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東日本大震災の水稲作付への影響と今後の対応

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【緊急JA調査】東日本大震災の水稲作付への影響と今後の対応

・福島では原発、用水路損害など1万4000ha強が作付不可
・宮城では5000haのうち2000haを県外に
・液状化の被害が大きい茨城・千葉
・田植え遅れれば収量の減少も

 3月11日に発生した東日本大震災は、地震とその後沿岸部を襲った大津波によって多くの田畑が流出・冠水した。その面積は農水省によれば東北・関東6県で2万4000haにもおよぶという。
 本紙は、用水路破損や原発被害も含めて田植えを間近に控えた水稲の作付ができるのかどうかについて、震災の被害が大きい青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉・栃木各県のJAに緊急に電話での聞き取り調査を実施し、60JAから回答をいただいた(実施日4月6〜8日)。
 なお紙面の都合で、JAごとの回答内容については、もっとも被害が大きかった岩手・宮城・福島の3県のみを掲載した。

 今回の大震災による農地の被害は、津波による流出・冠水の被害だけではなく、用水路やパイプラインなどの破損や地割れ、液状化などの被害が各県の内陸部でも発生している。
 用水路などの被害は、目視などで確認できるものもあるが、実際には通水してみなければ分からないものも多く、今後、被害状況が拡大する可能性は高いといえる。
 さらに今回は、直接的な地震・津波被害に加えて、東電福島第一原発事故による「放射能」による人災ともいえる被害が発生し、福島県を中心にこれへの対応が大きな問題となっている。

◆福島では原発、用水路損害など1万4000ha強が作付不可

写真提供:佐藤聡氏 水田への被害がもっとも大きいのは福島県で、農水省によれば流出・冠水面積は5923haとなっているが、4月7日のJA全中理事会へ報告された数字では、津波被害2419ha、中通り利水施設損壊4002ha、原発30km圏内8051ha、合計1万4472haが「水田作付不可能想定面積」(全農福島県本部による)だという。
 中通りの用水路などの損壊による被害については、JAすかがわ岩瀬、JAしらかわ、JA東西しらかわで大きく、「ため池の崩壊や地割れの影響を含めるとどこまで拡大するか分からない」(JAすかがわ岩瀬)状況といえる。
 また、原発による被害についても、4月8日に原子力災害対策本部が「水田の土壌から玄米への放射性セシウムの移行の指標」を「0.1」とし「土壌中放射性セシウム濃度の上限値」が「5000ベクレル/kg」と設定されたことで、原発から30km圏外の地域でも作付ができない地域が出る可能性があり、実際に水稲の作付ができない面積の規模が確定するにはまだ時間がかかる。

◆宮城では5000haのうち2000haを県外に

 福島に次いで被害が大きい宮城県では、沿岸部を中心に約5000haで作付が不可能とされ、県内での作付調整(とも補償による)がされた結果、登米市、栗原市がそれぞれ1000haづつ、その他の内陸地域で1000haを引き受けることが決まったが、残りの2000haは県内では作付できないので、都道府県調整をして欲しい旨を8日に農水省に申し入れた。
 福島県の場合も、表にあるようにJA会津みどりで「浜通で作付けできない面積を地域間調整で買い取る」としているが、他地域では、「種もみの確保」などが難しいなど、県内調整だけでは困難だといえるので、いずれ宮城県同様に都道府県調整が必要になるといえる。

◆液状化の被害が大きい茨城・千葉

 東北3県以外では、茨城県と千葉県で、液状化などによる用水路の破損などによる被害が報告されている。
 茨城県では、JA稲敷の利根川沿いや霞ヶ浦の湖岸で液状化により500〜1000haに被害が発生し、どれくらい作付けできるか現在の段階では不明だが「大幅に作付面積は減る」。さらに「田植えが最大で6月末まで延びそう(1カ月遅れ)なので、収量・品質に影響がでる」と予測している。また「植えられるところには陸稲でも植えようか」という話もあるという。
写真提供:佐藤聡氏 その他、茨城県ではJA北つくばで液状化が150haほど起きておりそのうち50haほどは今年の作付が難しいが、10haはJA内での調整が決まっている。JAひたちなか、JAなめがた、JA常総ひかり、JA水戸、JA竜ヶ崎、JA茨城千代田などでも用水路などの損壊があり、田植えが1週間から1カ月の遅れがでると見込まれている。
 千葉県では香取市で液状化の被害が3000haほど発生し、同市内のJA佐原管内で2100ha、JAかとり管内で400haの合計2500haで今年の作付ができない。
 JA山武郡市では浸水・塩害が400〜500haあり、現在、除塩作業行っており、5月末には田植えができる(約1カ月遅れ)見通しだが、作業そのものが大変なので途中で諦める人がでるかもしれないという。
 栃木県では、JAはが野、JAなす南で若干の用水路の破損、JAおやまで若干の液状化の報告があるが作付などには大きな影響がないという。

◆田植え遅れれば収量の減少も

 以上、みてきたように福島県・宮城県を中心に水稲の作付に大きな影響がでているが、用水路の通水後とか原発・放射能の影響いかんではさらに被害面積が拡大する可能性が大きい。さらに作付がされる場合でも田植えの時期が数週間から1カ月遅れるところが多いが、その場合は例年よりも「1〜2割収量が減る」と予測されている。

(写真提供:佐藤聡氏)

東日本大震災の水田被害と今後の対応

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(2011.04.12)