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第26回JA全国大会特集 「地域と命と暮らしを守るために 次代へつなぐ協同を」
人づくり・組織づくり・地域づくり

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【人づくり・組織づくり・地域づくり】 人づくり最前線―JA島根ユースカレッジ  次代へつなぐ協同を創る人材を育成

・地元で仕事をしたいとJAを選択
・協同組合理念の空洞化、意識の希薄化
・JAの使命など考える集中的研修が必要
・新入職員は「総務部付」とし3カ月間研修に参加
・泥まみれになり農業を体験する

 「次代へつなぐ協同―協同組合の力で農業・地域を豊かに」。第26回JA全国大会のメインテーマだ。それを実現するためにいくつかの課題が設定されている。それらの課題を実行し豊かな農業、豊かな地域を実現するのは「人の力」だといえる。そういう人材をいかに育成するか、これがいまJAグループに問われている最大の課題だともいえる。
 JAグループ島根では、県中央会を中心に、新入職員から5年目を迎えるJAグループの中堅職員を対象にした「JA島根ユースカレッジ」を実施している。このユースカレッジの新入職員課程では、3カ月間、県内の新入職員全員が一堂に集められ集中的な教育研修が行われている。
 そこで現地を訪れ、この研修に参加した新入職員やJAに取材するとともに、萬代宣雄JA島根中央会会長に、職員教育に関する考え方を聞いた。

農業体験などで農協人の基本を学ぶ

県内の全新入職員を一斉に研修


◆地元で仕事をしたいとJAを選択

JAくにびき・岩成周平さん 「3カ月は長いなと最初は思っていましたけど、意外と早かったです」というのは、JAくにびきの新入職員・岩成周平さん。
 岩成さんは県内の高校から県外の4年制大学に入学、卒業後は横浜の流通関係の会社に就職するが、その仕事に疑問を感じ、目標をもって仕事をしたいと考えるようになる。島根の実家では両親は一般企業に勤める会社員だが、祖父と祖母が水稲や花きを生産している。しかし、その周辺では農業をやめる人もいて、遊休農地になっているところもある。
 「先祖からの田んぼをそういう状態にはしたくない」という思いと、地元をもっと活気ある地域にしたいと考え、島根に帰ることにしたという。
 そして地元のJAくにびきに就職したが、JAを選択したのは「一般企業とは違う組織」だと感じていたからだ。そして今年の4月からの3カ月間「JA島根ユースカレッジ『新入職員課程』」で県内JAグループの新入職員と一緒に協同組合や農協、そして農協の実務だけではなく実際に農家に通う農業体験などを通じて、農協職員の基本を学んできた。
JAいずも・野津翔矢さん 岩成さんと一緒に「新入職員課程」を学んだJAいずもの野津翔矢さんは、地元の商業高校卒業後にJAいずもに入組するがJAから勧められて茨城県の鯉渕学園に入学し、そこを卒業して今年の4月からJAいずもに帰ってきた。
 野津さんがJAを選択したのは、地元で仕事をしたかったことと「地域に貢献しているのはJAだ」と思っていたからだという。
 鯉渕学園の2年間があったので野津さんは「早く現場で働きたい」と思っていたためこの3カ月が「長かった」という。そしてカリキュラムのなかでは「マナー」とか「社会人基礎力」などで「人としてこうあるべき」ことを教えてもらったことや「事業推進の心を創る」という講座が、いままで教えてもらったことがない内容で「よかった」という。
 岩成さんは「協同組合や農協の基本的なことを学べてよかった」ことと、「農協に勤めることになっても、営業的な仕事をしたい人や営農関係をめざすなど、各人がいろいろな目標をもっていることが分かり、横のつながりもできた」ことが良かったという。

