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第57回JA全国女性大会 創立60周年記念特集
現地レポート
元気なフレッシュミズサークル「WINK」 JAはまゆう(宮崎県)

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【現地レポート】元気なフレッシュミズサークル「WINK」 参加しやすい環境づくりで子育て世代の生きがいの場に  JAはまゆう(宮崎県)

・同世代が集える場所
・人気のおせちセミナー
・子どもと一緒に参加
・地域ぐるみの活動に
・“見せる”活動への工夫
・世代の変化に沿って

 JA女性部活動の今後を背負い、引き継いでいくのが「フレッシュミズ」世代だ。高齢化が進むなかでJA女性組織でも次世代対策が課題にあがる。しかし全国的に活動の中心はミドル世代やエルダー世代で若いメンバーが入ってこないと頭を抱えるJAも少なくない。
 一方、かつてこのような課題を抱えていた宮崎県のJAはまゆうは、今年度「フレッシュミズの主張」でフレッシュミズリーダーの松田香里さんが最優秀賞に輝いた。
 松田さんは主張の中で「仕事・家事・育児の忙しさに追われていますが、JAはまゆう女性部フレッシュミズを通じて親子で楽しみ・共感できる仲間、支え合う仲間と知り合うことができました。...この活動が『今日の自分より明日の自分へ少しでもプラスになるように』」と述べている。
 同フレッシュミズはリーダーが2代連続で最優秀賞を受賞し、いきいきしたメンバーの姿が浮かぶ。そこで同JAのフレッシュミズサークル「WINK」の活動を取材し、松田さんたち子育て世代の生きがいの場となっている理由を探った。

JAはまゆう(宮崎県)口コミで地域に広がる活動の輪


◆同世代が集える場所

 JAはまゆうにフレッシュミズのサークル「WINK」が発足したのは平成17年のこと。“わくわく、いっしょに、ノリノリ、クラブ”の頭文字をとって「WINK」と名付けた。
 女性部ではそれまで、地域の高齢化と若いメンバーが入ってこないことによる部員の減少で存続の危機に直面していたことから、平成15年の総会で「女性部活性化宣言」を採択した。
 これをきっかけに「45歳以下」の部員すべてを「フレッシュミズ」とする規約を設けるなど、フレッシュミズの組織活動にも力を入れ始めた。これまで女性部というと「農家の女性が入るもので自分たちには関係ないもの」というイメージが強かったことから、若い人たちにも魅力を感じてもらうためには同世代での活動が必要と考え、フレッシュミズが定期的に集まれる場として作ったのがこのWINKだ。
藏富英志組合長 現在女性部員1033人のうち、フレッシュミズは170人。藏富英志組合長は「地域の人口動態からみて組合員数の減少や女性部員の高齢化はやむをえないが、WINKの活動は子どもや家のことなど情報交換の場としても心強いという声を聞き、次世代対策にもつながっている」と話す。

(写真)藏富英志組合長


◆人気のおせちセミナー

人気のおせちセミナー WINKの活動は月1回。事務局を務める生活福祉課の職員がリーダーと調整しながら年間の活動プランを計画している。今年度は「万能調味料作り」や「恥をかかないためのテーブルマナー講座」、「わくわく宿泊交流会」などを開いてきたが、その中でも今年度で6年目となる人気の恒例企画が年末の「おせちづくり」だ。おせちを作ったことのない若いメンバーには好評で、女性部に入ってもらうきっかけにもなっているほどだという。
23品のおせちが完成 今年度も12月30日、本所横の研修会館内にある調理室に朝から続々とメンバーがやってきた。5つの調理台に分かれてそれぞれ担当するおせちの調理にとりかかり、会話を弾ませながらの和気藹々とした作業は昼食をはさんで午後まで続いた。
 「お店で買えばいいや、というのではなく、伝統の食文化を受け継いでいく活動のひとつにしたい」というJAの思いもあって、毎年女性部役員も手伝いにやってくる。WINKの活動は仕事や家事・育児からリフレッシュできる時間にしてもらうだけでなく、伝統的な料理や文化、地域のことを継承する場としての目的もある。

(写真)23品のおせちが完成


◆子どもと一緒に参加

フレッシュミズリーダー松田香里さん このおせちづくりで気付いたことは小さい子どもを連れた20代〜30代の若いメンバーが多いこと。WINKの元気な活動のキーパーソンとなっているのがリーダーの松田さんだ。「松田さんがリーダーになったことで小さい子どもを連れて参加する人も多く、若いお母さんたちが増えて活動の幅がさらに広がりました」と生活福祉課の河野寿美江さんは話す。5歳、3歳、1歳の子どもを持つ松田さんは「子どもといっしょに参加できる活動」を重視している。
 松田さんが女性部に入ったのは平成21年。「母親や親戚が女性部に入っていたこともあり、農家のお嫁さんは入るものだと思って入った」のがきっかけだという。そして2年前、フレッシュミズの活動を知って参加した本格的なおせちづくりに感動し、翌年は近所の友達を誘って参加した。おせちづくりをきっかけにWINKの活動に参加するようになり、昨年2月にリーダーを引き受けた。
 JAはまゆうの女性部は所属する支部のなかで班活動を行っているが、松田さんはリーダー就任後、所属する串間支部に友達と2人でフレッシュミズの班「みさき会」を立ち上げた。周りのママ友達をWINKの活動に誘っても、月1回のセミナーでは機会を逃すとだいぶ先になってしまうため、気軽に誘える場を作りたいとの思いからだ。「みさき会」の活動は毎月2回程度。これまで行ってきたのはイチゴ狩りやお花見、味噌づくりなど、子どもがいても参加でき、親子で楽しめるイベントが基本だ。メンバーからリクエストされた内容で活動を計画しているが「みんな積極的でずいぶん先の予定まで埋まってしまっています」。

