ダイナミックな事業展開に期待高まる
国際的な協同組合間提携の力を発揮
飼料原料の購買機能強化のための柱の第一は米国での集荷基盤の拡大である。
JA全農は1979年設立の子会社、全農グレインと米国中西部を基点とする穀物集荷会社のCGB社を子会社とすることで米国からの穀物集荷から保管流通、輸出までの一貫体制を構築している。
23年度にはCGB社の集荷エリア拡大と保管能力の増強を図るため、ミシシッピ川の上流に位置する8基の集荷施設を買収した。これで保管能力は390万t水準に増強され保管能力は全米7位となっている。
米国のいわゆるコーンベルト地帯は日本列島が2つ並ぶほどの広さで当然、気候も違う。このため天候のリスクが高まっていることから集荷施設を広く拡大して確保することで安定供給を図ろうということだ。また、冬に凍結したり水位が低下する河川もあり物流が混乱する可能性もある。そうした事態でもバックアップ機能を発揮できる体制づくりの意味もある。
この取り組みに加えて西海岸で穀物を調達するため、約30万人の組合員を組織している全米最大の農協連合会、CHSと23年度に事業提携をした。これによってニューオリンズからのみならず西海岸からの輸送も実現している。
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左から全農グレイン ペガサス号、コープ・フェニックス号、全農グレイン マグノリア号
◆産地多元化は国際的な協同組合間の提携で実現
米国からの調達だけではなく、産地多元化の取り組みも加速させてきた。
アルゼンチンのACA農協連合会とは1964年に国際農協間長期穀物取引協定を締結。飼料穀物と油糧種子の優先取引を行ってきており、11月には49年目の年次協定の調印が行われた。取引量はトウモロコシ、マイロを中心に年間約30万tになる。
このACA農協連合会とは2011年度に香港に合弁会社(全農ACA)を設立した。これは中国をはじめとするアジアへの供給を全農グレインとACAが協力して拡大しようというものだが、全農にとってはアルゼンチンからの調達の安定化につながるし、ACAにとっては販路の拡大にもなる。それはまた全農グレインとACA農協連合会の輸出施設の稼働率を向上させて中国など成長市場に北半球のみならず南半球からも穀物を通年供給することにもなる。
国際的な農協間提携としてはほかにも全農は米国西海岸の提携先であるCHSがウクライナに集出荷施設を設置したことに着目した。これは米国が不作でCHSの組合員農家の穀物が供給できなくなってもウクライナから調達し取引先の安定供給のニーズに応えるというCHSの産地多元化の取り組みといえるが、これによってCHSと提携している全農はウクライナからの調達も行うことができるようになった。
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アルゼンチンACA農協連合会との提携は49周年になる。中央右はACAのベルトーネ事業本部長、左は全農の小原良教常務
海外ネットワークの拡大で
飼料原料の安定調達をめざす
◆多様な原料の調達にも努力
このような国際的な協同組合間提携は豪州との間でも結んでいる。目的は養牛飼料に重要な原料である大麦を調達するため。大麦の生産量は他作物への作付け転換が進み世界的に減少傾向にあり、またサウジアラビアなどが大麦輸入量のシェアを拡大、日本のシェアが縮小し、いかに大麦を安定確保するかも課題となっている。
そこでこうした課題を解決するために豪州西部のCBH農協と提携し優先取引を実現している。CBH農協との取引は41年目となる。
ただ、豪州に限ったことではないが、大麦の調達の際には産地からは同一生産者が生産する小麦の購入も合わせて求められるようになっている。これによって小麦と大麦、その他の原料の積み合わせによる物流コストの低減も実現できるほか、さらに飼料用小麦の確保につながるという面もある。
そこで小麦の取り扱いでは製粉メーカーとの関係強化も同時に進め、それと連動させてふすまの安定供給を確保する方針だ。また、製粉メーカーとの関係強化によって国産麦の利用拡大を図ることも検討されている。
◆世界に広がる調達先
このほかにも今後の穀物生産の拡大が見込まれているブラジルの農協・生産者組織及びヨーロッパの大手農協連合会との取引の検討が始まっている。またカナダの集荷輸出機能を有する組織との連携も強めていく。
このように全農の海外ネットワークは各国の農協及び生産者組織との提携で広がってきており、各国とも組合員農家の農業生産を守り発展させるという点でめざす方向は同じ。世界の協同組合や生産者組織とのネットワークのなかで国際的に生産と供給の安定を図るという取り組みだといえる。
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石巻埠頭サイロ(株)では震災から1年4か月後の今年7月に新たな荷役機械が設置され、その第1船として大型外航船の「NEW PRIDE号」が入港した。
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