共済事業の源流をたずねて-賀川豊彦と協同組合保険-
- 著者
- 和田武広
- 発行所
- 緑陰書房
- 発行日
- 2019年8月30日
- 定価
- 2500円+税
- 評者
- 伊藤澄一 / JCA客員研究員
著者はJA共済連のOBである。在職中から賀川豊彦(1888-1960)とJA共済の関わりを考究して執筆や講師活動を続けている。
賀川とJA共済を結びつける文献は少ない。それは賀川の行動がキリスト教伝道、救済事業、労働運動、社会運動、農民運動、災害救援活動、協同組合運動、保険・共済事業、平和運動、著作活動など多彩なことによる。戦後、ノーベル文学賞・平和賞の候補になり、キリスト者としても生きた賀川を社会運動、協同組合とくに共済事業をメインに捉えるのは容易ではない。著者は埋もれた文献を渉猟・分析してJA共済の研修テキスト・総研レポート等の出版を経て、賀川豊彦記念松沢資料館の出版助成を受賞して本書を著した。
賀川は1952年に日本生協連の会長と全共連(JA共済連)の顧問に就いたことから、生協およびJA共済の「事業の父」とされる。本書は日本の共済事業の淵源をたどりつつ、今なぜ賀川豊彦なのかに迫る。
積小為大の協同組合資産が資本によって狙われている。資本主義・グローバリズム経済が行き詰まり一握りの富裕層が世界の富を独占し、格差・貧困の問題が露わとなっている。飽くなき資本の巨大化は歴史の教訓や人為の正義・不正義を問わず、さらに制度の連続・非連続すら問うことなく攻め尽くす勢いだ。その危機を回避する動きがJCA(日本協同組合連携機構)の発足、人類の生存を持続可能とすべく世界的な取り組みとなっているSDGs運動などだ。これらは賀川が目指した社会運動全体の今日的なテーマに他ならない。
本書は、協同組合運動の理念・こころ構え・行動基準の再確認を提言し、共済事業の現在を生きる役職員の皆さんに小さな賀川豊彦であれと激励している。
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