(写真)フレッシュミズリーダー松田香里さん


◆地域ぐるみの活動に

 「みさき会」をつくったことで「お試し」として活動に参加してもらいやすくなり、女性部に入ってもらえる機会が増えたという。串間支部は本所まで車で40分かかるが、おせちづくりにもみさき会のメンバーが多く、みさき会の活動だけでなく本部で行うWINKや女性部の活動にも積極的に参加してもらえている。松田さんも入部当初、おせちづくりでの体験を友達に伝えたように、口コミによる仲間づくりで現在みさき会のメンバーは40人に増えた。
長友泰子女性部長 女性部の長友泰子部長は「これまでは本当に参加してもらいたい世代に『子どもがいるから…』と断られていましたが、小さい子どもを持つ松田さんがリーダーとなったことで、新たな仲間を増やしてくれました。松田さんの視点が活動に加わったことで“子どもを連れてきてもいいんだ”という意識が部員の中にも芽生えたようでWINKに新しい風が入りました」と話す。
 おせちづくりに参加していた1人は沖縄から夫の転勤で串間にやってきたといい、4月にみさき会に入会。「ママ友が多く入っていて子育て支援センターの延長のようなつながりになっている」と話す。また「これまでは旦那がJA職員でなければ女性部には入れないというイメージがあったけれど子どもと気軽に参加できると聞いて入った」という人もいた。子育て支援センターは市町村が開いているものだが、そこで知り合った母親同士がその後も交流を深める場をJAのフレッシュミズが提供しているといえそうだ。
子どもたちも興味津々 松田さんも「子どもとの休みの日の過ごし方に困っていたのでみんなで集まって過ごそうというのが最初です」というように、同じ悩みを抱える子育て世代のニーズに合った活動によってJA女性部の仲間も広がっている。
 また、子どもも一緒に参加することで、子ども同士が仲良くなって次の活動を楽しみにしていたり、保育園で先生をWINKのイベントに誘っていたりと活動の発信源になっていることも。松田さんは「5歳になる長女は『わたしも早く女性部に入りたい』といっています。これからも子どもにも入りたい! と思ってもらえるような活動をしていきたい」と話す。

(写真)
上:女性部長・長友泰子さん
下:子どもたちも興味津々


◆“見せる”活動への工夫

案内状のハガキ WINKはただ単に活動するのではなく、積極的な発信も心がけている。そのひとつは次のセミナーを通知する案内状の発送だ。毎月セミナーの前に事務局が手作りしたハガキを全部員に送付している。“フレッシュミズに属しているんだ”ということを意識してもらう目的もあるが、封書ではなくハガキで送ることで家族にも活動を“知らせる”効果をねらっている。
 フレッシュミズに共通する問題のひとつとしていえるのは、家を空けることへの遠慮から活動に対する家族の理解が必要な点だ。そこでWINKは、家族の目に見える形で活動を伝えることで部員の継続的な参加につなげたいと、セミナーの内容にも“発信”の工夫を盛り込んでいる。おせちづくりと並んで人気なのが「わいわい 夕食づくり」だ。料理講習というとこれまではその場で食べることが多かったが、作ったものを持ち帰り、お姑さんにおすそ分けしたり、食卓にのぼることで家族に活動を知ってもらえるようになった。おせちづくりでも「家族が毎年楽しみにしていて今日も家で待っている」という人がいたように「このおかげでWINK活動は家族の理解を得られている」と松田さんはいう。
 また女性部活動の広報紙「花ひらく」を隔月で発行し、各支部の活動を写真とともに紹介している。どの支部の部員たちも「私たちの活動を載せて」と活発だ。元気なWINKの活動をみて「私たちも!」と女性部全体の元気にもつながっている。
 「活動をし、さらに発信して周囲に見てもらい、それを評価されることがWINKの元気な理由」だと初代リーダーの池田陽子さんは語る。

(写真)案内状のハガキ


◆世代の変化に沿って

 事務局の河野さんはフレッシュミズの活動を支えていく立場として、メンバーのニーズに見合った対応がこれからさらに大事だと考えている。フレッシュミズのメンバーは親としての立場は同じでも、子どもの世代は乳幼児から高校生までと幅広く、活動のニーズも異なる。若い母親世代に合わせていくことがフレッシュミズの活動を続けていくためには必要だという。
 そして活発な活動をしていくうえで欠かせないのはリーダーの存在だ。松田さんがリーダーとなり、同世代の若い母親たちが多く集まってきたことからも「フレッシュミズが自分たちの体験をPRすることで同じ世代の人たちもどんどん入ってくれると思う。事務局としてはリーダーとなる人材に目星をつけることも大切」だといい「これからもリーダーとしてWINKを引き継いでくれる人材を呼び込めるように魅力ある活動の女性部であるようにしていきたい」と話している。

【現地レポート】元気なフレッシュミズサークル「WINK」 参加しやすい環境づくりで子育て世代の生きがいの場に

(2012.01.27)