評伝・宮脇朝男 農協運動に命を捧げた男
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- 著者
- 大金義昭
- 発行所
- 家の光協会
- 発行日
- 2013年10月1日
- 定価
- 1900円+税
- 電話
- 03-3266-9029
- 評者
- 【自著を語る】
戦後農協界 不世出のリーダー
香川県の小地主の家に生まれた宮脇は、小作人の窮状に胸を痛め、少年期から戦前の農民運動に奔走。戦後は農協運動に身命を賭して65年の生涯を閉じた。「身を捨ててここを先途と勤むれば月日の数も知らで年経む」……報徳思想を信奉した彼は、二宮尊徳の道歌のごとくに生きた。全国農協中央会の第四代会長時代には、日本医師会や総評のトップと並んで「三巨魁」と謳われている。
◆宮脇に似合うコスモスの花
「富士には月見草がよく似合う」という太宰治の言葉がある。雄大な富士の山容と可憐な月見草との対比が人びとの心を捉えた。宮脇とコスモスの花との取り合わせも、これによく似ている。90kgの巨躯を押し出すように野太い声で獅子吼し、巧みな弁舌を自在に駆使して千余万余の聴衆をうならせた容貌魁偉の宮脇と、乙女の純情・真心・愛情・調和・美麗などの「花ことば」を持つコスモスの花とのアンビバレントが、彼の魅力を象徴している。
没後2年余に刊行された顕彰記念の伝記『宮脇朝男』には、当時の農業界はもとより政・官・財・マスコミ界の知る人ぞ知る人たちから寄せられた多数の追悼文が収録されている。惜別の心情溢れる、その一端を紹介しよう。
○自分の立場を考えるとか、保身を図る人が多いが、あの人はそういうことは微塵もなかった(大石武一)
○正義感に溢れ、稀に見る太っ腹の反面、こまやかな人情味(大社義規)
○いつも、いたって気さくな野人(大西潤甫)
○農地改革中の土地不買運動の意味が、いま静かに省みられる(小倉武一)
○あの解放的な飾らざる風貌、気迫に溢れた原稿なしの演説、ユーモアとウィットに富んだ座談(片柳真吉)
○殊のほかに飲みッぷりがよく、しまいには素ッ裸になって踊りだす始末(小林繁次郎)
○その容貌からは考えられぬほど、人の言を聞いた(田中香苗)
○組織が決めたことには完全に私情を捨てた(土肥大四郎)
○朝起きると、ずぼらな私などとはちがって、同室の宮脇さんは蒲団をきちんと自分で片付けて茶をすすっておられた(藤田三郎)
○御自身に対してはこの上なく厳しい人であったが、部下に対しては思いやりがあり、小言一ついわないやさしい人(山口 巌)
○繊細な神経の中にも、大胆で解放的な性格とがうまく調和していた(山中義教)
◆圧倒的な魅力新しい時代に
人びとの思い出に刻まれた感慨からは、宮脇の圧倒的な魅力が伝わってくる。宮脇にはやはり、コスモスの花がよく似合った。蒲柳に見えるこの花はしかし、質実剛健である。一度花を咲かせると、こぼれた種子で毎年再生し、楚々とした花を無数に咲かせる。群生・開花するコスモスのように、宮脇の遺志を新しい時代に継承したい。
本書には、家の光出版総合サービスや香川県農協グループの皆さんのそんな熱い思いが込められている。先人の労作や伝えられている事績を頼りにとりまとめた本書に、至らぬところがあるとすれば、その責めはすべて筆者に帰するが、困難なこの時代に、できるだけ多くの皆さんにご高覧いただきたい。必ずや、宮脇の言葉にある「プラス大」の元気やエネルギーを汲み取っていただけるものと思う。
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