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全農特集「国産農畜産物の販売力強化」実現のために

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【JA全農 生産資材部】 太陽光発電をハウスに導入  営農・技術センターで実証試験を実施中

・軽量なシート状発電パネルを活用
・光合成と発電の両立めざす
・売電による収益も

 JA全農は富士電気(株)が開発した太陽光発電シートを利用してビニールハウスに太陽光発電を導入する実証試験を3月から神奈川県平塚市の営農・技術センターでスタートさせた。
 実証試験で栽培作物への影響や発電効率などを確かめ、24年度からの販売を目指している。

◆軽量なシート状発電パネルを活用

発電シートはハウスの西側に設置。生育への影響を避けている JA全農では農業分野での太陽光発電システムの活用に向け、2009年末からプロジェクトを開始した。
 施設園芸は太陽光を最大限取り入れて農産物を栽培するものであって、太陽光を発電のために太陽電池に吸収してしまうこととは相容れないと考えられてきた。つまり、太陽光を光合成に利用するか、発電に利用するか、いわゆるトレードオフの関係が出てくる。
 また、仮に導入するにしても、現在普及している発電用パネルは結晶体シリコンを材料にしたもので、これをビニールハウス上に設置するには、その重量を支えるため相当な補強が必要になるという課題もあった。
 しかし、太陽光発電の材料は薄膜シリコンの開発など軽量素材も登場するようになり、JA全農は富士電気(株)が販売を開始した薄い太陽光発電シートに着目、軽量で柔軟性があることから、これを活用し施設園芸で実証試験を行うことにした。

(写真)
発電シートはハウスの西側に設置。生育への影響を避けている


◆光合成と発電の両立めざす

 シートの幅は45cm。これをハウス西側の谷部に設置することにした。シートは不透明だが、これによって日の出から光合成が行われる午前中はハウス内に影を増やすことはない。
 正午以降は徐々にシートの影がハウス内に広がっていくが、光合成のピークは過ぎているため生育への影響はごくわずかに抑えられると想定した。こうした設置方法が可能になったのも素材に柔軟性があり、軽量化を実現したため。つまり、光合成と発電とのトレードオフの幅をできるだけ抑えることができるということになる。
 一方、通常の太陽光発電ではパネルを南向きに設置するが、この実証試験では西側に設置する計画のため発電効率が落ちると考えられた。しかし、メーカーのシミュレーションでは10%程度の減少にとどまることが分かった。
 現在、営農・技術センターには4つのハウスに太陽光発電シートが1ハウスあたり12枚、合計48枚設置されている。栽培作物はトマトで、実証試験では(1)栽培作物の生育への影響(光合成への影響)調査、(2)発電効率の確認、を目的としている。
ハウスのフィルムとフィルムの間に発電シートを差しはさめばコストダウンにもなる また、シートの設置方法についても外部と内部に設置して効率的な方法を比較検討することにしている。外部に設置すれば太陽光を直接吸収することができるが、留め具などが必要になるためコストアップにつながる。一方、内側に設置する場合はフィルムとフィルムとの間に差し挟めばいい。太陽光はフィルムを通過することによってやや遮られるため発電量に影響すると考えられるが、台風などによる破損が避けれるなど安全性は高いといえる。
 さらに発電した電力をパワーコンディショナーで交流に変換して天窓モーター、灌水用用ポンプなどに使い、実際にどの程度の発電が行われているかも確認する。

(写真)
ハウスのフィルムとフィルムの間に発電シートを差しはさめばコストダウンにもなる


◆売電による収益も

 生産資材部によると、今回の設置方法でハウスの大きさを20aとすれば約6kwp(キロワット・ピーク)の発電が可能だという。
 ハウスには、前述のように天窓モーター、灌水用ポンプのほか、カーテンモーター、サイド巻き上げ機モーター、循環扇、温風暖房機などが設置されている。これらの機器の稼働は昼間はごく限られているため、太陽光発電による電力の多くは余剰となる。
ハウスに設置した発電シート 一方、冬期にはとくに夜間に温風暖房機を稼働させることが多い。したがって、太陽光発電を導入したハウスでは昼間は電力を売電し、夜間は通常の電力を買って運用することで電力コストの低減をめざす。
 余剰電力は現在の制度では10kw未満であれば1kwh(キロワット・アワー)あたり40円以上での売電が可能。他方、通常のハウスでは10kw程度の低圧契約をしていることが多く、この場合の電気代は1kwhあたり10円台となる。売電価格のほうが高いため収益が生まれることになり、それが電力コストの削減につながる。
 また、再生可能エネルギー特別措置法が来年7月に施行されるが、同法による全量固定価格買取制度の活用も課題となってくる。
 JA全農では実証試験を進め、来年度からハウスでの太陽光発電システムとして販売をしていく予定にしている。

(2011.10.27)