◆国産野菜のシェアを高める
外食や中食など、いわゆる「食の外部率」は昭和50年には28.4%だったが、平成20年には42.3%にまで上昇した。野菜の消費もこれにともなって家庭用消費よりも加工・業務用向けが増えてきたが、この加工・業務用野菜のうち、国産が占める割合は7割程度にとどまっている。
こうした状況のなか輸入野菜から国産野菜への切り替えを進めようとJA全農は加工・業務用野菜の取り組みに力を入れ、23年度事業計画では「加工・業務用野菜を対象とした低コスト生産体系の提案と実需とのマッチングによると取扱強化」を最重点事項の1つにしている。
◆播種前契約を推進
具体的には東日本園芸農産事業所が販売先を確保するとともに、食品製造業者や外食業者などから供給してほしい要望を把握する。「出発点はあくまで取引先」(園芸農産部)が今回の事業の特徴だ。そのうえで取引先が求めるのは年間安定供給であることから、品目、数量、規格、供給期間などの実需者ニーズを各県に伝えて生産を図り、産地間の連携により年間産地リレー体制を構築し安定供給をめざす。
さらに各県では園芸販売部門だけでなく、営農指導部門と連携した生産振興と販売拡大をはかる。
生産は産地と販売先との事前契約(播種前契約)による取引を推進する。市場出荷との最大の違いがこの取引形態で、販売先が決まっていることから生産者は安心して生産に専念することができる。価格は市場出荷よりも低価格だが、栽培面積を広げてコストを吸収したり反収量を上げて所得確保につなげることは可能だ。園芸農産部では1品目で1ha〜3ha程度の生産を産地に推奨し、今後の取り組みの中では、大型生産者との連携や地域における集落営農による大規模生産も視野に入れている。
こうした仕組みで事業を推進するとともに、販売先からの要望の多い品目を最重点品目、重点品目として設定することにした。最重点品目は(1)玉ネギ、(2)キャベツ、(3)ジャガイモ、(4)ニンジン、(5)長ネギの5品目。重点品目はレタス、トマト、白菜、大根の4品目とした。
◆業務用キャベツを戦略作物に
JA秋田しんせい
JA秋田しんせいでは加工・業務用キャベツの生産に22年度から本格的に取り組みを始めた。
「米の単作地帯だが米価低迷で農業経営は厳しい。価格が決まっている加工・業務用野菜は単収を上げれば所得が見えてくることからJAとしても推進課題と考えている」と園芸課の渡部治課長は話す。
23年度は15戸の生産者で11.5haの作付けをした。JA管内は日本海沿岸部から山間地まで幅広く、多様な気候条件を生かして「ロングスパンで出荷できる」ことに着目、夏キャベツから12月の降雪前まで出荷できる秋冬キャベツを生産し、実需者から好評を得た。播種時期を調整すれば10月中旬までの米の収穫作業ともバッティングしないという。
また、キャベツの収穫・選別作業自体も大幅に簡素化できる。市場出荷なら一定の大きさに生育したキャベツを拾い獲りしなければならず大規模に生産すれば労働力も必要になる。しかし、業務用では、ほ場で一定の大きさに生育すれば一括して収穫することも可能だ。「播種から栽培、出荷まで自己完結型でできる」という。
行政も加工・業務用キャベツを産地資金の交付対象の戦略作物と設定して支援をはじめた。JAでは「集落営農組織で収入を上げるための作物とすると同時に、今後はキャベツに限らず取り組みを広げていきたい」としている。
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JA秋田しんせい管内では今月、加工・業務用野菜の収穫・出荷が行われている
◆品種開発も進行中
このような産地での取り組みをさらに促進するため、全農全国本部も営農販売企画部や生産資材部などとも連携し、モデル生産体系の構築、加工・業務用野菜に適した品種開発、農機具開発などを進めている。
このうち品種開発では、大玉で歩留まりのいいキャベツや、カットに適した大型で円筒形に近い形態のニンジン、梅雨による湿気被害を防ぐための収穫期の早い玉ネギ、さらに多様な商品への活用が期待できるカラフルポテトなどの開発・研究が進んでいる。
また、カット野菜や冷凍野菜の開発、販売促進も行っている。
カット野菜では、たとえば食品業者の利便性を考えた剥き玉ネギの販売などがある。こうした加工野菜は提携加工工場に全農が産地の原料を納入し製造を委託、製品を全農が納入して取引先の外食産業などに販売するという取り組みで進めている。全国本部がプロデュース機能を発揮して産地での栽培から取引先までを一環して結びつけ販売力強化を図るものといえる。
園芸農産部は「国内農業は耕作放棄地の増加も課題となっている。加工・業務用野菜の生産・販売振興はその解消にも貢献する」としている。