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アベノミクスのさえない成果 民間投資の不活発2013年5月27日

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【森島 賢】

 アベノミクスと言いはやされてから、半年が過ぎた。そろそろ成果が出てもいい頃である。
 成果として、株価の上昇と、国債の堅調と、円安が取りざたされているが、ともに気まぐれなものである。今月になって、株価と国債は暴落に見まわれたし、円安もここにきて方向感を失っている。
 見どころは、これらではない。民間投資と雇用の動向である。景気の先行きを楽観して、実際に投資を活発化させたか。また、雇用を拡大し、賃金を上げて、内需に基づく景気回復の確かな足取りを始めたか。
 ここでは、主に民間投資をみてみよう。

国民総生産の内訳 今月は、GDPの速報が発表された。新聞などは、今年の1~3月は昨年の10~12月から年率換算で3.5%の成長をしたと、はやしていた。
 上の第1表は、前年の1~3月との比較である。これをみると、財政支出の効果やインフレ懸念による民間住宅への投資の増加がみられる。また、円高による輸出増もあるし、輸入金額も増えている。
 その一方で、民間消費は、はかばかしくないし、民間設備投資が落ち込んでいる。ここで注目したいのは、この点である。企業は、アベノミクスによる景気の回復を疑いの目でみている。
 設備や機械に投資しても、景気が回復しなければ、それで作った製品が売れないだろう、と考えている。だから、設備や機械を作る雇用も増えないし、設備や機械で製品を作るための雇用も増えない。

需要者別の機会受注額上の第2表は、機械受注の動向である。第1表は、実際に機械などを買って投資した実績だが、この表は、機械を作る企業が注文を受けた金額である。だから、これは、機械投資の先行指標であり、さらに、景気の先行指標でもある。全体として大幅な増加であるが、ことに円高による外需の伸びが大きい。
 ここで見逃せないのは、製造業からの受注の減少である。製造業は、先行きの景気を慎重にみている。つまり、製造業を基盤にした力強い景気回復が予想できない、ということである。

 以上の2つの表から、アベノミクスの今後を考えてみよう。
 第1の矢は、金融緩和である。それは株高と円安と、そして、制御されたインフレへの期待である。それは、民間住宅投資を刺激している。だが、国債の暴落を契機にした金利の上昇で、状況は変わろうとしている。
 第2の矢は、財政出動である。これは、公的投資を増やしている。だが、この効果は一過性である。一方、この資金源は国債の増発である。国債の暴落は、利子負担の増嵩をもたらす。
 第3の矢は、民間投資による経済成長で、これが本命である。だが、これも不活発である。ことに製造業の設備投資が未だに回復していない。
 アベノミクスの成否は、民間投資の動向と、それを基礎にした雇用の動向にある。注意深く見てゆかねばならない。


(前回 アベノミクス破綻の指標 銀行株がさえない

(前々回 TPPで疲弊するのは農村だけではない

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