◆SU抵抗性雑草が除草剤使用の実態を変える
水田除草剤の使用実態は、どのように変化してきているのだろうか。SU(スルホニルウレア)抵抗性雑草が問題になり始めた10年前と比較した日植調による除草剤の出荷量調査の解析に傾向が現れている。
10年前の一発処理剤の製剤別使用割合は1キロ粒剤、フロアブル、3キロ粒剤、ジャンボ剤であったものが、現在では1キロ粒剤、フロアブル、ジャンボ剤3キロ粒剤の順になっている。ジャンボの順位が上がり、フロアブルの使用率も成長するなど、明らかに省力散布製剤の使用が増加している。
地域別に見ると、フロアブルは北海道や関東で人気を集め、ジャンボは近畿、四国地域で人気を高め、九州、東海地域でも徐々にファンが増えている。
1キロ粒剤は東北、北陸、東海、中国地域で人気が高く、3キロ粒剤はこの10年間で半減したが、関東、九州では、いまだ根強い人気がある。
また、一発処理剤に含まれる成分数で見ると、10年前には2成分の剤が使用される割合は約20%、3成分が約50%、4成分以上が約30%であったが、現在では3成分が60%弱、4成分以上が40%弱で、2成分は5%程度しか使用されていない。
低成分の除草剤が求められているが、「実際には安定した効果が得られる成分数が多い除草剤が使用されている」(横山常務)という。
次に、抵抗性雑草が現れたSU剤を主成分とした一発処理剤の使用について見てみよう。
10年前には、一発処理剤のうち95%がSU剤を含んだものが使用されていた。現在では、全国平均で85%に減少したが、近畿、中国、四国地域のように90%を超える地域もある。
SU抵抗性雑草が現れても、SU剤が含まれる一発処理剤を使用するのは「SU剤が多種の雑草に効果があるという特徴を持つから」と横山常務。
このためSU雑草対策剤の多くは、SU剤を含む一発処理剤にブロモブチド、ベンゾビシクロンなどの成分を加えた薬剤が、使用されている一発処理剤の86%を占め、東北、北陸では95%にも達している。
一発処理剤への期待は、「SU抵抗性雑草をはじめ、多く問題雑草に対する効果や散布の省力性である」(同)ことが使用実態からわかる。
◆まだまだ人気を誇る体系による水田除草
初期剤、中期剤及び後期剤の動向にも触れておこう。
初期剤の使用量は10年前とあまり変化は見られないが、僅かながら土壌混和剤が増加気味にある。また、抑制タイプの除草剤使用が多い中、雑草を褐変化し枯殺するタイプの成分ピラクロニルの使用が着実に成長している。
初期剤には、後処理まで安定した除草効果を保持することが求められるが、「可視的な効果は、使用者の満足感を高めるのかもしれない」(同)という。
中期剤の使用量は年を追う毎に徐々に減少してきたが、平成21年は増加に転じた。これは、従来のシメトリン・MCPB剤だけではなく、高葉令のノビエやオモダカ、クログワイ等の問題雑草にも効果を示すハイカット、ザーベックス等の中期一発剤的な薬剤の使用が伸びているためだ。
後期剤については、広葉やカヤツリ科雑草を対象に使用するバサグラン、2,4D、MCPA等は10年前とほとんど変化が見られないが、ノビエ防除剤はシハロホップブチルの他に、新たに開発されたピリミノバックメチル、ペノキススラムを含んだ除草剤使用が伸びている。
さらに、10年前にはノビエ、広葉及びカヤツリグサ科雑草を同時防除出来る後期剤はクリンチャーバスのみだったが、現在では新たに開発されたヒエクリーンバサグラン、クサファイター、ワイドアタックが成長を見せ、ワイドパワー、スケダチ等、新薬剤が開発されている。
◆成分数少ない除草剤が水田除草に新たな局面
これまで見てきたように、水田除草剤には問題雑草に適切に対応する性能が一層期待されている。一方、環境保全や食の安全・安心を考慮した農薬の利用を求める社会の声は少なくない。
22年から普及展開に入ったテフリルトリオンを含む薬剤は、2成分でSU抵抗性雑草をはじめ、幅広い雑草に対して効果を示すことで注目されている。
また、SU剤と同じ作用を所有しながらノビエやSU抵抗性雑草にも効果があるピリミスルファン、プロピリスルフロン及びメタゾスルフロン(開発コード:NC?620)なども開発されており、成分数が少ない一発処理剤として登場、もしくはその登場が待たれている。
「除草剤の適正使用を心がけ、問題雑草が現れないよう、新しい薬剤を大切に利用し育てたいものである」(同)と結んだ。
このところ、投下成分量が少ない特別栽培米対応剤の登場が目白押しだ。使用者、農産物、環境への高い安全性の確保に全面的に対応したもので、従来の除草剤に対する感覚を一新した。同じ除草剤の連用を避け、適正使用を徹底したい。