(写真)
上:JAくにびき・岩成周平さん
下:JAいずも・野津翔矢さん


◆協同組合理念の空洞化、意識の希薄化

 岩成さんや野津さんが3カ月間集中的に学んだ「JA島根ユースカレッジ『新入職員課程』」とはどういうものなのか、JA島根中央会教育研修部の多久和宏部長と岩田至正次長に聞いた。
 平成23年3月に県中央会の萬代宣雄会長が▽望ましい職員教育研修体系の在り方▽新人職員に対する教育研修体系・内容について、「JAグループ島根職員教育研修検討委員会」(以下、委員会)に諮問。県内JAの役員と島根大学の教授や県自治研修所長、JA全中教育部教育企画課長らで構成された委員会が23年10月に24年度から新人教育研修を実施すべきという答申をまとめる。
 「答申」では委員会の問題意識として次の5点を指摘した。
[1]協同組合の理念と日常業務の乖離からくる理念の空洞化
[2]職員の協同組合意識の希薄化
[3]農業を知らない職員の増加による農業問題への関心の低下
[4]いわゆる「お客様」対応による組合員の参加参画、帰属意識の喪失を助長
[5]組織(JA)に甘えている職員、心が弱い職員の増加による目標達成・改善意欲の低下
 これらの指摘は、全国の多くのJAの共通した問題だともいえる。


◆JAの使命など考える集中的研修が必要

 委員会では「望ましい職員研修体系のあり方」を検討する場合の「新人〜管理職層」共通の課題として、
[1]協同組合の特質を考え行動する場面が少ない。
[2]管理者(課長、支所長等)に、繰り返し協同組合の本質を考える機会が必要である。
[3]店舗などで組合員・利用者を「お客様」という感覚になるのはやむを得ないところがあるが、現実と教育(協同組合)理念での乖離が感じられ、その溝を埋めることが必要である。
[4]自分が入った職場は、何のためにそもそもできたのか、どういう組織なのかをきちんと理解させることが必要で、最初に一定期間、集中的に研修が必要。
[5]JAの使命や地域社会からの期待を考える研修内容が必要。そのことが組合員・利用者の声を真摯に聴くことにつながる。
をあげ、その対応方向として、
[1]協同組合意識の希薄化を防ぐには、採用時から「協同組合とは」「JAとは」など理念や仕組みなどをしっかり教えるとともに、管理者・監督者層にも「使命とは」等を考える機会を充実する。
[2]協同組合はその特質から人的結合体とともに、事業(経営)体であるので、組合員・利用者の立場に立った事業推進(営業)の心を養い、組合員・利用者の満足度を高める力を新入職員の時から養成する。
など6点を提示。
 そのうえで「新入職員から入組5年目までの段階的成長をフォローする一貫した研修を実施し、長期視点にたって人材を育成する」とした。
 そして重要なことは階層別研修を細分化して実施しているところもあるが「受講対象者全員が受講」し、そこで得た知識内容が「職場の中で共通理解となって連鎖していく」ことだと指摘。さらに近年少なくなってきた「営農部門の人材育成を拡充する必要がある」とした。


◆新入職員は「総務部付」とし3カ月間研修に参加

苗運び作業する新入職員(ライスフィールド(有)で) 新入職員研修から入組5年目(中堅職員)研修までを「JA島根ユースカレッジ」として位置づけ、体系的・計画的に研修を実施するよう提案した。
 「新入職員課程」では、各JAでは新入職員を6月までは各部署に配属せず、「総務部付」とし、この研修に参加させる。そして4月から6月末までの3カ月間、土日休日を除いて毎日この研修に参加することが義務づけられる。カリキュラムが組まれているのは、実質63日(24年度の場合)で、全員(今年は54名)による合宿が31日間、農家実習が12日間(2回に分け実施)、残りの20日間は自宅からの通講研修(県内2会場)となっている。
 合宿研修では、協同組合やJAの理念や原則、信用、共済、営農・経済事業の基礎(総論)、マナーや社会人基礎力や配属前(7月からJAの現場に配属されるので該当部門の)研修などが、通講研修では簿記や島根県農業農村論やメンタルヘルスなどとなっている。

(写真)
苗運び作業する新入職員(ライスフィールド(有)で)


