分析による―』JA総研理事長・薄井寛他
 (10)『日韓農協比較研究』JA総研研究員・柳京煕他。
 (11)『JAによる農業経営者育成戦略―ものづくりから商品づくりへ―』JA総研研究員・小林元、全中・岩村洋他。
 以上が当面企画段階にあり、刊行へ順次確定していく予定です。

 

【JA総研の沿革】
昭和47年 (社)ジェイエイシステム開発センター設立
昭和49年 (社)農協労働問題研究所設立
昭和49年 (社)地域社会計画センター設立
平成18年 3公益法人を統合し「社団法人JA総合研究所」発足(協同組合研究部、経営研究部、地域研究部、企画総務部の4部体制)
平成20年4月 機構改革を実施し、基礎研究部、経営相談部、企画総務部の3部体制)

 

(2009.10.02)