有機農業の技術とは何か

- 著者
- 中島紀一
- 発行所
- 農山漁村文化協会
- 発行日
- 2013年2月25日
- 定価
- 本体2600円+税
- 電話
- 03-3585-1141
- 評者
- 涌井義郎 / NPO法人あしたを拓く有機農業塾代表理事
総合農学、農業技術論を専門とする著者は、日本有機農業学会の設立に参画し、2006年の有機農業推進法制定にも関わるなど、日本の有機農業の歩みに精通する識者である。本書は「低投入・内部循環・自然共生」を骨格とした有機農業技術論として述べている。
共生で実現 豊かな生産
有機農業は『投入の増加によって産出の拡大を図る』という生産関数的世界(工業的技術論)からの脱却であり、「低投入を前提としながら豊かな生産力を作り出そうとする農業のあり方」である、との問題提起から始まる。そうした生産力の源が土の豊かな生態系にあり、肥料などの資材多投入がむしろ生態系の貧弱化をもたらしたとの警告には、きちんと耳を傾ける必要がある。土の生態系を豊かに育むための適量の堆肥と農地内で循環する有機物(作物残渣や雑草等々)、そこに息づく多様な生き物の生存と活動による「内部循環」と「共生的世界」が技術論の基盤であると説く。
有機農業の技術形成は「作物の自立的生命力を育てる」点にある、との論述も注目すべきである。低投入と内部循環の圃場環境づくりが、活力ある生態系に支えられて、作物の免疫性、健全な生長、環境適応力の向上をもたらす。病害虫抵抗力とともに「冷害、日照り、湿害などに有機農業の作物は強い」と述べられているが、そのことは現場に実例が多く、科学的解明も急速に進んでいる。
有機農業は本来、農業のあり方を問う運動的取り組みである。有機JAS制度とあるべき技術論との歪み、耕作放棄地への向き合い方、原発事故の試練を乗り越える有機農業にも言及して、実践農家の事例と併せ成熟期有機農業が示唆する到達点を確信させてくれる。本書は有機農業の世界から紐解く「新しい時代における農業」論である。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(139)-改正食料・農業・農村基本法(25)-2025年4月26日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(56)【防除学習帖】第295回2025年4月26日
-
農薬の正しい使い方(29)【今さら聞けない営農情報】第295回2025年4月26日
-
1人当たり精米消費、3月は微減 家庭内消費堅調も「中食」減少 米穀機構2025年4月25日
-
【JA人事】JAサロマ(北海道)櫛部文治組合長を再任(4月18日)2025年4月25日
-
静岡県菊川市でビオトープ「クミカ レフュジア菊川」の落成式開く 里山再生で希少動植物の"待避地"へ クミアイ化学工業2025年4月25日
-
25年産コシヒカリ 概算金で最低保証「2.2万円」 JA福井県2025年4月25日
-
(432)認証制度のとらえ方【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月25日
-
【'25新組合長に聞く】JA新ひたち野(茨城) 矢口博之氏(4/19就任) 「小美玉の恵み」ブランドに2025年4月25日
-
水稲栽培で鶏ふん堆肥を有効活用 4年前を迎えた広島大学との共同研究 JA全農ひろしま2025年4月25日
-
長野県産食材にこだわった焼肉店「和牛焼肉信州そだち」新規オープン JA全農2025年4月25日
-
【JA人事】JA中札内村(北海道)島次良己組合長を再任(4月10日)2025年4月25日
-
【JA人事】JA摩周湖(北海道)川口覚組合長を再任(4月24日)2025年4月25日
-
第41回「JA共済マルシェ」を開催 全国各地の旬の農産物・加工品が大集合、「農福連携」応援も JA共済連2025年4月25日
-
【JA人事】JAようてい(北海道)金子辰四郎組合長を新任(4月11日)2025年4月25日
-
宇城市の子どもたちへ地元農産物を贈呈 JA熊本うき園芸部会が学校給食に提供2025年4月25日
-
静岡の茶産業拡大へ 抹茶栽培農地における営農型太陽光発電所を共同開発 JA三井リース2025年4月25日
-
静岡・三島で町ぐるみの「きのこマルシェ」長谷川きのこ園で開催 JAふじ伊豆2025年4月25日
-
システム障害が暫定復旧 農林中金2025年4月25日
-
神奈川県のスタートアップAgnaviへ出資 AgVenture Lab2025年4月25日