さらば食料廃棄 捨てない挑戦
- 著者
- シュテファン・クロイツベルガー(フリージャーナリスト)、バレンティン・トゥルン(映画監督)著
- 発行所
- 春秋社
- 発行日
- 2013年3月
- 定価
- 本体2500円+税
- 電話
- 03-3255-9614
- 評者
- 小林綏枝 / 元秋田大学教授
「Taste The Waste」「ゴミを召上がれ」と云うショッキングな映画がつくられた。これはその映画を補完するための書である。日々のごく個人的な食料消費が、世界的規模での危機的事態を引き起こしてしまう。どこでどんな食料生産がなされ、流通、廃棄が行われているか、飢餓と肥満が併存する矛盾等々と、それに対抗する人々の勇気と努力とが生き生きと描かれている。
「食べる者」の自覚促す
「全食料生産高の2分の1?3分の1が捨てられている」。著者達は世界各地の食料生産現場から家庭まで食品の一つひとつをたどる。胸を突かれるような食料廃棄の現実が次々に登場する。
なかでもショックだったのはパン。これまで何も考えずにパンを買っていた。いわれてみれば朝から晩までパン屋の棚はいつもぎっしり。それなのに翌日「昨日のパン」等との表示も値引きもない。10?20%のパンが毎日捨てられている。それも世界的規模で。「消費者が完全な品揃えを望んでいる」からと。もはや食料廃棄は消費者の心がけや関係者の努力だけでは解決し難い構造的問題となってしまった。
著者はこの責任をごく少数の農業・食品企業、化学企業、銀行、証券会社に帰し公的規制の必要を説く。これだけならよくある告発書と変わりはない。だが、それだけではない。個々人の自覚的活動を重視しユニークな行動で食料廃棄に立ち向かう人々が描かれる。廃棄食料を調理して人々に供する、摩天楼でミツバチを飼い屋上で野菜を栽培する、生産者と消費者の協同組合等々。まなじりを決したような行動ではない対応が魅力的だ。「政治介入の力としての消費」の提案である。インターネットを通じての人々の参加も運動の多様化と広がりに大いに力を発揮する。気の重くなる課題だが眼をそらす訳にはゆかない。若い人々や食料廃棄に胸を痛める人々の勉強会などに取り上げてほしい本だ。
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