特集

AVH―301

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【AVH―301】全国約6000のほ場で高い効果を確認―抵抗性雑草に「トドメの一撃を」―

・特栽米にも対応でき期待される新剤
・今年の異常な天候でも大きな効果を発揮
・さらに最適な使用方法を検討
・後期剤処理が不要に
・現地ルポ―JAにいがた南蒲

 全国的に大問題となっているSU(スルホニルウレア)抵抗性雑草に「トドメの一撃」をと全農がバイエル社・北興化学と共同開発したのが「AVH―301」(有効成分:テフリルトリオン)だ。今年2月に農薬登録を取得、全農とメーカー合わせて約6000ほ場で試験が実施され、その内容がほぼまとまった。そこで、全国における試験結果の概要を全農肥料農薬部にまとめていただくとともに、18ほ場で試験を実施した米どころ新潟のJAにいがた南蒲に取材した。

除草剤のクレームがなくなった

次年度の暦・注文書採用も
〜AVH―301剤の試験結果〜


JA全農肥料農薬部


toku1010080803.jpg◆特栽米にも対応でき期待される新剤

 

 全農がバイエルクロップサイエンス、北興化学工業と共同開発した新規水稲除草剤AVH―301(有効成分名:テフリルトリオン)は本年2月に登録を取得し、エーワン剤(販売は北興化学)、ボデーガード剤(同 バイエル クロップサイエンス、北海道では北海三共、10月1日からは「ホクサン」)、ゲットスター剤(同 日産化学工業)の販売を開始した。
 AVH剤は、全国的に問題となっているSU抵抗性雑草に卓効を示すことのほか成分数が少なく特別栽培米に対応できる剤であり、現場の期待も高い。本年は、本格普及に向けた知名度向上と効果確認の年と位置づけ、各地で推進大会や研修会を実施するとともに、精力的に展示ほ活動を展開した。全国で、全農県本部や経済連の展示ほ場試験とメーカーが設置する展示圃あわせて5784カ所で試験が計画された。
 この箇所数は、これまでの剤の試験数と比較すると桁違いであり、AVH剤に対する現場の期待の高さがわかるというものである。

 


◆今年の異常な天候でも大きな効果を発揮

 

試験結果 ところが、本年は春先の低温の影響で、田植の遅延、苗質の低下などがみられたこと、さらに6月以降の高温により雑草の発生が長期にわたるなど、水稲除草剤にとっては効果・薬害面で厳しい条件が重なった。また、AVH剤に対する期待が大きかったため、雑草多発田や漏水田など厳しい条件での試験事例も多く見られた。しかしながら、試験結果についてはとりまとめ中であるが、半数近くの試験では、これまで使用していた薬剤より優れている、との評価が得られている(図参照)。
 試験結果について詳しく見てみると、効果面では非常に良好な結果が得られており、特にノビエやSU抵抗性の一年生広葉雑草(アゼナ、コナギ等)に対して効果が高かった。また、最近問題となっているイボクサ等の特殊雑草への効果も評価された。
 一部の試験ほ場では効果が不十分な事例もみられたが、かけ流しの水田や田面露出部分での残草など水管理に問題があるケースや、雑草の葉令限界を超えてからの散布などが効果不足の要因として考えられた。
ホタルイ(白化) また本年は春先の低温と6月以降の高温により、特にホタルイの発生期間が例年よりも長期化したといわれており、このことが残効不足につながったとも考えている。

(写真)ホタルイ(白化)

 


◆さらに最適な使用方法を検討


 次年度は、より安定した効果を得るために、水管理の徹底と最適な処理時期について指導し、普及したいと考えている。初期剤との体系で遅めに散布することにより、多年生雑草への効果が安定する傾向もあり、雑草の発生期間が長期化した場合にも対応できることから、雑草多発ほ場では体系処理をすすめることも検討したい。
 また、本年は稲の一部が白化する事例が報告された。フロアブルが付着した場合、その後に伸展してくる新葉1〜2枚に白化症状が認められ、ごくまれに粒剤やジャンボ剤でも白化症状が見られた。しかしながら、その後は正常葉が進展し、生育に影響を及ぼすことはほとんどなかった。

