地域とのきずなを深めて
信頼を獲得
共済事業はJA事業の中核
◆「きずな」を深める活動をJAの基礎に
JAあいち中央は5JAが合併し平成8年に誕生した。
管内の特産物はいちじく、にんじん、たまねぎなど。他の大産地に引けをとらず関東に安定供給するなど、市場でその品質は高い評価を受けている。部会活動も盛んで、にんじんでは「へきなん美人」ブランドを確立、生産者は切磋琢磨して品質向上に努めている。
しかし、農産物価格の低迷による厳しい経済環境はこの地域でも同様だ。ただ、「苦しいなかでもJA共済の必要性を理解して加入していただいている」といい、「これはJAへの信頼があればこそで、職員の努力など積み重ねが大事だと実感しています」と鳥居組合長は話す。
共済事業担当の中川廣和常務は「組合員が将来にわたって安心して暮らしていけるための事業が共済事業。安心感の提供がわれわれの役割」と強調する。
こうした地域に密着し組合員のニーズに応える事業姿勢は共済のみならず同JAの基本でもある。
それを象徴するのがJAまつりや支店まつりだ。
JAまつりは毎年管内の5市で開催。部会が農産物を売り出し、地元産農産物をアピールする営農モールが地域住民に評判だという。
一方、合併以来、75あった支店の再編整備を進め現在は30支店となったが、その過程で支店を地域の拠点とし、地域密着型事業体制づくりに力を入れることとした。
その一環として21年度から全支店で実施したのが支店まつりである。
まつりの運営委員は組合員が中心となり、支店それぞれでまつりの内容を検討、組合員による手づくり感あふれるイベントになったという。
「組合員、地域とのきずなを深めていこうということです。それが事業にも反映されると思いますが、共済事業はその最たるものです」と石川克則代表理事専務は話す。
(写真)JAあいち中央本店
◆チームワークとサポート機能を重視
共済事業の体制は21年度から、これまでの専任LA体制から複合LA体制に切り替えた。共済だけでなく信用事業も担当し、これにともないLA数は67人から115人として各支店に配属した。
同時に30支店のうち13支店をブロック店とし、そこに12人の渉外担当課長を配置(1名は2〜3支店を担当)。また、本店の金融共済普及部には渉外担当課長をサポートする6人の地区担当課長を置いた。
地区担当課長と渉外担当課長は、事業推進進度などを点検し課題を整理、渉外担当課長が担当するLAに同行推進するなどして、共済業務の指導にあたる。
また、支店LAの中から渉外リーダーを選び、チームの実績を管理するとともに、進度が遅れているLAのフォローアップをすることにした。「チーム全体を考える立場、という意識づけ」も人材育成のうえで大切にしている。
また、LAとして配属が決まった職員は、まずは1年間、配属支店で金融・共済の窓口業務に携わる。窓口で利用者と接しながら、本店で教育研修を受ける。そして2年目からLAとして現場へ。こうした方式によって、訪問先では「支店の窓口にいた職員さんですね」と言われるなど、新人LAでも組合員から信頼が得られるという。
◆スキルアップはボトムアップで 仲間で知恵を出す
LAそれぞれが実績とサービスを向上させるための会議も重視していている。
ただし、江場正秋金融共済普及部長は「LA自ら出席したいと思うような会議が理想形」との考えから「実績数字の報告は求めません。優良事例や失敗事例の改善例など情報の共有化を大前提にしています」と話す。
その会議は各ブロックから事例報告を行ったあと、参加者でディスカッションするという形式だ。
「成功事例を現場がまねをすることがいちばん効果的。ある事例を私たちが聞き、これを参考に事業推進するように、と指導するトップダウン方式はやめました。同じ仲間のなかでの共有化が大切だと考えています」。
◆倶楽部員との連携も
普及推進はLAが中心となる「渉外推進」のほかに、本店職員が担う「地区担当倶楽部推進」と支店職員が担う「支店倶楽部推進」で実践している。
地区担当倶楽部員の目標は一人あたり生命・建物更生共済新契約1500万円以上(うち純増1000万円以上)と医療系共済1件以上。そのほか3件以上の情報提供も目標だ。(支店倶楽部員では生命・建更は2500万円以上、純増目標は同、情報提供は4件)。
