◆東北では7割を超えるJAが防除暦に
水田農業は日本農業の基幹だが、雑草防除面では稲の大敵であるノビエの残草や抵抗性雑草さらに特殊雑草が増えるなど、課題が山積している。
そうしたなか、SU抵抗性雑草だけではなく、特殊雑草にも効果が高いAVH―301剤(テフリルトリオン剤:混合剤の商品名は「エーワン」「ボデーガード」「ゲットスター」)が昨年2月に登録され、全国約6000のほ場で現地試験を実施し高い評価を得た。
それは、23年産米の「防除暦」「注文書」への採用としても表れている。2年間にわたる試験が必要な県が多い西日本では、次年度の本採用になるが、難防除雑草に悩む東北地方では7割を超えるJAが、関東甲信越地方でも7割近いJAが採用している。
特に秋田県・新潟県では全JAが採用。山形・福島・茨城・栃木などでも100%近いJAが採用し「初年目としては驚異的な採用」だ。これは「現場の期待度が高く、試験結果が良かったことと、組織が一丸となって取り組んだからだ」と上園孝雄全農肥料農薬部次長は分析する。
◆クサネムなど特殊雑草にも高い効果が
展示ほ場試験でもノビエやSU抵抗性雑草に対する高い効果が確認されたが、それだけではなく、最近、各地の水田に侵入し問題となっているアメリカセンダングサ、クサネム、イボクサ、アシカキなどのSU剤が十分な効果を示さない特殊雑草にも高い効果(表参照)があることも分かった。
これら特殊雑草に対する効果を高めるためには、田面が露出することがないよう十分湛水して雑草の発生・生育を抑制するとともに、処理後の止め水管理を徹底することが大切だという。
(写真)
右:アメリカセンダングサ(キク科)
左:クサネム(マメ科)
◆農薬代4割低減の例も
そうした薬剤としての効果だけではなく、AVH―301はその効果の高さからコストパフォーマンスが改善し、防除の省力化にも貢献していることが、展示試験での実例から分かった。
図1は北陸のとある生産者の農薬代のデータを指数化したものだ。抵抗性ホタルイが発生するようになり後期剤を使った09年は前年より約6割増しの農薬代がかかったが、AVH―301剤一発で処理できた10年は、前年の約半分、08年比でも2割以上コストが下がっている。
図2は東北のある生産者のデータだが、09年は雑草密度が高くなったので後期剤を2回使って防除。10年はAVH―301で一発処理したことで、雑草が大幅に減少した。共同防除で後期剤を使ったが農薬代は前年の64%にまで減らすことができた。今年は、安価な初期剤との組合せで、09年の半分以下に農薬代を抑えられると考えている。
一発処理剤としてはAVH―301剤より安価な剤はいろいろある。だが、それらの剤は初期剤や後期剤と組み合わせる必要があるし、図2の09年のように後期剤を2回も使う必要があると、トータルなコストは高いものになる、というのがこのデータからよく分かる。
◆散布回数も減らし省力化を実現
これは直接的な農薬代の話だが、AVH―301剤を使うことで、散布回収が3回から1回に(図1)、4回から2回に減っていることも注目したい。規模が大きくなればなるほど、農薬散布の回数が減ることによる労力の軽減・省力化の意味は大きいのではないだろうか。それらを勘案したコスト低減効果はどれくらいあるのか、それぞれ計算してみて欲しいと思う。
◆田植え7日後からノビエ2.5葉散布が
最後に、AVH―301剤の上手な使い方を挙げておきたい。
水稲除草剤の効果を最大限に引き出すポイントは、散布時期を守ることと、きちんとした水管理だ。AVH―301混合剤は2成分なので、防除の難しい雑草でも他の剤と組み合わせた体系処理での使用もお勧めだ。
AVH―301剤は少し遅めに散布した方が効果的なので、田植え7日後(早期栽培地域は移植10日後)からノビエの2.5葉期までがもっとも効果を発揮する。
雑草の発生期間が長い東北地方などでは、初期剤を使ってからAVH―301剤を使うと効果が安定する。
クログワイやオモダカなど多年生雑草が多いところでは、後期剤を使いさらに刈跡のラウンドアップ使用や冬季の耕起など耕種的な防除を含めて密度を抑えていく。
水田の状況や雑草発生状況をみて適切に対応していくことだ。