特集

平成23年度JA共済優績組合表彰特集

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【地域貢献活動】正しい交通ルールを学び自転車交通事故を防止する

・幼稚園児から高齢者まで交通ルールを啓発
・ラッピングバスで交通安全を訴える
・自転車事故の4割を占める若年者層
・自転車の安全利用は「しゃちほこあんこ」
・DVDとスタントマンで事故をリアルに再現
・これからも期待されるJA共済の地域貢献活動

 JA共済は「ひと・いえ・くるま」の万が一の保障という本来の共済事業だけではなく、交通事故対策活動、健康管理・増進活動、高齢者・身障者福祉活動、災害救援活動、環境保全活動さらに書道や交通安全ポスターコンクールなどの文化支援活動など、地域社会に貢献する諸活動を実施してきている。それは全国レベルで実施されるものから、県単位・JAや地域単位で実施されるものまで多岐にわたっている。
 そうしたなかから今回は交通事故対策活動について、近年社会問題化しつつある自転車事故を防止するための交通安全教育支援を中心に紹介する。

相互扶助のJA共済だからできる地域社会への貢献


◆幼稚園児から高齢者まで交通ルールを啓発

 交通事故対策活動には、交通事故を「未然に防止」するための活動と、不幸にして交通事故に遭われた人の「社会復帰を支援」する活動がある。
 交通事故を未然に防止する活動としては、交通事故弱者である幼児向けの対策と、最近交通事故が増加している高齢者向けの対策がある。そして、自動車に比べて交通マナーが「10年遅れている」といわれている自転車事故、とくに中・高校生を中心とした若者への「交通安全教育支援」にJA共済は力をいれている。
 幼児向けは、16年度から全国各地で上演され、子どもたちと保護者がひとつになって、楽しみながら交通ルールを学べる「親と子の交通安全ミュージカル『魔法園児 マモルワタル』」がある。23年度は33都道府県で38回上演され2万5000人弱の園児や保護者が参加した。16年度の初演からみれば延べ290回上演され、18万5000人以上が参加したことになる。
 増加する高齢者の交通事故をなくすために17年度から実施しているのが、JA共済オリジナルの「交通安全落語」や「交通安全レインボー体操」を組み合わせ、笑いながら楽しく交通ルールを学んでいる「交通安全教室」(高齢者向け)だ。23年度は38都道府県で347回開催され約3万9000人が参加した。17年度からの累計では1306回開催され、延べ18万人近い人たちが参加したことになる。


◆ラッピングバスで交通安全を訴える

 また、最近増加傾向にある高齢者ドライバーの交通事故を防止するために、20年度からドライビングシュミレーター搭載車両「きずな号」を全国7カ所に配置し、巡回型の安全運転診断を行っている。
 ここでは、過去の事例を参考に、事故を起こしやすい場面を再現したドライビングシュミレーターを使い、約5分間講習し、交通安全のアドバイスを行っている。
 そのほか、地域の人たちが安心してくらせるように、JA共済では警察などと連携した交通事故対策の支援活動も行ってきている。
 その一つが、21年度から実施している交通安全を呼びかける文字などのデザインを路線バス・路面電車の車体に施した「交通安全ラッピングバス事業」の支援だ。23年度は43都道府県の136台で実施された。


◆自転車事故の4割を占める若年者層

 そして、後述するように未成年者の事故が多く、学校現場での指導が求められている自転車事故を防ぐための中・高校生向け「自転車交通安全教育」事業の支援に近年は力を入れている。
 図1は、警察庁が今年2月に公表した「平成23年中の交通事故の発生状況」(2月23日修正版)から本紙が作成したものだが、23年(1月〜12月)に発生した「自転車乗用中の交通事故」は14万4018件にのぼっている。事故件数は17年をピークに減少傾向にあるが、自転車を含めた交通事故の発生件数が13年の約95万件から23年は69万1937件へと3割近く減っていることもあって、交通事故全体に占める自転車事故の割合は20%強と10年前の「1.13倍と高い水準になっている」と警察庁の前掲書では分析している。
 図2は23年の「自転車乗用中の年齢別負傷者数」を見たもの(前掲書データから本紙が作成)だが、16歳から24歳の「若者」が22%と最も多く、次いで15歳以下の「子ども」が18.3%となっており、この2つの年齢層で4割を超えている。次いで65歳以上の「高齢者」が17%となっている。