◆泥まみれになり農業を体験する

 農業実習は所属JAの組合員である農家での実習となる。岩成さんは最初は農業法人でWCS用田んぼの畔づくりで「泥まみれ」になった。そして6月の第2回目は夫婦で素牛を生産する農家だった。「頭では生き物を扱う畜産は大変だろうと思っていたが、実際に体験してみて本当に大変だということが実感できた」という。
JAいずも・ぶどう部会 安達富治部会長 野津さんは最初はハウス9棟でアスパラを栽培する農家(個人)で収穫や草取りを体験。2回目は、JAいずものぶどう部会長である安達富治さんのところで、朝は収穫の手伝いをし、その後は出荷のための選別作業はできないので「ひたすら出荷用の箱作り」をする。
 安達さんは「出荷用の箱作りも大切な仕事で、一所懸命に作ってくれて助かった」という。
 いずれにしても、JAに入ってすぐに農業の現場に入り農業を体験したその経験は長く彼らの心に残るのではないだろうか。
 JAいずもでは安達さんたちがまだ若かった30年くらい前に「われわれ生産者のことをよく知ってもらいたい」と「職員の農業体験を提案」し実施してきている。JAの職員が農業体験をすることは営農を知るだけではなく「農家の家庭に入るから、農家の実情が分かる」し「その家の雰囲気をつかむことができる」ので、「金融の担当者にとってもプラス」になると安達さんはいう。
 安達さんはこれからも収穫時など「タイミングがよければ職員の農業体験を受け入れる」という。豊かに実った農作物を収穫するときは農家も嬉しい。「農業はつらいこともあるけれど楽しいこともたくさんあることを分かるJA職員になってほしいからね」と笑顔で応えてくれた。

(写真)
JAいずも・ぶどう部会 安達富治部会長


◆3年目、5年目の職員研修も実施

メロンの芽かぎ作業を体験(農事組合法人すがや) 3カ月の研修が終了した新入職員はそれぞれのJAで現場に配属される。岩成さんはJAくにびきの法吉支店の窓口担当者に、野津さんはJAいずもの営農部生産資材課に配属され、それぞれの職場で現在奮闘中だ。
 3年目の職員は「中堅職員?課程」として、JA全中が開発した全国統一のJA職員階層別マネジメント研修「初級職員コース」によって実施される。今年は7月に開催(原則合宿)され56名が参加した。
 5年目の職員については「中堅職員2課程」としてJA全中が開発したJA職員階層別マネジメント研修「中堅職員コース」で実施。今年は11月に合宿方式で開催される予定になっており対象者は70名程度だ。
 実際に新入職員を3カ月も送り出すJAはどう考えているのだろうか。

(写真)
メロンの芽かぎ作業を体験(農事組合法人すがや)


◆今後も継続していくことを確認

JAくにびき・曳野淳人事課長 今年7名の新入職員を採用したJAくにびきの曳野淳総務部人事課長は、かつては農協学校もあり職員育成をされていた。それが閉校になってからは「教育がやや疎かになっていたことは否めない」が、今年は「県内の同世代が集まって活気ある研修だった」と評価する。
 とくに協同組合や農協の理念を学んだことと、現場に配属されてからの「推進の目的や考え方など、根底のものを学んだ」ことで、「心の支え」ができたのではないかという。
JAいずも・遊木雅子人事課長 萬代会長のおひざ元でもあるJAいずもの遊木雅子企画総務部人事課長は、今年は9名の採用だったが、例年は20名前後採用しており25年度は例年並みとなり「人数が増えるのでそれにきちんと対応してほしい」という要望をすでに伝えてあると前置きしたうえで、研修内容に「不満はない」という。そのうえで「3カ月の研修を終えてJAに帰ってきた時にすぐに業務ができるような速効性」があればという。
 そして、農業体験で生産者の生の声を聞いたり、実際に生産活動を経験したことは大きいと評価する。
 この9月の半ばに、JAの担当部課長が集まり、今年の「新入職員課程」についての会議を行った。今回が初めてのことで、評価をしにくい点はあるが、今後も「期待できる」ので、必要な修正を加えながら「このフレームで実施」していくことで合意された。

