JAは誰のものか 多様化する時代のJAガバナンス
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- 著者
- 増田佳昭
- 発行所
- 家の光協会
- 評者
- 鈴木昭雄 / JA東西しらかわ代表理事組合長
◆すべての農業者・消費者のもの
前半の章では、JAの主権者の位置づけを定義し、ガバナンスのあり方で株式会社とほぼ共通面があるとの認識を示すと同時に、主権者である組合員の多様性に対応することの難しさについて課題提供している。3章と4章では、戦後農業の構造変化、准組合員の参加に伴い、協同組合の辿ってきた経緯を述べる。もちろん国の食料政策、農協法改正との関連をふまえ、大型専業農家育成に偏ってきたことへの警鐘を鳴らすとともに、生活、消費の場として農村の重要性を説いている。
5章から7章の主題は、農協の現状分析と課題である。とくに組織面では、水田地帯、中山間地域、都市部などのさまざまな形態と課題を例示し、対応を示唆している。具体的には理事および理事会の現状と課題を挙げ、常勤と非常勤の役割、とくに「業務執行権者である常勤理事、決定と監督権の非常勤理事の役割分担」などを、農協法に基づいて明記。また経営管理委員会が本来目指した方向と問題提起など、われわれ直接JA経営に携わるものにとって、必要不可欠な基礎的な知識で満たされている。
そして最終章では、現在われわれが対応しなければならない集落営農の組合員、土地持ち非農家、金融共済事業利用の准組合員、さらに専業農家や担い手後継者など、多様な組合員で構成する農協組織のガバナンスのあり方に言及。とくに、このような組織基盤である組合員の変化・多様化に組織のガバナンスが追いついているのかと指摘し、ガバナンスルートの複線化も提案する。
◆数値で裏づけ
また大きな特徴として、ほとんどの理論が豊富な数値データに裏打ちされていることがある。戦後の農業、農協のたどってきた時空間を縦軸に、数値で裏打ちされた理論が見事に組み合っている。
読み終えて、表題の「JAは誰のものか」を考えてみる。農協はいわば国家の公器である。すべての農業者の拠り所であり、同時に消費者のものでなければならない。公器としての位置づけは、狭い限られた農地で1億3000万人の食料生産を最も効率よく担い、農業者のプライドを構築し日本の協同組合をここまで発展させた実績が示している。市場競争最優先の今日の新自由主義に対抗できる唯一の手段でもある。
最後に、生産者と消費者の関係についてだが、農業者に限らず、われわれは常に相手に対し、社会に対し、優しくなければならない。「あらゆる生産者は最も良質なものを、求め易く提供する義務がある。消費者、国民はその努力に最高の敬意を払う」。そんな社会実現のために、農協は最も効率よく機能する組織でありたい。
昨今、食料を経済産業の一部として考え、軽視する風潮が蔓延しているが、経済も思想も、信仰でさえも、食料があってのものだということを再確認する必要がある。
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