TPPで軽自動車が消える2013年5月7日
連休で農村へ行ったが、軽自動車が多いことに、あらためて気づいた。軽自動車は農村の貴重な足なのである。
その軽自動車が、TPPに加盟すると、いままで通りに乗れるかどうか、あやしくなる。農村の足がアメリカに奪われるかもしれない。
アメリカは、以前から日本の軽自動車を目のかたきにしてきた。この規格を廃止させ、優遇政策を止めさせて、アメリカ車を売りこみたい、と考えている。
先月のTPP加盟についての日米事前協議の結果、日本の譲歩で軽自動車の存続が危うくなった。
先月の日米合意文書をみると、自動車について日本は、合意文書の言葉どおり正確にいえば、「最大限」の譲歩をしてしまった(資料は本文の下)。つまり、日本は自動車に対するアメリカの関税撤廃を「最大限後ろ倒し」することに合意した。
これで当初、推進派が主張していたTPP加盟による国益は、大部分が当面なくなった。その上、交渉の大事な切り札を早々と使ったので、なくなってしまった。
◇
それだけでアメリカは満足しなかった。TPPと並行して、新しく日米間で交渉の場をつくり、自動車貿易の協議を始めることになった。協議の結果はTPP協定の付属文書にするという。
この協議の重要な議題の1つが、軽自動車である。
アメリカは、以前から日本が行なっている軽自動車の優遇政策に強い不満をもっていた。日本にこの政策があるから、アメリカ車が日本で売れないというのである。だから、この政策をやめよ、と執拗に要求してきた。
◇
アメリカでも軽自動車を作って、日本に輸出すればいい、と誰しも考えるが、傲慢なアメリカは、そうは考えない。日本は脅せば何でも言うとおりにする、と考えているのだろう。日本も弱腰というしかない。
たとい、日本の政府がこの要求を受け入れなくても、アメリカの自動車会社はTPPのISD条項を使って、訴訟をおこし、その結果、日本政府は賠償金を支払うことになるだろう。
◇
もしも日本がアメリカの要求を受け入れたらどうなるか。日本から軽自動車は消えるしかない。そして、ガソリンをふり撒いて走るような車に乗るしかない。
農村では、公共輸送手段の乗合バスが次々に廃止されるなかで、それに代わる軽自動車は、いまや生活必需品である。それがアメリカの餌食になろうとしている。
代わりの車は税金が高いし、ガソリン代が高いし、高齢者などは外出しにくくなる。その上、地球環境を悪化させる。いいことは何もない。
TPPは、このように、日本中のいたるところに悪い影響をおよぼす。軽自動車は、その一例にすぎない。
【資料】
マランティス(Demetrios Marantis)通商代表代行の返書
動車貿易TOR(交渉の枠組、Terms of Reference)
(前回 TPPで雇用が海外へ流出する)
(前々回 【改定版】反TPP大学人名簿)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日