全農グループの総合力を発揮し
販売力を強化
生産と消費の「現場を基点」に考え実践する
◆取引先と生産者のニーズに応える生産体系を提案
――全農「3か年計画」では、「国産農畜産物の販売力強化」を「全事業を通じた共通の事業目標」として掲げています。この目標を達成するために営農販売企画部はどういう役割を果たすのでしょうか。
大西 「国産農畜産物の販売力」を強化する、とりわけ耕種部門の販売力強化がわが部の使命です。
――そのために、大消費地販売推進部と営農総合対策部を統合して営農販売企画部になったわけですが、部内機構と役割分担をご説明いただけますか。
大西 全農グループの会社と一緒に常に取引先と接し、そこで発生するニーズを的確に把握してくるのが「総合販売グループ」です。
そのニーズに応え、生産者の手取りが確保できるような「総合生産体系」を提案し実証するのが「事業企画グループ」と「営農・技術センター」です。
さらにそれを現場のJAに提案し実行をサポートするのが「TAC推進グループ」です。TAC推進グループは、こちらからの提案もありますが、担い手など生産者からのいろいろな要望を聞く受け皿として機能することで地域農業、JAの営農経済事業を元気にしていく役割もあります。
それ以外に、全農のお店、JAタウンなど、直接、消費者に接する事業、輸出の拡大、バイオエタノールなど新エネルギーの開発など新しい事業にも取り組んでいます。
――取引先ニーズをしっかり捉え、それが実現でき生産者の手取りが確保できる体系をつくり、産地に提案して実践していくということですね。
大西 野菜をみると家庭用需要は4割で加工や業務用需要が6割というように、マーケットは大きく変化しています。一方で生産現場では生産者が高齢化し、生産資材コスト削減も限界がありますので、手取りが確保できる販売力の強化が求められています。
そのためには、取引先のニーズを全農グループとしてしっかり掴み、その期待に応えられる作物別の商品づくりを、新しい技術も含めて複数の技術を組み合わせ、生産者の手取りも確保できるような体系にして産地に提案していくことです。私たちはそれを「作物別総合生産体系」と呼んでいます。
――全農は生産者と消費者の「懸け橋」機能といっていますが、それを実践する部署ということですね。
大西 「懸け橋」ではありますが、私たちは現場で実証する、現場でニーズをつかみ、現場に提案し、現場で技術を確認するなど、生産と消費の「現場」を基点に考え、行動していこうと考えています。
輸入品が多くを占めている加工用野菜の分野は自給率を上げるためにも重要な分野ですが、市場流通とは異なり同じ品質のものを一定量つくり、コストも下げなければいけません。それでも成り立つためには、価格を含めた契約や品種から農業機械まで含めた総合的で確実に儲けられるという提案をしなければいけませんし、それを受けてくれる取引先を常に準備しておかなければいけません。
◆技術と販売を一体化し事業として展開する
――そうした生産体系を提案していくうえで、営農・技術センターが大きな役割を果たすわけですね。
大西 センターでは、農業研究機構(農研機構)や大学、企業などとの共同研究で、系統独自の新品種や新技術の開発に取り組みます。そしてそれらの新品種や新技術はもちろん従来からの品種とか技術も含めて組合わせて作物別の総合生産体系を策定して、展示ほ場などでその実用性を実証・評価し改善していきます。その成果に基づいた総合生産体系と販売企画をセットにして、生産者と実需者に提案していきます。
そういう意味でも、人も耕地もフル活用できるFOEAS(新地下水位制御システム)とか、新技術を広めていきたいと思います。
――農研機構との提携は新しい技術などで大きな成果をあげているわけですね。
大西 農研機構は、常に現実的な課題を受け止めてそれに対応する技術を提供してくれています。農研機構自身はいろいろな技術を持っていますがなかなか現場に提案できないという悩みがあります。鉄コーティング水稲湛水直播栽培のように私たちと提携することで、現場に提案し、現場で技術を改善し成果を上げた事例も出てきています。トマトの一段密植栽培は全農が開発した技術ですが、マーケットに評価される品種の育成などで協力をしていただき技術の確立をすすめています。
こうした技術の現場と私たちが持っているマーケティングの現場を近づけていくことが重要だと考えています。
――技術と販売の一体化ですね。
大西 従来、技術は技術、販売は販売と分かれていたのをつなげて総合生産販売体系としてパッケージ化して提案し、事業として展開していくということです。
◆JAの総合力を発揮し生産と販売をつなげるTAC
――そうした技術とか総合生産体系を生産者に提案し、地域農業を活性化していくという意味では、TACの役割がますます重要になってきますね。
大西 農業生産には、農地、労働力、資材、技術、販売先が必要ですが、「生産する」ことが実際に行われるには、生産者の意欲がまずなければできません。そういう要素がうまくマッチしたときに生産できるわけです。重要なことは、生産者の意欲や悩みを確実にTACが捉えて、確実にその声に応えていくことです。
例えば業務用野菜を作るためには、取引先を決め、どれだけの量をいくらで買ってもらうのかを決める。そしてそれにそって儲かるつくり方をしなければならない。そのために適した品種の選択、農業機械のコストを引き下げるレンタル、土壌診断に基づく最適施肥などを組み合わせ手取りがしっかり確保できる体系の提案と自らの経営にその提案をいかそうとする生産者の意欲のマッチングが必要です。
場合によっては融資の必要もあるかもしれません。そういう意味ではJAの総合力を発揮してもらう仕組みとしてもTACの活動を考えています。
それを最後にサポートするものとして、全農グループが国産農畜産物の販売をしっかり行っていきたいと考えています。
――TACの現状はどうなっていますか。
大西 TAC導入JA数は、県本部で417、県連で29の合計446JAです。導入率でみると県本部では83%、県連で13%、平均で62%。TACの人数は県本部で1806人、県連で235人、合わせて2041人です。前年が合計で1764人でしたので、前年対比116%となっています。面談件数は年間で約42万件です。前年が約16万件ですから、3倍弱の伸びです。しかし、まだJAによって取り組みに濃淡があるので、JAの経営層に意義をご理解いただき組織的にTACを支援する体制を強化していきたいと考えています。
積極的にTACに取り組まれているJAの経営層の方からお話をお聞きしますと、農家の情報が常に入ってくるので、以前に比べるとはるかに組合員のところに行きやすくなったし、話ができるようになったといわれます。
――ますますTACの役割が重要になりますね。
大西 生産と販売をマッチングさせる取り組みが昨年も増えてきましたが、今年はさらに増やし、その事例をJAグループの中で共有化していきたいと思います。
――販売会社があって、さらに県本部は県本部として独自に販売事業をやっているなど、全農の販売事業は分かりにくい部分がありますが…
大西 私たちの仕事の中心は直販事業だと考えています。私たちがセンサーとなり受け皿となり、産地を含めてコーディネートすることで、相乗作用がでてくると思いますし、取引先、JA・生産者にとって機能の重複はないと思います。
むしろそういう機能が取引先からも生産者からも求められているといえます。それに応える総合力を私たちが発揮できるよう3か年計画のスローガンである「創造・改革・実践」をすすめていきたいと思います。