斑点米カメムシ類とは、籾を吸汁することにより玄米を着色させるカメムシ類の総称であり、玄米の品質検査における着色粒混入の許容限度は極めて低い。99年以降、全国的に斑点米カメムシ類が問題化し、02年以降宮城県においても被害は多発傾向にある(第1図)。特に被害の多かった03年と05年は、それぞれ6%、8%を超える高い落等率を示し、農家の経済的被害も深刻であった。
◆宮城で重要視されるアカスジカスミカメ
斑点米カメムシ類の種類は、地域により異なり全国では50種を超えるが、宮城県ではアカスジカスミカメ(写真・右)が最も重要視されている。アカスジカスミカメは、近年、全国的にも発生が増加しているカメムシ種であり、その発生動向が注目されている。アカスジカスミカメは、イタリアンライグラスなどのイネ科植物を好み、牧草地や雑草地、畦畔等で繁殖し、水田に侵入するのは水稲の出穂以降である。従って、防除対策として、水稲の出穂前15〜10日前の発生源対策と水田内の薬剤防除が行われている。
(写真)最も重要視されているアカスジカスミカメ
◆牧草地の刈り取りと薬剤防除を組合わせ
はじめに発生源対策について述べると、アカスジカスミカメは7月にイタリアンライグラス主体の牧草地において高密度になっていることが多い。アカスジカスミカメは移動分散能力の高い害虫であるが、幼虫の時期は飛翔することができず、7月中〜下旬が幼虫の発生盛期である。この時期に牧草地の刈り取りを行うと密度抑制の効果が高く、水田内の薬剤防除と組み合わせることで斑点米被害を低く抑えることができる(第2図)。また、この時期に刈り取りを実施していない場合、近接した水田では100m離れたところまで被害が及ぶことから、広域的な発生源対策が重要である。
水田内の薬剤防除の散布時期と回数については、穂揃期とその7〜10日後の2回が基本である。しかし生産現場においては、環境保全型農業の推進やコスト低減などのため、1回散布のところが多い。水田内におけるアカスジカスミカメの発生は穂揃期にピークとなり、その後は低密度で推移することが多い。しかし、穂揃期から登熟中期まで長期間にわたる場合もあることから、2回散布の基本防除を行う必要がある。
アカスジカスミカメは、イネ科植物の小穂内に産卵するが、水田雑草でカヤツリグサ科のイヌホタルイやシズイに対しても産卵する。これらの水田雑草はアカスジカスミカメの被害を助長することから、水田雑草の防除も斑点米被害を抑制する上で重要である。
◆県内すべてのJAが環境保全米づくりへ
斑点米カメムシ類による被害が多発傾向にある一方で、米の販売における産地間競争は激化しており、安全で安心できるといった消費者ニーズを重視した米の産地形成が重要である。JAグループ宮城では「環境保全米づくり全県運動」を販売戦略として推進し、県内全てのJAが取り組んでいる。「環境保全米」とは、JAS有機栽培米と農林水産省「特別栽培農産物に関わる表示ガイドライン」に準拠し、各JAが示す生産基準によって栽培された米穀であり、斑点米カメムシ類に対する薬剤防除は1回に制限されていることが多い。こうした生産基準の中で、斑点米カメムシ類の被害を抑えるには、水田周辺の発生源対策と水田雑草の防除などの耕種的防除を重視した栽培管理を行う必要がある。
◆斑点米カメムシ類も水田の生態系考慮し
さらに、産地に求められる社会的ニーズとして生物多様性保全への関心も高まっており、農産物の付加価値化に結びついている例もある。
農業は多くの生き物にとって貴重な生息環境を提供する場として位置づけられており、07年に農林水産省による生物多様性戦略が策定されたことから、今後は生物多様性保全を推進する施策の展開が期待される。
米産地においても生物多様性保全を重視した取り組みが求められ、斑点米カメムシ類に対する問題も、水田内の生態系管理を考慮した解決策が重要になってくると思われる。