TPPは飢餓人口を増やす2013年4月8日
TPPは、日本の農業を壊滅させる。
いま、世界の飢餓人口は8.7億人になっている。つまり、8人に1人が、慢性的な栄養不足の状態に陥っている。こうしたなかで、日本は食糧生産をやめれば、その分だけ世界の飢餓人口が増える。
飢餓の第1の原因は、食糧の格差問題である。世界の食糧を世界の人たちが平等に分け合えば、飢餓は今すぐにでもなくなる。だが、高所得の国の人びとは飽食に明け暮れている。その一方で、低所得の国の人びとは飢餓に苦しんでいる。つまり、経済格差が飢餓問題を生んでいる。
TPPは、経済格差を拡大し、飢餓問題をさらに深刻化する。
飢餓に苦しんでいる人びとがいるなかで、日本がTPPに加盟し、食糧生産をやめて、世界から食糧を買い漁ることは許されない。
ここでは、飢餓のもう1つの原因である人口爆発の問題を考えよう。
世界全体の人口1人あたりの食糧供給量をみると、今後は増えないどころか減ることが予想される。一方、人口爆発は今後も続く。世界の食糧は、ますます不足する。
人口爆発が言われてから長い期間が経つが、いまだに言われ続けている。
歴史をさかのぼって、人口の状態をみてみよう。最も見やすいのは、人口ピラミッドである。日本はどうだったか。
第1図は、60年前の日本の図である。左半分が男で右半分が女である。縦軸は年齢で5歳きざみにしている。横軸は人数である。年齢が小さいほど男女とも人数が多い。年齢が上がるにつれて、人数が綺麗に少なっていて、全体では北斎が描くような縦長の富士山の形になっている。
第2図は、現在のアフリカの図である。第1図とよく似ている。60年前の日本の形と現在のアフリカの形が似ているのである。世界の発展途上国は、すべて富士山形になっている。60年前の日本は、まだ途上国だったのである。
一方、第3図は日本の現在の形である。全く違った形をしている。釣鐘形といっている。世界の先進国は、すべてこの形をしている。
何故こうなったか。
◇
途上国形は、年齢が上がるにつれて人数が少なくなる。それと比べて先進国は、それほど少なくならない。これは、途上国は死亡率が高く、先進国は死亡率が低いからである。ことに途上国の低年齢の死亡数が高い。つまり、労働力になる前に死亡する人が多い。だから、子供が少ないと、その家庭は経済的に困窮する。そのため、多くの子供を産む。
この時期を多死多産の段階という。図の形は綺麗だが、悲惨な段階である。
人口の大きさは、軍事力の強さでもある。だから、多産を奨励することがある。厭うべき段階でもある。
◇
その後、経済が発展するにつれて、医療制度が行き届き死亡率が下がる。幸せなことである。
だが、人口問題としてみると、多産の習慣が続く。少死多産の段階である。この時期、人口は爆発的に多くなる。経済発展の初期の段階である。
この歴史は止められない。今後も途上国の人口爆発を止めることはできない。
世界は、今この段階にある。
◇
この時期を過ぎると、少死少産の段階になる。少子化である。第3図の日本のような形になる。中年層と壮年層が多く、労働力人口が多い時期である。
先進国は、みんなこの形になるのだが、まだ先進国の人口は、世界の人口の18%にすぎない。大部分は富士山形の途上国である。だから、今後も世界の人口は増え続ける。
この動きは、止められない。2050年には、世界人口は35%増えて9.3億人になるという。
こうした世界の状況のなかで、日本はTPPに加盟し、農業を壊滅させて、食糧生産をやめるのだろうか。その分だけ世界の食糧は減る。日本のTPP加盟は、世界の、ことに食糧不足の人たちから痛烈な非難をあびるだろう。
それでも、安倍晋三首相は、TPPに加盟する姿勢を改めないのだろうか。国民は怒っている。
(前回 TPPは東アジアの文明を破壊する)
(前々回 原発鳴動ネズミ一匹)
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