◆農薬は使用基準を守って使う
農薬は、病害虫・雑草への効果、農作物への薬害や農薬残留などの安全性を、多くの試験により確認した上で、農薬ごとにその使用方法が定められている。農薬の残留基準値については、作物・農薬成分ごとに決められ、収穫物に農薬が基準値を超えて残留することのないよう使用が制限されている。
製品ラベルには、その農薬が使用できる作物、農薬の使用量や希釈倍数、使用時期(収穫何日前まで使用できるか)、使用回数(栽培期間中に何回まで使用してよいのか)、散布方法などが記載されている。散布した農薬は、作物により薬剤の付着のしかたや分解程度、また肥大率の違いから、同じ農薬であっても作物ごとに使用時期や濃度が異なる。使い慣れた農薬であっても都度ラベルの内容を確認し、使用方法に従って農薬を使用しなければならない。また、栽培状況等によって注意すべき事項も記載されているので合わせて確認する。
残留基準値超過の事例には、週辺圃場からの農薬飛散、農薬散布機やホースの洗浄不足が原因となるものがある。安全な農産物づくりのためには、農薬の適正使用だけでなく、飛散防止や散布器具の洗浄などにも十分注意することが大切である。
◆農薬使用の記録をつける
使用した農薬の防除内容のほか、播種・定植日、収穫日などの栽培状況も記載しておく。防除記録は、農薬を適正に使用した証明ともなるので、農薬の種類や名称、使用月日、散布圃場、作物名、使用量(または希釈倍数)など、項目も漏れがないようにする。農薬の使用は種子消毒から作物収穫まで長い期間となるので、使用回数については特に注意が必要となる。
◆環境に配慮した農薬の使用
農薬を散布するとその圃場だけではなく、周辺環境や周辺作物にも影響を与えてしまうことがある。周辺への気配りを十分に行い、圃場以外に農薬を出さないようにしなければならない。
農薬の飛散を防ぐためには、風の強い日や昼間の散布は避ける、作物の近くから散布する、といった基本事項を徹底し、さらに飛散の少ないノズルの使用、防風ネットの設置やソルゴーなどの遮蔽植物の栽培といった対策も検討し、状況に応じてこれらを組み合わせた対策を行う。また、生産者同士だけでなく周辺住民や他業者との連携も重要であり、事前の散布連絡や日程の調整など、地域一体となった飛散防止の対策を行うようにする。
水田で農薬を使用する場合には、水田外への農薬の流出を防ぐために畦畔整備、オーバーフローをふせぐ水管理、農薬散布後7日間の止め水管理等を徹底する。
◆農家自身の安全対策
農薬を調製する場合など、農家が扱う農薬の濃度は濃く、薬液に直接触れたり吸ったりすると健康を害するおそれがある。農薬を扱う場合は、保護衣(カッパ)、マスク、保護めがね、手袋などを着用し、特にマスクは国家検定に合格したものや薬剤に合わせた専用のマスクを使用する。農薬は鍵のかかる専用の保管庫で管理する。なお、使い終わった農薬の空容器は産業廃棄物業者に出すなど適正に処理する。
★ ★
JAグループでは「安全防除」を通年の課題として、農産物・環境・農家の3つの安全を確保するための取り組みをすすめている。6月の推進月間にあたり、農薬の適正使用のためのポイントなどを再度確認し、実践していただきたい。また安全使用のためのチラシなども作成しているので活用していただきたい。