◆被災者支援には拠点が重要―阪神淡路大震災から学ぶ
3月11日の震災発生後、いわて生協や山形共立社など13生協で組織された北海道・東北の農産品集荷合同会社コ・ジャスナを通じる物資支援の取り組みをただちに始めました。発生1カ月間は東北の生協からの要請で緊急物資支援として水、食品、燃料等を届けました。現地要望と合致していない手探りの物資支援であり、被災地状況の把握が必須でした。
幸いにも4月中旬には岩手県遠野市に社会福祉協議会を中心に市民を加えてボランティアセンター「遠野まごころネット」が立ち上がります。
パルコープは、産直米で取引きのあったJAいわて花巻の協力でこの組織に登録し、「遠野まごころネット募金」を始めます。
パルコープには、阪神淡路大震災被災者の復興支援で、全国からの支援の受入れ拠点となった経験がありました。コープさっぽろやみやぎ生協をはじめ、主として東日本の生協から派遣されたボランティアに配送センターを宿泊施設に提供したのです。
この経験で、被災者支援には拠点が重要だということをパルコープのトップが理解していたことが、「遠野まごころネット」への登録につながったようです。1名の職員を現地駐在員として現在も派遣しています。
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仮設住宅への物質配達
◆支援物資届けるトラックと運転手を派遣
物資支援では、仮設住宅で不自由している台所用品を届けようと、6月には未使用の台所用品の提供を組合員によびかけ、多くの組合員・職員が箱詰めのボランティアに参加し、2カ月でダンボール3000箱を超える「台所用品」が遠野に送られました。
ところが被災地では大型避難所には支援物資が行き渡りますが、孤立した被災者の小規模避難場所には車・人がないため、支援物資が届かない状況がありました。
そこで、5月21日以降、この遠野まごころネットに2台(計4台うち2台は九州のグリーンコープが提供)のトラックと、週約10名の運転者を1週間交代で派遣しました。
いずれも配送センター、店舗以外の職員が有給休暇をとって、遠野コミュニティセンターに、冬季には大船渡市の県立福祉施設に宿泊しながら、被害の大きかった陸前高田市と大槌町の被災者に全国から寄せられた支援物資を届けました。
支援物資を配達しながら、小規模避難所の「住民記録」を4000家族分も作成し、きめ細かな支援に役立てることができました。この活動には、よどがわ生協とならコープの職員も加わり、今年3月初めまでのほぼ10カ月にわたって延べ400名もの派遣になりました。
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台所セットのお届け
◆中学生も参加した岩手ボランティアバス
今年4月末からは、組合員にも支援活動の機会を広げようと「岩手ボランティアバス」が始まりました。
これも3生協(パル・よどがわ・なら)の合同企画で、定員60名が、大型バス2台で金曜夕に出発し車中泊、2日目の午前中に岩手県に到着し、3日目の午前までボランティア活動、午後は被災地を視察し、また車中泊で4日目の月曜朝に帰着するというものです。中学生以上の参加で、参加費8700円(ボランティア保険・宿泊費・食事代など)。3生協で一台50万円のバス代を負担しています。
親子での参加も少なくありません。中学生の子どもだけの参加もありました。年間17回の企画で、組合員に配布される機関紙「ぱるタイム」での参加者募集です。
これは被災地でのボランティア活動も物資中心の支援から、運動場のがれき撤去作業、サッカー場の芝生張り、ジャガイモ植付けなど、さらには将来を悲観し、ひきこもりがちな被災者の心のケアを含む活動が求められているなかでの活動です。
(TVや新聞で聞いていたが)「直接自分の目で見てこれほどの被害だったことに驚いた。また来て少しでも役に立ちたい」との参加者の感想が寄せられています。
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組合員ボランティアバスでの活動
◆支えあう協同組合がやらないわけにはいかない
理事のほぼ全員が被災地に入り、職場からは職員が休日を利用して自主的に被災地に入る、それは結果的に、職場を支える生協職員にも貴重な学びになっています。
また、すでに4回開催された「ボランティア参加者集会」では、岩手のボランティア活動に参加した職員が、協同組合のすばらしさ、パルコープの職員であることの誇りを語っています。
「支えあう組織である協同組合として、できることをやる」
「しっかりした事業・経営力と継続的な支援を両立させる」
というトップの明確な考えがパルコープの被災地支援の取り組みを支えています。
(愛媛大学教授 村田 武)
※高野常務の「高」の字は正式には旧字体です。