第3次男女共同参画基本計画
平成25年度に女性役員ゼロJAを解消
今回の基本計画の特徴は▽重点分野を時代の変化に応じて15分野に拡充、▽実効性あるプランにするため数値目標やスケジュールを「成果目標」として設定、▽第2次基本計画から取り組んでいる「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%程度とする」目標を進めるため、これまで取り上げてこなかった政治、司法、経済分野などへの働きかけ、▽女性の「M字カーブ問題※」解消に向けた継続就業、再就職支援などの実施、などだ。
◆意識と環境への働きかけ
重点分野うち、第6分野(「活力ある農山漁村の実現に向けた男女共同参画の推進」)で課題と目標を掲げている。
政府は農林水産業や農山漁村の再生には農山漁村での「6次産業化」の推進が必要であるとし、▽まさにこれまでの女性の起業活動が6次産業化の先駆けであること、▽農業就業人口の半数を女性が占めていること、などから女性参画は不可欠だとしている。
しかし地域社会での意志決定の場に女性の登用が進んでいないことから、農山漁村に強く根付いている性別による役割分担意識を解消し、農業経営に参画できるような取り組みや女性だけが忙しくならないよう「ワークライフバランス」を考えた環境整備の推進を強調している。
農水省人材育成課女性・高齢者活動推進室の松井瑞枝課長補佐は「これまでの反省から参画推進には地域での取り組みが重要だと考えています。『ワークライフバランス』は、大きな企業で進めているもので地域の自営業や農業者には関係ない、と思われがちですが、みんな暮らしているのは地域なのでそこから推進していかなければいけないと思います」と話す。
成果目標は▽農業委員会、JAにおける女性役員が登用されていない組織数(農業委員会:890(平成20年度)・JA:535(平成19年度))を平成25年度までにゼロ、▽家族経営協定の締結数を平成19年度の4万件から32年度には7万件に増やすとした。
この基本計画は昨年3月30日に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」がベースとなっており、そのなかで女性の登用増などに対する目標設定と実現に向けた普及・啓発の実施内容が盛り込まれた。政府はこれを踏まえて女性の登用促進への具体的な目標を設定した。
◆地域全体で取り組み強化
また今回、重点課題に第14分野「地域、防災・環境その他の分野における男女共同参画の推進」が新設された。
ここでは地域における政策・方針決定過程への男女共同参画を強調しており、第3次計画で改めて強調している項目にも「地域における身近な男女共同参画の推進」があげられている。松井課長補佐は「自治体を決める母体とJAや農業委員を決める母体には共通する部分があるので、切り離して考えるのではなく、一緒に取り組んでいくべき課題」として考えている。
農水省は目標実現のため、23年度は男女共同参画加速化事業として農山漁村の男女共同参画への理解促進に向けてNPO法人などが行う研修会などへの支援を行っていく。昨年は全国5カ所のモデル県だけで開催したが、今年は全国でブロック別に行い、地域の実情に応じた情報提供や研修で地域差を解消したいとしている。
※ 日本の女性の労働力率を年齢階級別にグラフ化したとき、30歳代を谷とし、20歳代後半と40歳代後半が山になるアルファベットのMのような形になることをいう。
JA運営への女性参画
女性のJA運営への参画をすすめなければ、JA運動・事業はのびない。第25回JA全国大会決議で女性のJA運営参画の目標を「正組合員25%以上、総代10%以上、理事等2名以上」と定めた。しかし平成18年の第24回大会でも「正組合員25%、総代10%を目安。理事等は全国でJA数と同等以上を目標」としており、ここ数年で女性登用の実績は毎年着実に伸びてはいるものの、なかなか目標達成には至っていない。
女性参画促進のためには、JAトップ層はもちろんだが、女性自身の意識改革も求められている。
◆県別で比率に差 女性の正組合員化
女性の正組合員数は平成20年度末で全国87万2000人で全体の18.1%。昨年より0.6ポイント増えた。ここ数年で毎年5〜6万人ほど正組合員が減少している中で、女性だけは毎年コンスタントに伸びている。
しかし都道府県別の格差は大きい。山口30.5%、広島28.7%など中国四国を中心に女性の正組合員比率が2割を超えたのが1都12県ある一方で、沖縄11.5%、福井11.8%など、平成10年の全国平均14%を下回っていたのも8県あった。
JAの女性理事等(理事、経営管理委員、監事の総数を指す)数は平成22年7月末現在で全国739人。5年前と比べて300人ほど増えた。しかし「女性役員(理事)ゼロJA」は全JA数の半数近い350ほどある一方で、女性理事等2人以上が246JA、3人以上でも80JAと積極的に登用するJAも着実に増えている。
◆JAトップとともに女性の意識改革が重要
女性は農作業や農産加工・直売、福祉、信用、共済など各JA事業への貢献度が高いだけでなく、仕事への積極性や真面目さ、柔軟・寛容・実用的なアイディアなど「女性目線の価値観」をJA運営に生かすためにも積極的な女性登用をすすめることが求められている。
JA運営への女性参画について、女性理事等の研修会で次のような意見が出た。
「JAは目標数値の達成だけ先行して、実際の女性役員や理事に何を求めているかが定かでない」とJA側の意識改革や環境づくりを求める一方、「男女共同参画が叫ばれて10年以上経つが、女性自身の意識向上がすすんでいない」と女性側にも変革が必要だとの意見もある。
次代を担う人たちには「何を言われてもへこたれず、自信を持って」と多くの女性理事等がエールを送っている。
今は「女性理事」などの特別枠で選ばれている人が多いが、「いつか普通の理事として女性が受け入れられる」ようになるため、JA・女性組織ともにさらなる積極的・具体的な行動が必要だ。
女性協3カ年計画
「気付き、見直し、行動しよう」
2年目をむかえ、より具体的な活動を
JA女性組織の「活動・組織・組織運営・JAへの働きかけ」の諸課題に「気づく」とともに「見直し」、具体的に「行動しよう」と呼びかける新3カ年計画「JA女性 気づこう一人ひとり、行動しよう 仲間と共に」は23年度で2年目となり、より具体的な実践が求められることになる。
JA女性協では平成16年度から6年間にわたり「かわろう かえよう」をキャッチフレーズに、自ら女性組織活動を変えていこうという女性自身の意識改革を訴えてきた。
22年度からの新3カ年計画は、意識改革の次のステップとして、第25回JA全国大会で決議された「新たな協同の創造」をめざして、具体的に「行動」することを呼びかけている。
行動の前段階となるのが、「気づき、見直す」ことだ。
計画では「気づき、見直す」点を、JA女性組織の「活動・組織・組織運営・JAへの働きかけ」と4項目に分類してそれぞれ考えようと提案している。
例えば、自分たちの「活動」はマンネリ化・PR不足になってないか、「組織」は地域メンバーの加入促進をすすめ、しっかり世代交代がすすんでいるか、「組織運営」では積極的に役員・リーダーになろうとする人材を育てるとともに活動資金は確保されているか、そして女性組織の活動やその意義について積極的にJA役職員や事務局に「働きかけ」をしているかどうか、などだ。
それらを踏まえて、自らが楽しみ、生活の役に立ち、実益になり、地域の人々に見えてともに連携できる活動をすることが、新たな「協同の輪」を広げることにつながる。
JA女性協の佐藤あき子会長は具体的な「行動」として、地元のフェスティバルでTPP問題について訴えるという。
女性組織の情報発信やJAへの正組合員化などをすすめるためにも、一人ひとりのさらなる実践が求められる。