(写真)
上:JAくにびき・曳野淳人事課長
下:JAいずも・遊木雅子人事課長


◆夢を忘れずに一歩でも近づく努力を

 島根県の場合、県外の大学に進学しても「地域や地域の人たちとのよりよい関係で仕事をしたい」と考え、島根に帰ってくる人が多く、「どこで職を得るか」と考えるときに「JAにシンパシーを感じる」若者がけっこういると多久和部長は分析する。
 そのため県内出身者が多いという。ただし、「農家の子弟は24年度採用の54名のうち2割以下」だと岩田次長はいう。だからこそ、協同組合や農協さらに農業の基本的なことをしっかり学んでもらう必要があるのだとも。
 岩成さんと野津さんに将来の夢を聞いてみた。
 岩成さんは「松江市内で、農協の岩成さんだと声をかけられる職員になりたい」という。そしていま祖父と祖母が守っている田んぼを守り地域のために何かできたらいいと語ってくれた。
 野津さんは、「地元が過疎なので、遊休農地などを活用して農業をしたい」と考えている。
 多久和部長の話によると、地元にしっかり足をおろし、地域のために何かをしたいと考えている若い職員が多いという。
 JAいずもの安達ぶどう部会長は、JAの若い職員に「農協に入った時の夢を忘れず、一歩でもそれに近づく努力をしてほしい」のだと取材の最後に語ってくれた。
 人づくり・人材育成の重要性はすでに語りつくされていると思う。それをどう具体的に実施するかがいま問われているといえる。島根県では、JAグループが一つになって文字通り「協同の力」で、このことに取組んでいるといえる。
 教育は必ずしも速効性や即効性があるわけではない。だが、今取組まなければ、萬代会長が語ってくれたように「農協にとって非常に大きな財産である人材」を育てることはできない。そういう意味でも今回のJA全国大会を機に、教育について各地域で真剣な議論がなされ、実行されることが期待されているのではないだろうか。

 

◇     ◇

 

萬代宣雄・島根県農業協同組合中央会会長に聞く


人材こそが農協の財産
―将来を見据えたトップの意識が大事―


◆教育はトップが強い意識をもってやりきる

萬代宣雄・島根県農業協同組合中央会会長 ―島根県JAグループの新入職員を一堂に集め集中的に教育することにした意義はなんですか。
 教育については、トップが強い意志で現場を説得しないと難しいです。トップがどれだけ意識をもって多少の犠牲があっても、将来のことを考えやりきるかにかかっています。ありがたいことに島根の場合、11JAありますが、教育に対する思いに強いものがあって、全県での統一した取組みが実現しました。
 島根県は「1県1JA」構想があるのでできたという見方もありますが、私は「統合は統合」「教育は教育」だと考えています。全県の新入職員を一堂に集めて集中的に教育する意味は「全体のレベルをあげなければいけない」という思いが強いからです。


◆農協とはどういう組織かを理解することから

 最近の若い人は、一般の金融機関や株式会社を受けるような気持で、1職場として農協を選択してきますので、一般の金融機関や企業と組織的に農協は違うものであり、農業協同組合という組織の基本は組合員であり、その組合員のために働くんだという事がまったく分かっていません。
 また、最近は非農家の子弟が多いだけではなく、農家の子弟でも良くてせいぜい1〜2回田んぼに入ったことがあるという程度で、農業についてほとんど知りません。今の時代それが普通です。
 しかし、農協で組合員のために生涯をかけて働いてもらうわけですから、入組をしたときにきちんと教育をし、農協とはこういうものだと理解をして労働意欲を出して働いてもらう必要性を感じていました。初めにきちんと教育をしていないから、組合員とうまくいかなかったり、自分の仕事に自信がなくなり疑心暗鬼になったりするのではないかと思います。
 もう一つ大事なことは、現在の農協は、信用・共済事業を含めた総合経営であり、そのことで財政的に成り立っている部分がありますが、農協という組織は本来は営農経済事業のための組織であって、信用・共済のためにあるわけではないということを分かってもらわないといけません。営農経済事業があって初めて信用・共済事業も成り立つという基本をきちんと理解してもらうことです。


