売れ行きには不透明感も
農水省のデータをもとに、16年産から21年産までの米の需給調整状況を示したのが表1だ。
作況指数をみると不作の年でも実生産量は生産目標数量を上回って推移。需要実績と比較でも16年産を除き過剰生産となっている。計画生産に参加しない過剰作付けがあるからだが、20年産からは減少傾向にあり21年産では4万9000ha程度と推計されている。
22年産では計画生産へのメリットとして全国一律の交付金が支払われる米戸別所得補償モデル事業が実施されるが「新対策で生産目標数量にいかに近づくか」(農水省)がこの秋以降の需給状況を左右することになる。
情報交換会では、モデル対策の加入申請状況について、100戸以上の非参加農家があった北海道西部のある地域で9割が申請した例や、和歌山県の小規模農家地帯で8割が参加意向を示しているなどの現地情報、また、秋田県大潟村では生産者の85%が加入申請しているなどが報告された。「重点的に推進している地域があり需給調整にポジティブな動きが出てきている」と農水省は期待を寄せる。
一方、米価はどうか。
相対取引価格をもとにした21年産米の4月の全銘柄平均は60kg1万4383円。3月は1万4508kgでほぼ横ばいとなっており「3月から4月にかけて極端な下がり方はない」(食糧部)。が、昨年4月の平均価格は1万5269円でそれとくらべると886円下がっている(94%)。銘柄別にみると1000円以上下落しているものもある(表2)。
一方、消費の低迷が指摘され在庫増加が懸念されているが、農水省のまとめでは今年1月から販売段階の月末在庫は前年より少なく、5月末では前年比6万1000トン減の25万6000トンとなっている。
「在庫はそれほど増えていない」(農水省)と指摘した。
ただ、出荷段階の在庫は4月末で前年比14万7000トン増の196万5000トン、5月末で2万4000トン増の165万2000トンとなっている(表3)。
情報交換会では卸業界から在庫状況のデータについて「違和感がある」との意見もあったほか、出荷者側からは4月以降は出荷のペースが上がってきているとの報告もあった。 おもな内容を以下にまとめた。
情報交換会の報告
販売環境、厳しく 特売でも鈍い動き
【JA全農・川崎史郎米穀部長】
21年産は2月から契約が前年を上回るような状況。決済ベースでも4月以降から前年を上回ってきた。やっと動き出したという感じだ。とくに5月下旬から6月上旬に契約が積み上がってきている。コシヒカリ系の契約が多く積み上がっており少し一息ついているが、ここにきて業界は22年産の状況をふまながら仕入れ・販売していこうと動きが鈍ってきているようだ。5月時点にくらべれば動きがあるが、まだ21年産全体のめどがつくまでには至っていない。
【神明・吉川和男専務】
4月以降、販売は回復し、前年比数%増で推移。在庫は5月末で前月比8割程度と解消、通常在庫に近づいてきた。価格は確かに厳しく前年比キロ10円程度下がっているが、下落した、という感じではない。
【木徳神糧・山本幸雄専務】
在庫速報値については、本当にこんなに少ないのかという違和感もあるが、懸念したよりも少ないのが実態と受け止める。
売れ行きは4月までで前年比97・4%だったが5月は118・6%、6月も105%と累計で前年並みとなってきた。このままの売れ行きなら大きな狂いはないだろうが作柄など様子をみなければなんとも言えない。
【ヤマタネ・小堀清食品本部副本部長】
在庫速報値については、多少重いという感じで受け止める。
5月は連休明けに苦戦し前年比▼6%。6月も若干苦戦している。この流れが端境期まで続くと見ている。
量販店も6月以降苦戦し始めた。特売を提案しても荷動きにはつながってこない。一方、米穀店は在庫整理が一巡したか、若干上向きつつある。事業所給食は相変わらず不調で、総体として若干の減少傾向だ。この時期になると取引先の必要数量は明確になり、若干の契約上積みがあった。ただ9割程度の手当にとどまる。
【イトーヨーカ堂・大木宏氏(加工食品担当)】
販売は数量ベースで微増だが平均単価は下がっている。理由は一回の特売数量が減少し、特売の回数を増やしているため。それが結果的に平均単価の低下につながっている。この傾向はしばらく続くと予想している。
【サークルKサンクス・渡辺秀加工食品部長】
CVSの店頭価格に前年比での値下げはない。販売動向では市販用精米は前年比90%、おにぎり等の業務用は同90%前後。いずれも苦戦しているが、3月から毎月2ポイントづつの改善傾向だ。
在庫状況だが、取引先は通常、翌年2月ごろに新米へ100%切り換え完了するが今年度は4月にずれ込んだ。
その影響で21年産のCVSの仕入れ契約数量が前年比で8割代に落ち込みそれが中間卸の在庫増になったのではないかと想定している。22年産は20年産程度の使用量を見込んでいる。
【亀太商店・市野澤利明副代表】
気温が上がってくると米の消費が落ちてくことを肌で感じている。少しづつ買い控えをする時期になってきた。取引先のうち業務用筋は2極化しているようだ。家族経営の飲食店は非常に厳しく今年になって倒産もあった。しかし、一方で新しく取引が始まった例もあるなど、入れ替えもある。この時期になると米専門店は7月下旬には早場米も入ってくることをふまえて、少しづつ在庫を消化しながら22年産に向けて転換していくが、売れ行きが難しいなか取引先には新米の入荷見込みなどアナウンスしながら乗り切っていこうと考えている。こだわり米などの提案だ。