自転車関連交通事故推移

自転車乗用中の年齢別死傷者数


◆自転車の安全利用は「しゃちほこあんこ」

 自転車事故の増大傾向を受けて20年6月の道路交通法改正では、自転車の交通ルールが大幅に見直された。この改正内容を周知徹底し、安全運転への意識を高めるために、警察庁や都道府県警察は「自転車はどっちのなかま? 自転車はくるまのなかまですから」と、分りやすく「自転車安全利用五則」を解説したリーフレットを作成するなどのアピールを実施している。
 JA共済ではこの五則に表のように「しゃちほこあんこ」というニックネームを付け、自転車の安全利用を訴えている。
 しかし、前記のデータでもわかるように、圧倒的に未成年者の事故が多いことから、学校現場での指導が求められているといえる。
 未成年者であっても事故の責任が自転車運転者側にあれば損害賠償責任が問われることにもなるため、JA共済では21年6月に「被害者になったときの痛み」と「加害者としての責任」という2つの視点から交通ルールの大切さを考える「自転車交通安全教育DVD」を制作し、23年度は約2万枚、これまでに全国の中学・高校に約6万枚を配布した。
 また通学に自転車を使い始めるだろう中学1年生を対象に「自転車交通安全ブック」も制作し23年度は約126万部を、21年度からの累計では約385万部配布している。

自転車の安全利用は「しゃちほこあんこ」


◆DVDとスタントマンで事故をリアルに再現

スタントマンが事故をリアルに再現 このDVDでは、自転車事故のリアルな再現映像や、実際に未成年者が自転車事故の加害者となり高額な損害賠償が発生した事例などをドラマ仕立てで紹介。学校のホームルームで活用され、「事故を起こしたら被害者の人生をめちゃくちゃにしてしまうだけでなく、自分と家族にも大変な迷惑をかけてしまうと改めて思った」など、自転車交通安全に対する意識を高めている。
 さらに21年夏からはこのDVDに加えて、スタントマンが生徒たちの目の前で、危険な自転車走行に伴う交通事故場面を再現(写真)し、生徒が事故の危険性を疑似体験する(スケアード・ストレイト教育技法)「自転車交通安全教室」を全国で開催している。
 目の前で再現される事故の迫力は相当なもので、交通安全意識を高める効果は大きく、「誤った自転車の運転をすると加害者にもなり、大きな責任が生じることを知った」「とてもリアルで、事故の恐ろしさを身をもって体験した」「傘差し、二人乗りなど軽い気持ちで行う行為が事故につながることを思い知った」など。交通ルールを守ることの大切さを改めて認識したという多数の感想が寄せられている。
 しかし、スタントマンが学校を訪ねて実演するため、数多くは実施できないが、23年度は43都道府県で99回実施され5万5000名、21年度からの累計では250回延べ12万人を超える生徒が参加している。JA共済連では、全国各地の要望を聞きながら、できるだけ多くの地域で実現していきたいと考えている。

(写真)
スタントマンが事故をリアルに再現


◆これからも期待されるJA共済の地域貢献活動

 このように、JA共済では、幼稚園児、中学1年生、そして中学・高校生を対象にした交通安全教育に積極的に取り組むと同時に、地域の人たちへの交通安全の働きかけを行い、さらに高齢者を対象にしたものまで、全世代を対象に交通事故の未然防止と安全な環境づくりに取り組んでいる。
 さらに交通事故被害者の社会復帰を支援する活動としては、「介助犬」の育成・普及支援にも積極的にとりくんでいる。
 また中伊豆(静岡県)と別府(大分県)には、病院・福祉施設・介護施設の3つの機能を持つ全国でも数少ない総合型リハビリテーションセンターを開設し、交通事故被害者などの社会復帰を長年にわたって支援している。
 こうしたことは、相互扶助精神に基づいた協同組合であるJA共済ならではの取組みであり、今後も継続した活動が地域から期待されていることは間違いないことだ。

(2012.05.21)