平成19年からの農政改革とは、農業従事者の減少・高齢化など農業生産構造のぜい弱化が進行するなかで、意欲と経営能力のある大規模農家や法人組織といった担い手を育成することを目的に諸対策が講じられてきたと記憶している。
私たちも3年間の集落の話し合いを経て18年に集落営農組織を結成し「地域農業のあるべき姿」をイメージしながら水稲、大豆、大麦を作付けし設備投資をしてきた。一方では集落の未加入農家へ「将来農業の展望と担い手の役割」についてを説明、現在、57戸のうち50戸が参加し51haの農地を集積できた。
21年度からは、より資金繰りの円滑化ができないかと野菜栽培を取り入れた。価格が暴落することが懸念される状況だったが「実践することが大切」と言う意見もあり、また、産地づくり交付金で10a4万円と、とも補償からの助成も確保されたのでサトイモ栽培に取り組んだ。22年度からはピーマン栽培も加えようと考えていたところだった。生産調整面積も8月に自ら設定、作付け作物も決めるなど経営計画を立ててきた。
しかし、戸別所得補償制度と関連事業はこれまでめざしてきた考え方とは相反する方針転換ではないかと感じる部分がいくつもあり、今のところ「将来の農業経営のあるべき姿」が見えない。
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新聞報道で知る限りだが、全国一律の補償単価では経営意欲が衰えると思うし、小規模農家と大規模農家との生産費には相違があり公平感に欠ける。
また、われわれは複合経営化に取組んでおり、そうした担い手を総合的に支援する必要があると思うが、なぜ米だけの補償制度なのか。生産調整には地域での話し合いによって担い手が取り組むようになっており、転作関係の機械施設に設備投資し償還している最中だが、転作作物への助成額が減るのでは経営が不安になる。地域特産物への交付単価は低すぎるなども問題があり、やはり単価の設定については地域水田協議会に任せるべきではないか。といっても交付金が生産者への直接支払いとなると地域農業をマネジメントする担当者不在と同じことになり、ブロックローテーションの維持など地域水田協議会の機能がなくなってしまうのではないかと心配する。
もっと地方と十分な事前協議が必要で、これは地方分権の主旨にも反するのではないかと思う。
一方で食農教育など食料生産の重要性について理解を深める根本的な政策が置き去りにされている感じだ。
(写真はイメージ)