桜の満開が話題になり、桜前線が北上し始めた。稲の育苗も始まり、田植えはすぐそこである。雑草も発芽の準備が完了し、水田に水が入ると動き出す。全国に広まってSU抵抗性雑草が虎視眈々と出番を待っている。クログワイ、オモダカなど難防除多年生雑草も各地で萌芽の準備をしている。越年生の冬雑草で覆われている畦畔の草の下には水田侵入を狙う雑草が出番を窺っている。水稲栽培が始まると同時に、これら多くの雑草が一斉に生育を始める。
◆一発処理剤のほとんどが3種〜4種成分の混合剤
さて、現在水田では多種の雑草に対応するために高い性能を持った一発処理剤が使用されている。一発処理剤には高葉齢のノビエに効く、SU抵抗性雑草に効く、さらに、難防除雑草にも効くことが求められ、一発処理剤の農薬登録票を見ると一年生雑草、マツバイ、ホタルイ、ミズガヤツリ、ウリカワ、ヒルムシロ、セリ、オモダカ、クログワイ、コウキヤガラ、シズイ、藻類による表層剥離など多くの雑草が適用草種になっている。
その結果、一発処理剤の多くは混合剤である。ホタルイのようにSU剤に効果を依存していた雑草のSU抵抗性バイオタイプの防除には専用の有効成分が必要で、オモダカ、クログワイなど多年生雑草の防除にはSU成分を外すわけにはゆかず、さらにもう1成分必要なこともある。実際に使用されている一発処理剤のほとんどは有効成分が3種や4種の混合剤である。
◆特別栽培米や減農薬栽培米生産への対応
いっぽう、世の中では無農薬や低農薬を求める声が大きく、生産者にも環境保全や食品の安全・安心を考慮した農薬の低減利用を求める声は少なくない。また、農林水産省のガイドラインでは特別栽培米や減農薬栽培米の生産には農薬の使用回数の慣行の5割以下にすることが示された。農薬の使用回数は有効成分の延べ使用回数になることから、特別栽培や減農薬栽培には有効成分数の少ない農薬が求められる。そんな中で、最近、水稲除草剤においては単一で多くの雑草を防除できる有効成分が登場し、開発が進んでいる。
SU剤は元々その代表格で、ノビエ以外の雑草に高い効果があることから、一発処理剤の主成分として開発されてきた。アミノ酸の生合成を担っているアセト乳酸合成酵素(ALS・注)を阻害する作用を持ち、低成分量で多年生雑草にも高い効果を持ち、安全性も高い成分として注目される。
(注)ALS ロイシン、バリン、イソロイシンのアミノ酸の経路に関与して、アミノ酸ができなくなることで効果を発現。