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TPPで雇用が海外へ流出する2013年4月22日

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【森島 賢】

 TPPに加盟して、企業がアジアへ進出し、アジアの経済成長の成果を日本に取り込むのだという。はたして、それが出来るか。
 かりに出来るとして、日本のどこに取り込むのか。農村にも取り込むのか。労働者にも取り込むのか。
 企業がアジアへ進出して利益を得れば、その利益を日本国内に投資するだろうから、国内の雇用が増えるだろうという。企業に溜まった利益が、自然に農村や労働者の上ににしたたり落ちる、というわけである。
 本当だろうか。これまでの実績を見てみよう。

製造業の国内雇用量と海外雇用量 上の図は、日本の製造業について、国内での雇用量と海外子会社の雇用量を示したものである。
 この10年間で、国内の雇用は1238万人から16%減って1038万人になり、海外の雇用は263万人から56%増えて411万人になった。国内で200万人減らして海外で148万人増やしたことになる。つまり、製造業だけで、これだけの雇用が海外へ急激に、そして大量に流出したのである。
 最近の2011年を見ると、国内の1038万人と海外の411万人を足し算すると1449万人だから、そのうちの28%(411÷1449)が海外での雇用になっている。4分の1以上である。
 このように、企業の海外進出の結果、雇用が流出し、賃金は上がらなかった。成果は労働者にまで、したたり落なかった。これが厳しい実績である。
 TPPに加盟するとどうなるか。

 その前に、なぜ国内の雇用が減り、海外の雇用が増えたのか、考えよう。
 その理由は、言い古されているが、国内の賃金が「高い」からだという。だから「安い」賃金を求めて企業が海外へ進出した。
 そして国内産業が空洞化し、雇用が減り、国内需要が減ってデフレに喘いでいる。
 TPPに加盟するとどうなるか。

 TPPの主な目的は、企業の海外進出を、し易くすることにある。
 そうなれば、日本企業の海外子会社の雇用は、ますます増える。そして、国内の雇用は、ますます減る。それは火を見るよりも明らかだ。それでいいのか。

 それとも、国内の賃金を下げるか。そのために、海外の「安い」労働者を国内に迎え入れるか。
 TPP推進の旗頭の経団連は、労働者の国際的な移動の自由化を主張し、「安い」外国人労働者を入れて、日本を移民社会にすることを構想している。
 そうすることが、日本にとって良いことかどうかが、やがて問われることになるだろう。

 日本が進むべき道は、この道ではない。安い賃金を求めてアジアへ進出する道でもないし、移民社会にする道でもない。そうではなくて、技術力でアジアの発展に貢献する道である。そのためには、企業が全社一丸になって技術開発に邁進することである。
 その結果、得られた利益は会社全体で分け合うことである。雇用を増やすこともできるし、賃金をより高く上げることもできる。社長は社員の賃金を上げることで、責任を果たしたという満足が得られる。
 農家の兼業賃金を増やすこともできるし、国内需要が増やして景気を回復することもできる。
 移民を排斥するわけではない。移民ではなく、自国にいて、自国の発展に献身すべきだろう。日本は、そのことに貢献すべきだろう。


(前回 【改定版】反TPP大学人名簿

(前々回 反TPPで大学人が要望書

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