 


◆後期剤処理が不要に


 本年、秋田県や新潟県などの一部JAでは、早くも注文書等に採用され、農家に使用してもらった。あるJAの営農指導員からは「毎年農家からの除草剤へのクレームがあがってくるが、今年はほとんどなかった」との意見が聞かれた。また、「例年ホタルイ、コナギ等がほ場一面に残草しており、初期剤+一発剤の体系処理でも後期剤の散布が欠かせなかったが、今年はエーワン剤の一発処理で水口部分の残草だけであった」との農家の声もあがっている。
 一部県ではすでに次年度の暦・注文書への採用が決定しつつある。今後、全国のJAでも採用される見込みであり、多くのほ場で使用されることが期待されている。

 


現地ルポ  JAにいがた南蒲


JAにいがた南蒲ノビエ、ホタルイ、クログワイに高い効果示す

 

◆除草剤を減らし「5割減減栽培」を拡大


 JAにいがた南蒲は、平成13年に三条市・長岡市・見附市・加茂市・田上町の5市町にまたがる8JAが合併して誕生した。管内の水稲作付面積は約8900ha、取扱数量は約3万8000tという米の産地だ。
オモダカ(白化) 主力の品種はコシヒカリBL種だが、JAでは安全・安心な米づくりを推進していて、管内のほぼ全域で「3割減減栽培が実施されている」がそれを「さらに一歩進めて5割減減米の普及拡大をしたい」と考えているのだと同JA営農経済部の五十嵐大光部長はいう。
 そのためには、現在、3〜4剤が主流の本田除草剤の「使用薬剤を減らすことがもっとも有効」ではないかと考えてきた。そこで2剤で有効な効果が期待できるAVH―301剤のほ場試験を行い、効果があればこれを普及していきたいとほ場試験を実施した。
 もちろん、SU抵抗性雑草のホタルイやアゼナ、発生がだらだらと続くクログワイなどに困っていることも事実だが、「いままで剤を変えることで対応してきた経過もあって、新剤に対する期待が大きい」という側面もあったという。

(写真)オモダカ(白化)

 

◆初期剤との体系処理で有効など高い評価


 ほ場試験にあたっては、米穀課とTAC担当者が、各地域の比較的経営面積の大きい担い手農家を中心に試験を依頼した。
 ほ場の選択は農家に任せたが、試験したほ場の面積は10a〜110a区画で、エーワン剤(北興化学)使用12ほ場、ゲットスター剤(日産化学)6ほ場で実施。この他にもボデーガード剤(バイエル)についても数点試験を実施した。
ミズガヤツリ(白化) 剤型も粒剤・フロアブル・ジャンボ(ゲットスターでは無し)の3種で試験をしたが、剤型による効果の差は「まったく感じなかった」という。
 ほ場試験の結果だが、総括的には「全ての草に対して効果を認めたが、ノビエを中心に効果があり、特にホタルイ・クログワイに効果が高かった」と五十嵐部長。
 農家からは「アゼナ、クログワイに効果高い」(田上地区)、「効果大きかった。田植え後10〜12日くらいの散布がよいと思う」(見附東地区)「初期剤との体系処理で有効」(加茂地区)などの声が寄せられている。
 田植え後7日〜14日の間に散布しているが、「適期に散布できなかった」ために、ホタルイの発生が見られたほ場もあったが「白くなり枯れていく様子が確認」され、かえって効果が大きいことが分かったという話もある。

(写真)ミズガヤツリ(白化)

 

◆効き目が分かりやすいことも


 全体的に「いままでにない剤の効き方なので、分かりやすく好評」だった。
 JAとしては、試験結果の取りまとめの時期関係から「23年用の暦には載せられないが、予約申込書には載せた」。また、一部地域では、「5割減減栽培用資材」に指定し、先行して取扱いを拡大する計画もある。
 「本田除草剤の主力として位置づけ、普及拡大を進めたい」し、楽しみな剤だと五十嵐部長は考えている。

(2010.10.08)