◆ロッチデールの時代から教育は協同組合の原則

 ―検討委員会の答申では「協同組合理念の空洞化」とか「協同組合意識の希薄化」とか「農業問題への関心の低下」が指摘されていますが…
 島根県にも平成14年度までは農協学校があって新入職員教育を行っていましたが、財政的な事情で閉校されました。私は財政が厳しくなればなるほど、逆に教育を徹底して行わなければ、競合する企業に負け、「墓穴を掘る」ことになると思います。
 農協にとっては技術なども必要ですが、人材は非常に大きな財産です。だから教育にかける費用は、企業でいえば「開発費」です。例えばトヨタは5000億円とか7000億円とかを開発費として先行投資していますが、農協は教育費として人材育成に投資し、協同組合とは何か、農協とは誰のための組織か。さらに農協の組合員とは何をしている人たちなのか。農業といっても水稲や果樹・園芸など耕種部門だけではなく畜産があり、いろいろな形態があることを知り、その状況を分かって職員としての任務を全うしてもらう。そういうことが分かっている職員とそうでない職員では、いろいろな局面での対応が変わってきます。
 世界的な協同組合の先駆的組織であるロッチデール公正先駆者組合の7つの原則では「教育の推進」が謳われ、組合員の社会的・知的な向上を目的に、四半期ごとの剰余金の2.5%が教育費とされています。そしてこのロッチデール原則は1937年の国際協同組合同盟パリ大会で公式なものとなり()、「教育活動促進の原則」が協同組合の要件として認められました。
 つまり、協同組合が誕生した時から教育には力をいれなければいけないと考えられていたわけです。その精神を現世の農協人が重く受け止め、分かってもらわないといけないと思います。


◆社会人の一般常識を身に付け高めることも

 ―カリキュラムを見ると「マナー」とか「社会人基礎力」という講座がありますね。
 大変に残念な話ですが、最近の若い人は方程式を解いたり、難しい問題を解く能力はあるかもしれませんが、挨拶のしかたとか、話し方など道徳とかマナーなど人間としての一般常識が希薄ではないかと思います。
 組合員から苦情がある大半は職員の対応についてです。技術的なこととかはほんの一部です。まず人としての常識的なことをマスターし、一般常識の当り前のレベルを高めてくれれば苦情は大幅に減ります。
 もう一つ大事なことは、人間関係です。その基本は、年上の人や上司を尊敬し、職場で仲良く、しかし厳しく仕事をする環境をつくることです。
 教育で社会人としての常識のレベルを上げることと、職場での人間関係をつくることを意識的に指導者が考えるだけではなく、県全体で取組んでいこうというのが「JA島根ユースカレッジ」の基本的な考え方です。
 そして世の中が厳しくなっているなかで競合他社に負けないような努力を続けていかなければいけないという危機感をもってもらうような意識改革が必要だということです。そうでないと農協は競合他社に押されていく危険性をはらんでいると私は思います。


◆抵抗のない改革はあり得ない

 ―組合員の意識改革も必要ではないですか。
 「我らの農協」といいながら、自分の農協という意識は希薄になっています。JAいずもの組合長になって、そのことは痛感しました。他所と条件が一緒だったら農協を利用しようと最低線思ってもらわないと困ると話し、「我らの農協」という思いを確認し行動に表してほしいと話しましたが、難しいです。
 営農指導の費用は組合員の賦課金でまかなうのは当然と考え賦課金をあげましたし、販売手数料と販売経費を計算すると大きなマイナスが出ていたので販売手数料を上げました。いずれも大きな抵抗がありましたが、きちんと理論武装して、分かってもらえるよう努力をしました。理解をしてもらえなければ農協から離れていきます。これは組合員の意識改革です。こうした問題は、いえば必ず抵抗があります。しかし、「抵抗がない改革はあり得ない」ので、抵抗があるほど改革だと考えてきました。
 職員だけではなくトップも含めて、あらゆる面で全体のレベルを高めていかなければいけないと思います。そういう意味で私は職員の皆さんに、今までの仕事の流れはきちんとやったうえで、何か一つは「俺はこういう事をやった」と自慢出来ることを必ずやるようにいっています。それが改革の第一歩ではないでしょうか。

※ロッチデール原則
 ロッチデール公正先駆者組合では組合員が討論を重ね、定款が改正されていった。運営の経験からは、後にロッチデール原則として知られることになる、いくつかの原則が導き出され、協同組合を運営する手本とされた。1937年の国際協同組合同盟パリ大会で公式なものとなり、以下の7つが国際協同組合運動の原則として、協同組合の要件とされた。
1.公開の原則
2.民主的運営の原則(一人一票制)
3.利用高比例割戻の原則
4.出資金利子制限の原則
5.政治的・宗教的中立の原則
6.現金取引の原則
7.教育活動促進の原則
(フリー百科事典「ウィキペディア」より)

(2012.10.04)