新たな事業展開を見据えた連合会の組織改革
特集にあたって
JA共済事業は、東日本大震災による地震や津波の被害、さらに東電福島第一原発事故、さらにその後の台風や雪害など自然災害が多発したなかで、大震災関係では9000億円という共済金を支払うとともに、23年度の全国事業目標を達成するなど、その底力を発揮した。そして、23年度の事業推進において優秀な実績をあげられたJA共済大賞受賞の3JAをはじめ500余のJAが5月17日に表彰される。そこで本紙では、大賞3JAの功績を讃え各JAを紹介するとともに、現在のJA共済事業のおかれている状況とこれからのあり方について、安田舜一郎経営管理委員会会長に聞いた。さらに、交通事故対策を中心とする社会貢献活動についても紹介する。
自前で大震災に対応したJA共済に誇りと自信を
◆3Q訪問活動を基軸に次世代へ“舵をきる”ことが課題
――まず、JA共済事業の現状についてどのようにみておられますか。
「私たちの使命は万が一のときにきちんと契約者に対応できることと、JAへ還元できることです。
昨年の東日本大震災に関して9000億円余の共済金をお支払いしました。広域査定などにおいては必ずしもスピード感があったとはいえない面もありましたが、きちんと対応でき、組合員・利用者から感謝されました」
「と同時に、未保障、巨大災害における査定・調査など課題もみつかりましたので、今次3か年計画の最終年度である今年度にきちんと対応していくと同時に、3Q訪問活動を基軸とした次世代へつなぐ取り組みへ“舵をきる”ことが今次3か年の最終年度の課題です」
「その実践によって、それぞれの計画目標を全県域で達成することが最大の目標です」
◆推進ポイント方式導入で成果が
――23年度は目標を達成されましたね。
「全国目標は達成しました。また、大震災の被災県でも達成いただきました。個別にみると共済種類によって達成度合いに格差があります。今後は、生命、建更、自動車の“ひと・いえ・くるま”そして医療や年金をバランスよく計画し目標達成していくことが重要だと思います」
――全体をバランスよく推進するために推進ポイント方式を導入しましたね。
「推進ポイント方式は、導入できた県域とそうではない県域がありますが、これからの事業環境の変化を見据えたなかでは、全県でポイント方式を導入していく必要があると考えています」
「現行のポイント方式の機能は、県域や地域、さらにはJA内においても事業環境が異なりますが、例えば短期共済に集中してシェアアップをはかるなど工夫をして取り組むことができます」
――県域やJAによって取り組むポイントが医療だったり建更だったり異なってもきちんと評価されるということですね。
「使い勝手が良くなったといえます」
「ただ、今後、実態に合わせて改善しながら、全県に取り入れてもらうことも、今次3か年最終年度の大きな課題です」
――改善の余地があるとお考えになるのはなぜですか。
「23年度の場合、東日本大震災の影響を受けて建物更生共済が伸びた面がありますので、平常時でどうかということも見る必要があるということです」
◆“フェイス・ツー・フェイス”がJA共済の強み
――医療共済やがん共済など生存保障ニーズに応えた共済は…。
「ニーズは高いのですが、外資系やテレビ通販の伸び率から見ると残念ながら遅れをとっています」
「そういう意味では、仕組開発もありますが、JA共済のニーズにあった素晴らしさを次世代層や団塊世代層に理解してもらう努力をすることが、必要だと考えています」
――テレビCMの使い方とか上手ですね。
「私たちJAグループの“安全・安心・信頼”を伝える事業展開は“フェイス・ツー・フェイス”ですから、そこが要員をかけないコマーシャル推進との違いです」
――そういう意味でも「3Q訪問活動」が重要だと思いますが、その到達点は…
「3Q訪問活動に最終的な到達点はありません。言葉を変えれば“裾野は限りなく広い”という考えに立ち今後も続けていきます」
「しかしこれからは、内容のある、提案力のある3Q訪問活動が求められていると思います。組合員・契約者に対して誠実な保障提供ができないと次世代に結びついていきません」
◆提案力のある人材育成で競合に打ち勝つ
――親世代に誠実な対応をしているだけでは次世代には受け入れられないということですか。
「そういうことです。
とくに長期共済の場合は、誠実さをもって組合員だけではなく地域の人たちに対応し、提案をしていかないといけないと思います。長期共済の場合は、運用がある意味でコアの部分で、運用による還元を求めている利用者も増えています」
