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山は市場原理と闘っている-森を守る文明と壊す文明との対立

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山は市場原理と闘っている-森を守る文明と壊す文明との対立
著者
安田喜憲
発行所
東洋経済新報社
発行日
2009年12月31日
定価
2400円+税
評者
太田猛彦 / 東京大学名誉教授
 花粉分析を用いた環境考古学の大家として著名な安田喜憲氏の「山は市場原理主義と闘っている」は、山を介した畑作牧畜民と稲作漁撈民との比較文明論である。

日本人にとっての森を考える

 花粉分析を用いた環境考古学の大家として著名な安田喜憲氏の「山は市場原理主義と闘っている」は、山を介した畑作牧畜民と稲作漁撈民との比較文明論である。
 すなわち民族を取り巻く環境や食物がその民族の文明に影響を及ぼすことに注目して、前者の文明を「力と闘争の文明・動物文明」、後者の文明を「美と慈悲の文明・植物文明」と呼び、両者の性格を詳細に論じている。
 その結果、「力と闘争の文明」の象徴ともいえる一神教・キリスト教を崇拝する西欧・アメリカ文明が生み出した市場原理主義は地球環境問題を引き起こす極悪の経済システムであるとし、人類が最悪のシナリオを回避するためには、日本人が奉じてきた「美と慈悲の文明」の特徴である自然への畏敬の念や他者への思いやりを内包する経済システムへの転換が必要であるとしている。

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