こうした一般職員の目標を差し引いたうえで本店がブロックごとに地域性を考慮してLA目標を設定。それをもとに地区担当課長が支店別、LA別の目標を設定する。21年度の複合LAとしての目標は平均で約10億円(全国評価方式で約11億円)だったという。
LAが組合員ニーズに応えて実績を上げるために大切にしているのが倶楽部員からの情報提供だ。情報提供カードを配布し、何らからの情報提供があると、ブロック担当の渉外担当課長から支店長、本部へと集約、把握したうえで再び現場にフィードバックして、支店のLAの推進に役立てる。「どんな情報であっても活用します。要は新規に訪問する場合など、LAが訪問しやすい環境をつくることが狙いです」と江場部長。提供された情報のうち5〜6割程度が契約に結びつくという。
同JAでは次世代対策としてこども共済の推進にも力を入れているが、この分野ではとくに組合員や地域住民家庭での出産など情報が大事になるという。
一方でJAからの情報発信も重視。たとえばこども共済では保障内容について簡略に説明したページとさらに詳細に解説したページまで6ページ建てのパンフレットを作成し、支店の窓口やATMに置いている。
「JA共済を知らない地域住民も多いわけですが、こういう詳しいパンフレットによって説明が聞きたいという若い夫婦からの問い合わせもあります」(江場部長)という。同時に新規契約家庭には子ども向けの知育パズルを景品としてプレゼントするなどの独自の工夫もしている。
◆推進ではなく「情報提供」の姿勢で3Q訪問を
自動車共済や自賠責共済は支店窓口のスマイルサポーターが契約推進の中心となっている。
石川博巳共済部長によると、スマイルサポーターを対象に年6回、外部講師による研修を実施しているという。
「知識を持っていてもどう説明できるかが大切。研修によってスムーズに説明ができるようになってきました」。
自動車共済でも情報提供による職員間の連携を重視しており、21年度では795件の情報をもとに626件の契約獲得につなげた。
こうした情報提供のもとになるのが3Q訪問活動だ。
同JAでは約10年前から年に1回、全職員で組合員を訪問するふれあい活動に取り組んできたこともあって、3Q訪問活動への取り組みもスムーズだった。
目標はLAが年300戸以上、倶楽部員が20戸以上で、5〜6月を中心に実践している。
江場部長は3Q訪問活動について「推進ではなく組合員への情報提供との考えで進めたい。JA職員が来てくれたら何JA職員が来てくれたら何JAの基本。より多くの人とコミュニケーションをしサービスを提供していく、というサイクルをこれからも発展させていきたい」と強調する。
◆高い意識を持つ職員とともに
こうした活動のうえで今後の目標のひとつとして鳥居組合長が掲げるのは、自動車共済について。推進ももちろんだが、スピーディな事故処理対応や丁寧な経過報告など、もっとグレードを上げれば喜ばれるはずと考えている。その一環として平日には相談等に来られない組合員、利用者を対象に本店に休日サービスセンターを開設した。
「どの分野でもいい。これは日本一だと誇れるような姿をめざしたい。職員とともにそうした高い意識をもってJA運営をしていきます」と鳥居組合長は話している。
(写真・左から)鳥居博幸代表理事組合長・石川克則代表理事専務・中川廣和常務
JAの概要(平成21年度末)
●地域の特徴:農業・工業・商業混在の都市近郊地帯
●組合員戸数(正+准):3万5202戸(正 13078戸 准2万2124戸)
●職員数:1126名(うち正職員693名)
●推進形態:倶楽部・兼任渉外推進
●共済事業実績:○保有契約高(長期共済)16万2129件/1兆8554億円
○新契約高(長期共済) 1万3058件/ 1527億円(生命共済6912件/814億円、建物更生共済4383件/ 713億円、医療系2033件)
○年金(年金額)10億2755万円
○自動車共済新契約4万8306件/21億3278万円
○自賠責共済新契約2万2006台/ 4億3623万円
●信用事業:貯金6533億円、貸付金1449億円
●購買事業供給高:118億円
●販売事業 販売高:86億円
●主な農産物:米、イチジク、梨、ニンジン、タマネギ