「そういう意味では、JA共済のLAでもファイナンシャル・プランナー(FP)の資格を取れるほどの人で、FP的な提案力をもつ人が求められています」
――JA共済の推進の中核を担っているLAの質的な向上を図る必要があるということですか。
「LAの人材育成にぜひ取り組んでいただきたいと思います。現在のJA共済の推進実績に占めるLAの占率は75%ですから、LAの質を高めていくことで、本当に契約者にとってよいものに結び付けていけば、そのことが裾野を広げ、次世代につながっていきます。そういう質的向上が、これからはますます問われると思います」
「言葉を変えれば、実績だけをめざすのではなく、組合員・利用者にとってよい提案をしていくということです。そしてそのことで競合に打ち勝っていくことにつながります」
◆事業構造変化は“マグマの形”で現われている
――JAの事業基盤である農村地域は、高齢化し5年先10年先には人口がかなり減少するという予測がされています。そうなるとJA共済の契約自体も少なくなっていく可能性が高くなるのだと思います。そういう事業環境の大きな変化についてどう対応していこうとお考えでしょうか。あるいは、昨年度から議論をされていた「農協共済審議会」でそのあたりの検討もされたのでしょうか。
「審議会を立ち上げたのは、事業基盤の抜本的な構造変化が“マグマの形で現われている”からです。私は外圧も含めて実質的な構造変化は3年くらいで起こってくると思っています。審議会ではそのことも当然想定しながら検討していただきました」
――すでに”マグマの形”で現われており、3年くらいで起きる構造変化にどう対応していくのでしょうか。
「まずは自らの組織改革です。それは、全国本部はもちろん47都道府県も含めた、将来のJA共済事業に耐えうるような抜本的な組織改革を実施することです」
――もう少し具体的にいうと…
「全国本部の場合は、各部門が限りなく細分化され縦割りになっていますので、これを抜本的に変えなければいけないと考えています。そして現在の都道府県本部の体制も検討課題です。事業推進は都道府県本部単位で進めますが、仕事によっては県域を越えて統合する方がよいものもあるかもしれません」
「全国統合して11年になりますが、内部の改革をまずやらなければ、次の事業展開に取り掛かることはできません。ですから、この組織改革を早くやりたいと考えています」
◆将来を見据えた自らの組織改革が最大の課題
――まず自らの組織改革を実施しないと、事業基盤の構造変化に対応した事業展開を構築することができないということですね。
「いまのままでいけば、少子高齢化や構造変化によって“縮小スパイラル”の道しかありません。そのときに組織はいまのままでやっていけるのか、ということです」
「そして“縮小スパイラル”への対応だけではだめで、当然、将来の事業の維持・拡大をも見据えた展開を描いていく必要があります」
――そうすると25年度からの次期3か年計画ではそのことが中心的な課題になるわけですか。
「次期3か年計画ではまず、連合会の組織体制の抜本的な見直しです。それと同時並行的に、将来の事業の維持・拡大をも見据えた事業展開の構築が課題としてあると思います」
「そのことが、20年、30年という長期にわたる契約をしていただいている組合員・契約者に、何があってもきちんと応えていくJA共済の使命です」
「繰り返しになりますが、将来を見据えた自らの組織改革をなんとしてでもやり遂げなければ、前にでることができませんので、ここが大きなターニングポイントだと考えています」
◆厳しい環境下で目標達成したJAに敬意
――最後になりますが、23年度のJA共済優績組合表彰が5月17日に開催され、本紙もその会場で配布されますが、表彰組合をはじめとする全国のJAの役職員のみなさんへメッセージをお願いいたします。
「まず、東日本大震災、福島の東電原発事故、さらに台風や雪害などの自然災害が多発するなど厳しい事業環境、推進環境のなかで、23年度の事業目標を達成していただいたことに、感謝を申し上げます。そしてそれは大賞3JAを含めて表彰される500余のJAはもちろんですが、残念ながらそこに届かなかったJAにおいても、さまざまにご尽力いただいた結果であり、改めて心から敬意を表します」
「事業を推進してこられた全国のLAやJA職員のみなさんには、東日本大震災への対応や9000億円の共済金支払を自前でやりとげたJA共済について、胸を張って、自信をもって、これからも推進していただきたいと思います」
――今日は貴重なお話をありがとうございました。