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中国のブタが世界を動かす 食の「資源戦争」最前線

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中国のブタが世界を動かす 食の「資源戦争」最前線
著者
柴田明夫
発行所
毎日新聞社
発行日
2014年1月20日
定価
1500円(税別)
電話
03-3212-3257
評者
阮蔚(ルアン・ウエイ) / 農林中金総合研究所主席研究員
 中国には地球上にいるブタの半分にあたる約5億頭のブタが飼育されており、単純に計算して毎日約137万頭が中国人の食卓にのぼっている、という。

1日137万頭を消費
大国の食卓から分析

 改めて言われれば、驚くべき数字だが、中国人にとって豚肉はどこにでもある当たり前の食材で、それがどのように飼育、生産しているかは特別に意識することはない。まして、日本や米国で中国人が消費するブタに注意を払う人などいないだろう。
 だが、著者はそこに目を向け、中国のブタが世界の市場に与える影響を分析した。結果は実に興味深く、深刻なものであった。ポイントは餌である。ブタはトウモロコシや大豆を絞って搾油した後の大豆粕を主な餌にしてきたが、大豆を年間7000万t前後も輸入する中国では、飼料は自給できず、その輸入が急増してきた。さらに大豆とトウモロコシだけではなく、小麦も飼料用に使い始めたことで、中国の小麦の輸入が増加し始めた、と著者は分析する。小麦は人の主食穀物だが、近年、トウモロコシに比べて価格競争力が出てきたため、今やブタがそれを食べ始めており、世界の穀物市場に大きな影響を与え始めている。豊かになるとともに食肉需要が増えるのはどの国も同じだが、中国でそれが起きればマグニチュードは大きい。
 ブタという視点から世界をみる視点の斬新さとそこから事実とデータを掘り下げていく洞察力に敬意を表したい。中国の農業を概観するのにも役立つ本だ。

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