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TPP すぐそこに迫る亡国の罠

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TPP すぐそこに迫る亡国の罠
著者
郭 洋春
発行所
三交社
発行日
2013年6月4日
定価
1500円+税
電話
03-3262-5757
評者
小林綏枝 / 元秋田大学教授
 2012年3月、韓国と米国との間に結ばれたFTA(自由貿易協定)は発効した。以降この1年間に韓国で何が起きたかを示したのが本書。韓国の事態はTPPを締結した後の日本にも必ず降りかかる。「米韓FTAはTPPを含む全ての21世紀の貿易協定のモデル」だから。

暮らし壊される姿、まざまざ

 韓国民の激しい反対を押し切ったFTA・ISD(投資家による国家訴訟)条項は、発効後数カ月にして韓国政府が訴えられる事態をもたらした。米系ファンドが[1]韓国政府はわざと銀行株式の売却承認を遅らせ14億ユーロの損害を与えた[2]我社は他国に本社があるので売却益への課税は不当だ、と。
 驚きは続く。韓国政府は米韓FTAに合わせるべく63にのぼる法律の改正に着手した。例えばソウル市条例「学校給食に遺伝子組み換え食品を使ってはならない」は上位法改正により無効となる。長年かけて築き上げて来た暮らしを守る制度が壊されてゆく姿がまざまざと。わずか1年にしてこれである。日本がTPPに加われば米国内に有り余る弁護士達が陸続と来日し、凄まじい訴訟社会がやって来るだろう。
 何より胸に迫るのは原発だ。もし原発を止めたら「想定した利益が上がらない」と訴えられる可能性は十分。現に脱原発に転じたドイツ政府はスエーデン企業からEU版ISD違反として訴えられたという。
 TPP加入後は脱原発も成り立たなくなる。
 著者の警告が間に合ううちに日本の進路を変えなければ。多くの人々に一読を願いたい本だ。

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