今なぜ水田農業が困っているかといえば、米価下落もあるが機械化貧乏といわれるようにコストが重くのしかかっているからだ。
所得を補償するというよりも、たとえば昨年の原油高対策にみられるようにコストの補償が必要だと思う。所得は物価が違うように地域によって違いがある。一律補てんでは補てんされる地域もあるだろうが、十分に補てんされないところはどうなるのか。その地域の生産実態に合わせてコストを丁寧に支援するほうが現場には理解されやすいと思う。
「所得補償」という観点でお金をばらまいても、それがたとえば自家用車になったりしたら本当に農業のためになるのだろうか。その点、生産コストの支援であれば生産そのものを補てんすることになり農業振興になる。
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担い手に農地利用を集積してきたのに、今回の政策で個人で耕作をしようという、いわゆる貸しはがしが起きるのではないかと言われるが、今のところ地域でそういう動きは聞かない。
なぜなら所得補償されるからといっても、今さら自分で機械をそろえてまで・・・とても採算は合わないと考えるから。1ha程度の農業でも機械を一式そろえれば中古でも1000万円程度はする。
地域には新規就農者もいるが米、麦、大豆は先行投資が大きいので私は若い人にはまず施設園芸を、と勧めてきた。年1作の水田農業はリスクも大きい。園芸作物なら失敗を取り返すこともできる。Uターンは別にして新規就農で土地利用型農業は難しい。
しかし、地域を守り環境を守っていくには多面的機能を持つ水田農業の維持が大切になる。
農村では人口が減って鳥獣被害が非常に増え、それが耕作放棄地にもつながる。解消していくことは大事だが、地域によって耕作放棄の原因も違っているので政策も違うと考える。農業の多面的機能をどれだけ考えるかも課題だ。下流の都市生活者の水などライフラインも担っており、一次産業は経済論理だけで考えられないと思う。
今、インドの凶作が伝えられている。インドへ米の食料援助をしてはどうか。そうすれば食糧米や水田の大切さ、国産自給力に理解が広まり増産にもつながる。政権が代わったのだからそれぐらい発想を変えてはどうだろうか。