特集

全農特集「国産農畜産物の販売力強化」実現のために

一覧に戻る

【JA全農 畜産総合対策部】 飼料用米生産、モデル農場設置して普及推進

・いかにコストダウンを実現するか?
・「立ち枯れ」で乾燥コスト削減
・農場での飼料用米添加も

 JA全農の畜産物販売では、農場を特定した指定産地取引の実績が増えている。その理由のひとつが飼料用米を使った畜産物である。今後も飼料用米生産の拡大にともなってさらに増える見込みだ。
 この飼料用米の生産推進を担っているのは畜産総合対策部で、栽培試験などに取り組み、低コスト生産体系を追求してきた。今後はこれまでの実証試験結果をもとにモデル農場を設置しさらなる普及を図る。今回はその成果を紹介する。

◆いかにコストダウンを実現するか?

 JA全農は平成19年度から、各県JAと連携して飼料用米の栽培試験に取り組んできた。
 平成22年は7県(17JA)と連携し計120haで栽培試験を行った。
 栽培は移植と直播で、移植では「疎植」も試みた。通常は10aあたり4kgの種モミをまくが、疎植試験では2.2kgまで減らした。
 しかし、収量に変化はなかった。通常の種モミ代にくらべて10aあたり900円程度のコストダウンになる。
 また、23年産では無人ヘリによる播種も行った。これから収穫が行われ、収量やコストなどを検証することにしている。
 防除は種子消毒1回、除草剤散布1回、殺虫剤散布2回で実証試験を行っており、最低限の防除で飼料用米としては十分な質と収量が確保できているという。主食用の防除費用は10aあたり8000円程度だが、この最低限の防除によって、その半分の4000円に削減することができると試算されている。


◆「立ち枯れ」で乾燥コスト削減

 生育期間中、水管理をせずかけ流しにするなど労力をはぶく試みも行われた。これでも生育に問題がないことが確認されており労働費の軽減につながる。
 また、耕畜連携の促進と循環型農業、さらに肥料代を節減するために畜産たい肥の利用にも取り組んできた。たい肥投入による倒伏が心配されたが収量に影響はないことが確認された。
 これまでの栽培実証試験では多収穫品種を使用し、平均で10aあたり600kg程度で最高で750kgが記録されている。
 一方、多収穫品種の採種にも取り組んでおり、23年度は4県4JAとの連携で5.7haで作付けた。来年度用に29tの供給を見込んでいる。品種は産地に合わせて多収穫品種で「夢あおば」「モミロマン」、「ミズホチカラ」、「べこあおば」などとなっている。
 今後は10aあたり1tの収量をめざして国の研究機関等と連携し、栽培試験を行っていく。
 収穫後の乾燥コストをいかに削減するかも飼料用米生産の大きな課題だ。
 そのために取り組んできたのが立ち枯れ試験である。これまでの試験では登熟後、刈り取りを1カ月遅らせることで水分が25%から17%へと8%低下することなどが示されている。刈り取り前に降雨があれば水分は上昇するが、2〜3日でもとに戻ることも分かった。
 通常の収穫期による刈り取りの乾燥籾摺コストが仮にtあたり1.4万円1.5万円程度だとすると、刈り取りを遅らせてあらかじめ水分を低下させることで6000円ほど削減できると試算されている。


◆農場での飼料用米添加も

 こうした生産現場での取り組みのほか関係会社と連携した飼料用米の低コスト物流の取り組みも進めている。
 (株)西日本ジェイエイ畜産では平成20年度からの飼料用米給与試験をスタートし、平成22年からは採卵鶏の配合飼料に鳥取県産の飼料用米(籾5%)を添加して「こめたまご」として販売した。
 現在は採卵鶏につづき、SPF豚農場の一部で飼料用米の添加試験(玄米粉砕10%)を経て「こめ豚」としての生産・販売に取り組んでいる。そのため全農畜産総合対策部などと連携し、▽飼料用米搬送機、▽玄米粉砕機、▽飼料用米混合添加機を新たに開発して試験を行っている。飼料用米を配合飼料工場に運搬するのではなく、畜産農場に搬送して、その場で飼料に添加することでコストダウンを図ろうとするものだ。
 生産された「こめ豚」は鳥取県生協への産直新商品「大山こめ豚みみとん」として位置づけ、積極的に販売推進している。
 新規需要米としての飼料用米の作付け面積は22年産では約1万5000haだったが、23年産では約3万4000haと倍以上に広がり、生産量も18万tを超える見込みとなっている(9月15日現在)。
 飼料用米の生産コスト低減には、ほ場の大区画化も欠かせない。また、畜産総合対策部では低コスト物流を実現するため配合飼料工場の周辺での飼料用米生産もめざしているほか、これまでの実証試験から得られた知見をふまえ、モデル農場を設置してさらなる普及をはかっていく方針だ。

新規需要米の用途別認定状況

(↑ クリックすると大きくなります)

(2011.10.24)