【JA総研研究叢書9】日中韓農協の脱グローバリゼーション戦略―地域農業再生と新しい貿易ルールづくりへの展望
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- 著者
- 吉田成雄、柳京熙編著
- 発行所
- 農山漁村文化協会
- 発行日
- 2013年4月
- 定価
- 2600円+税
- 電話
- 03-3585-1141
- 評者
- 酒井富夫 / 富山大学教授
地域社会に不可欠な存在として期待されながらも、農協自身がグローバル化に巻き込まれて大規模化・会社化し、それにともなって組合員の農協離れが深刻になる。本書は、そうした状況下の農協のあるべき姿を、日中韓の農協の比較分析により提示しようとした意欲作である。
資本主義の発展と農協との関係探る
内容は、各国の農協の歴史を整理し、JAあいち中央等の日本の縦と横のネットワーク形成、韓国の「地域総合センター」機能を発揮する?山農協(全羅北道)、中国の農民専門合作社として「戴庄村モデル」(江蘇省)を取り上げ、3か国の農協を丹念に分析している。
第2部終章「『農民の組織化と経済発展』の視点から日・中・韓の農協を見る」では、「農村の発展は商品購買力の増加(農村市場の拡大)につながり、経済発展の循環に欠かせない輪を構成する」との指摘があり、そのためには農民の組織化が必要だという認識がある。日韓の経済発展と農協の関係から、格差問題が深刻化する中国への示唆があって興味深い。
その農協の将来像として、「小さくても起動力をもつ小さい船を数多くつくる方が現実的で理想的」(補論第3章)とあるが、まったくの同感である。経営と運動をどうバランスをとって運営するか、今日の協同組合の基本的課題である。欲をいえば、せっかくのモデル的事例の国際比較であるので、国ごとの国民的特性(社会的、文化的、慣習的特性)にまで踏み込み、農協の発展と組合員の変化、市場の変化との関連性を比較する形で整理してほしかった。貴重な問題提起の書であり、是非一読をお薦めしたい。
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